太陽と雨、山に海。見上げる空は果てしなく青く、迫り来る太陽の光はどこまでも白く。光がじんわり地をあたため雲をつくり水滴となり、豊かな雨となって山を潤す。そして沢となり、谷を走り海へ注ぐ。まるでそれを追い駆けたような旅だった。
夏休みギリギリまで行き先が決まらず、山か沢かさえ決めるのに何週間もかかり、最終的に行き先が決まったと思ったらまた天気予報が悪化し、あっちもこっちも高速バスをおさえた状態で迎えた夏休み前日。17時の天気予報を職場で確認して最終的に行き先を決定したのだったっけ。この予報ならば南側へ行くよりは北だろう。それなら出発は今日だ。
私が栂海新道のことを知ったのは、出発するほんのすこし前だった。友人が、前から行きたいと思っているところがいくつかある、といって教えてくれたルートのうちのひとつが栂海新道だった。山と高原地図を見ても、エリアがはみ出し過ぎているために表(おもて)面には載っていない。しかし裏返すとほぼ半分が栂海新道の地図になっていた。今までどうして気付かなかったのだろう。
「日本海めざして進む本格縦走路。近年、夏シーズン中心に入山するパーティが増加。健脚者向(親不知まで約15時間)」これが栂海新道の脇に書かれた注意書き。エスケープルートもほとんど無い。真北にのびる登山道を辿ると、ゴールには日本海の文字がある。登山地図ってのはほとんど緑色をしているのに、このルートのゴールは水色なのだ。あらゆる想像をして一気に胸が高鳴った。メジャールートだけれど、多分そうそう行ける場所じゃない。行きたいと思った。
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都内から八方スキー場までの直行深夜バスもあったのだが、予約をしたのが遅すぎてバスは満席。早朝着の長野行きバスに乗り、長野駅のネットカフェで時間を潰し、朝8時過ぎのバスを乗り継いでスキー場へ。初日は余裕のある行程とわかっていたこともあり、のんびり支度をしていたら、ロープウェイの降り口を出発するのが11:00頃になってしまった。そして安定のガス。
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荷物が15kgを超えるとextra feeがかかる(うろ覚え) |
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ロープウェイに乗る前はまだよかったが、登りきったらこのガス。 |
そして、あとで聞いた話だけれど、白馬界隈は一番高山植物の種類が多いのだとか。なんだか見たことのない花がたくさん咲いていた。普段それほど花に興味を示さない私でも、こんなに写真を撮ってしまうほど。見る花見る花が目新しいものばかり。
ロープウェイで来られる場所ということもあり、唐松岳ピストンの登山客や普通にこの辺りを散策しているだけの人もたくさんいたのだが、そんな中、巨大なザックを背負って歩いている人なんて極く僅か。そのためか何度か声をかけられたが、「どこまで行くの?」と聞かれて「日本海です」と答えた時の相手の驚いた表情といったら。皆一瞬理解ができなくて固まっていた。まぁ、そうなるよな。勿論栂海新道のことを知っている方もいらっしゃったけれども。
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某毒草 |
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花びらの形がかなり独特 |
ブログを書くまでにあまりにも日が経ちすぎてしまってあまり覚えていないけれど、淡々と登っていたと思う。某毒草が生えていた辺りで少しだけ雲に切れ間がでて、空が見え隠れしていた。
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雲の動きが速い。写真だととても地味なんだけれども、実際の景色はかなり良かった。 |
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丸山ケルン 12:50頃 |
もうあと少しでテン場なので、丸山ケルンのあたりで出くわした母娘二人組としばし談笑。娘が50代とかだったかな。
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最後のトラバースを抜けると向こうに唐松頂上山荘の姿が。 |
これでもか、っていうくらいのんびり歩いていたけれども、CT通りの3時間半弱でこの日の幕営地である唐松岳頂上山荘まで到着。時間は14時半。もう少し進めそうな時刻ではあるけれど、この先が今回一番の難所である不帰キレットのため、この時刻から突っ込むことはしない。たまにはのんびりと山時間を謳歌。
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山荘から少し下ったあたりにテン場がある |
幕だけ張って一旦山頂へお散歩することに。手ぶらでとことこ上がる。少しだけ展望。
人は多いのにテントは少ない。小屋泊が多いようで、小屋はなかなかの賑わい。忙しいはずなのに小屋番の人はテン泊の私にも親切で優しく、きっとここは評判がいいだろうなぁと思いながらビールを1本いただく。たかだか3時間程度の登りならば担いでくればよかったとも思ったが、まぁそもそも初日にこんなに盛大に飲もうと思ってなかったから仕方ないか。この晴天下でのんびり飲むなら、持参したラムじゃなくってやっぱりビールだよな。
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最高の景色で一杯! |
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おじさんたちも日光浴w |
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