2012/09/30

20120929-30_前穂北尾根(2日目:5、6のコル~前穂~上高地)

■9月30日(日)
6:23 出発
↓ - 2:07
8:30 3,4のコル
↓ - 3:50
12:20 前穂高岳山頂
↓ - 0:55(休憩30分程含む)
13:15 紀美子平
↓ - 3:07(岳沢小屋での休憩40分程?含む)
16:27 河童橋

夜中あれだけ降っていた雨も止み、風すら無い朝だった。
台風は少しだけ速度を緩め、今居る場所が暴風圏内に入るのは14時頃と予想されていた。前日の予報では12時過ぎとあったので、2時間くらい遅くなっている。12時くらいに前穂山頂に到着する予想だったので、14時であれば仮に多少のトラブルがあったとしても抜けられる筈だ。勿論停滞を余儀なくされれば台風でやられてしまうだろうが、きっと大丈夫、行こう。
出発
事前調べによると、4峰はルートファインディングが困難、3峰は2ピッチ程度のクライミングがあるとのことだった。とりあえず5峰を越えるところまでは淡々と進む。それなりに高度感もあり、浮石も多いので慎重に。
振り返って
「やっぱりあの尾根気に入った」とワンさん再び目の前の尾根を写真に収める
因みにロープじゃんけんは初日の敗者がマスタ、2日目の敗者はワンさんだった。というわけで私は担ぐ必要無し!良かった・・・
★涸沢が見えた。台風予報だからかテントの数が無茶苦茶少ない
予報に反して早くもガスが出てきて視界が悪くなる。
ルートファインディングが肝の4峰、そしてこの辺りで大きな岩を抱えたら岩ごと崩れて奥又白池まで滑落した方がかつていらしたという情報もあったが、確かに結構きわどいトラバースだった。そして浮石なわけないだろうというくらい大きな岩も浮石だったりして、見た目以上に全体的に不安定。
4峰を池側にトラバースする箇所。見た目以上に怖い

眼前に見えているのが3、4のコル。
ここからコルまでのルート取り、どうするのかよくわからん。ということで、持参したルート本のコピーを取り出すワンさん。ここは涸沢側に回りこむようにして登るとの解説。本当にこんなところ涸沢側(右側)に回りこめるのかいな、しかもその後であのコルまで本当に降りられるのか?と半信半疑になりつつも涸沢側に回りこむ。
結局少し不安定な涸沢側を回り込み、その後はゆるゆるとあっけなくコルに降り立つことができて拍子抜け。写真に見えている斜面をそのままコルまで強引にトラバースしたような踏跡もあったけれど、正直そんなの滑落しかねないよね。
コル
そして迫る3峰。登れるんだろか・・・
★こういう瀬戸際的な天候の時にこそ空と雲が神々しく輝く。ピーカンの時とは1味も2味も違った妖艶な表情にうっとり
★1ピッチ目のトップはマスタ。私は2番手でアッセンダーを使って登ることに。
★行ってらっしゃい、気をつけて!
★あれだけガスっていたのにじわじわと晴れて日が出てきた。あまりにも天気が良すぎて逆に少し怖いけど
とりあえずこの晴れ間に登り切ってしまいたい!
ビレイしてもらっている訳でもないので、アッセンダーをつけているとはいえそれなりに怖い。。。
2ピッチ目はワンさんがトップ。しかし途中でなんだか止まってしまった模様・・・
2ピッチ目は途中でロープが岩に挟まって動かなくなってしまったところでやむを得ず一区切り、改めてマスタが3ピッチ目を登ることに。全体的に、ところどころにハーケンやボルトがあるものの、それらの設置されている場所が必ずしも登りやすいルートではないといった印象。ランニングの支点があるからといってそこを登らなくても、すぐ近くに易しいルートがあったりするので、適宜スリングで支点を作ってランニングをとるなどして易しいルートを登ったほうが楽かも。因みに我々は登攀レベルがそれほど高くもないので、登攀が得意な人であればあまりランニングも要らないのかも・・・?
★吊尾根が見えてきた
正直3峰のあとの2峰がよくわからなかった・・・。いつの間にか越えていた感じ。
★クライムダウンできそうだったけれども、一歩間違ったら滑落即死なので念のため懸垂下降セット。
ゴボウでも良さそう
★あと少しかな・・・
★ん?山頂か・・・?
登ってからほんの数分の間だけ景色も見えていたが、あれよあれよと雲が沸き上がって、記念撮影をする頃にはご覧の通りガスガスに。。。
登頂!
そして最後のロープじゃんけん、ここでも敗者はワンさん。上高地まで宜しくお願いします。
紀美子平を経て岳沢ルートで下山。
紅葉が美しい
岳沢小屋の辺りから雨が酷くなり、ずぶ濡れでの下山となった。雨はひたすら降り続けるという感じでもなく、雨足は強くなったり弱くなったりしていたが、風が出てくる前に下山できたのでほっと一安心。正直なところ、紀美子平のすぐ下の逆層スラブのエリアさえ抜ければ割と安全だし、折角だから暴風雨を経験してみたかったんだけどもね。イマイチ煮え切らない台風でちょっと残念だった。
下山。
前穂北尾根制覇したとはいうものの1回もトップで行かなかったので、さしたる恐怖感もなく(勿論怖いところはあったけれども)、少しだけ消化不良な山行だった。基本的に北尾根は2ピッチしかないので、2人のパーティーで行った方が楽しめるのかもしれない。今回はトラブルもあったため3ピッチになったが、ロープの結び直しの手間などが面倒だったこともあって2人で3ピッチ登ってしまったし、私は3ピッチともアッセンダーだった。
今までアッセンダーで登ったことがなかったので、これはこれで良い経験になったような気もするが、別にわざわざこんな本チャンの場所へ来てまでアッセンダーの練習なんてしなくたって良い訳で。。。

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因みにこの後、上高地から松本までは辿りつけたもののその先の交通手段が台風のため無くなってしまい、松本に1泊する羽目となった。というわけで深夜まで飲んだくれ。
マスタは翌日仕事のため月曜朝イチの電車で都内戻り、ワンさんと私は予定がなかったので更にステビしてそのまま松本に居残り、白糸の湯でお風呂に入って、小波で飲んで、更に都内でも飲んでという無茶苦茶して帰ったのだった。こんな飲んだの久しぶりだったけど楽しかった。飲み疲れた。。。

★のついた写真はワンさんが撮影したものです。

2012/09/29

20120929-30_前穂北尾根(1日目:上高地~奥又白池~5、6のコル)

クライミングはトップを切らないと意味が無い。折角行ってもトップで行かないのであれば本当に勿体無い。例え怖かろうと自信がなかろうと、はたまたもしかしたら時間がかかりすぎて迷惑をかけるかもしれないと判っていようと、周りの理解が得られる限りは1度はトップを行かせて貰うべきだ。

台風の速度との戦い(ちょっと大袈裟だけど)となった今回のアルパインクライミング。マスタ・ワンさん・私の3人全員にとって初めての本チャンだったのだが、このシーズンにして北尾根を独占できるとはなんという幸運!いや、単に台風でわざわざこんなところ突っ込む人なんて居ないでしょっていうだけの話なのだけれども。
■9月29日(土)
6:34 上高地出発
↓ - 2:15
8:49 新村橋
↓ - 1:07
9:56 中畠新道分岐
↓ - 4:34(途中昼寝30分程含む)
14:30 奥又白池
↓ - 3:01(奥又白池での休憩含む)
17:01 5,6のコル

マスタと私は金曜夜発で都内からバスで松本へ。タンさん・テラさんと共に木金で某爆釣沢での釣行を終えて松本駅に落とされたワンさんとは0時過ぎに松本駅前で合流。そのままステビをして朝は駅前の松屋で牛丼をかきこみ、電車とバスを乗り継いでいつもの上高地へ。
台風でもこれだけの人がいた
この辺は用もないのでどんどん進む(って言っても明神館でいきなりアルコール摂取したけども)
橋のようなところを渡る(本来渡らなくて良い)
本当は新村橋のところまで一般ルートを歩けばよかったのだけれど、勢い余っていきなりルートを外れてしまった。戻るのも面倒臭いので涸れた沢沿いを歩いて新村橋到着。
新村橋。ここを渡ってこちら側へやってくるのが正規ルートw
ここからダラダラとした登りがスタート。右手にナイロンザイル事件の碑があったりなどするが他には何があるという訳でもなく割と淡々としたトレイルで少々退屈。大分のんびりペースで歩いていた気がするが、それでもCTよりも早く着いてしまっていた模様。因みに中畠新道分岐までのCTは1:20。
★登り開始
中畠新道分岐到着。右へ行くとパノラマコース。我々が目指す奥又白池にのびる中畠新道は左へ。
中畠新道は奥又白池に向かう破線ルートで、そこから先の北尾根へ上がるルートは無線になっている。
★谷筋を登るわけではなく、少しだけ右へトラバースするように進んで、
谷の右側にある尾根のあたりを進むルートだった。池までの踏跡は明瞭
途中眠くなって眠る。マスタは眠くないとのことで先へ進んでしまい、池まで別行動に。
ここで30分程仮眠。降りてきたオバチャン2人組の気配で起きる
★激写された1枚。
自分の寝息というか寝ぼけ声で何度か目が覚めるという深い眠りの後に再び歩き始める。こういう時の眠りって本当に深いので、起きた時のスッキリ感が半端ない。
★もうじき池かな?
★到着
池のほとりで幕営か5、6のコルで幕営か決めていなかったのだが、池に到着するとマスタがテントを張っていた。ひょっとしてやっぱりここの登りで心折れて幕営地は池に決定?と思いきや、単に休憩用にテントを立てただけと判明。確かにじっとしているには寒い気温。とりあえず行動食を食べたり写真を撮ったりしてのんびり。

ここで出くわしたソロの男性がかなりこの界隈に詳しく、コルへのルート取りもざっくり教えて頂いた。もう少し早い時期であれば、ザレの上に雪渓が乗っていて、そこを歩けば楽らしいのだが、この時期ではもう雪渓もなくなってザレが出てきているので尾根を行った方がいいとのことだった。確かにザレを歩くにしては斜度がきつそうに見える。
昔は4峰から懸垂下降で池まで降りることも出来たらしいが、今は崩落のため懸垂は不可とのこと。
北尾根を背にして
明日歩く北尾根を眺める。あんなところ歩けるんだろうか・・・
テントを畳んで出発。暫く踏み跡はあるのだが錯綜している。あまり上にあがりすぎないようにしながら北へトラバースしていく。上へいってしまう踏跡もあるのだが、そちらを辿ると最終的に少し下る必要が出てくる。
藪の中の踏跡的なところとザレとを交互に繰り返すようにしながら進むが、ザレ場の踏跡は一切わからないので突っ込んでみるしかない感じ。特に最後のザレのトラバースは幅が広くて厄介だった。
このガレ場を渡ったところで、向こう岸の一体どこに取り付くというのだろうか・・・
とりあえずマスタが確認のため単身向こう岸へ乗り込む。途中から追いかけても良かったのだが、ワンさんの省エネ思想により、マスタが向こう岸の取り付きを見つけてくれてから渡ることとし、我々はしばし合図を待つ。
写真右側の方からトラバースしてきて、向こう岸のキワのところに黄色のペンキマークを発見。
ペンキマークはもう少し手前から、3ヶ所くらいあったと思うが、上から降りるようにトラバースすると見つけづらいかも

振り返って。紅葉が綺麗
★「この尾根気に入った、歩きたい」とワンさんがしきりに言っていた尾根。一番手前のやつ。その奥に屏風の裏側が。
ガレ場を過ぎてからはペンキマークが適度についているので迷うことはなさそう。マークに導かれるがままに5、6のコルを目指して進む。
あと少し!と思ったらこのあとまた下って登る羽目に。。。

そしてコル到着。
コルは幕営適地となっていて、テントとテントの間は多少離れるけれども3、4張は張れるかなといった感じ。今回マスタと私のテントはコルに上がってすぐの平場に張り、ワンさんはもう少し5峰寄りのところに張った。強風の時は厳しいかもしれないが、岩やハイマツなど風除け的なものは多少備わっているので、ひたすら風を受けるという感じにはならないと思う。
★涸沢方面。コルからは涸沢のテン場は見えない。
コルから涸沢へは1時間程で下れるとのこと。踏跡も明瞭らしい。
明日、もしも台風の速度が上がっていて、午前中に暴風圏内に入ることが予想された場合には、このまま涸沢方面へ下ると決め、とりあえず幕営。
★今日は使わなかったけれども、持っていると重いので結局ハーネスは途中で履いてしまった
ガスが出てきた
ワンさん今回のシェルターはMountain Laurel DesignsのキューベンDuoMid。
初めて見たけど中広くて快適そう。但しフロアレスなので当然中は虫がたくさん・・・
木金の釣行で釣ってきた2匹の岩魚が焼きがらしとなって前穂にお目見え。
1匹貰ってそのまま貪る。美味い。
これまでは、日本酒に焼きがらしを入れて温めて骨酒、というのばかり色々なところで味わわせて貰っていたが、そのまま食べるのは今回が初めて。焚火の煙に延々さらされた焼きがらしは燻製のように旨みが凝縮されてとっても美味だった。塩を振っている訳ではないので塩気は無いのだが、それがまったく気にならないくらいに味がある。

今回の山行が決まったのは木曜ぐらいとギリギリだった上にワンさんは釣行からの直行だったこともあり、食料計画は擦り合わせをせず個食ベースとしていた。一緒に作るご飯というものが無かった上、幕を張るとすぐ雨が降り出したので、とりあえず個別にご飯を食べてから軽く宴会という流れに。

マスタは19時台に就寝、我々は更に飲んで21時過ぎ就寝。2日目は、アタックするしないに関わらず6時には出発できるようにしておこうということで台風の進行が遅くなることを期待しつつ解散。

★のついた写真はワンさんが撮影したものです。
2日目へ続く