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性格というものは山をやろうが何をしようが変わりがないもので、優柔不断な私は相変わらず出発当日の12月30日まで行き先を迷っていた。ひとつめの候補は白馬岳、栂池高原からのピストン。この時期リフトが営業していないとのことで人は少ないかもしれないと踏んだチョイス。ふたつめは八ヶ岳、夜のうちに小淵沢から徒歩で観音平までアプローチして(約2時間)、キレットを超えて北上、可能なら黒百合ヒュッテまで歩くロングコース。みっつめは北岳、条件さえ良ければ間ノ岳、農鳥岳と周回できるかも知れないという希望拡がる夢と憧れのルート。
まずはじめに候補から消えたのは白馬。候補の中で一番天気が悪そうだったため。そして当日まで迷っていたのは八ヶ岳と北岳だった。北岳のアプローチに使うバスはすでに押さえてあったが、キャンセル料が100円だったのでキャンセルするのに抵抗はなかった。小淵沢までは高速バスだと底値1500円くらいなのだが、既に日程が迫っていたのと年末年始なのとで価格が高騰しており、電車で行くのとほとんど変わりがなかったので、もし八ヶ岳に決めるのであれば電車でアプローチしようと思っていた(もうね、この頻度で山に行ってるとコスパ物凄く大事ね)。
17時に天気予報を確認すると八ヶ岳も北岳も天気は似たようなものだった。さてどちらへ行くのか。バスのキャンセルのリミットは19時、仕事を18時に終えてそこから1時間みっちり悩む。天気とか、交通費とか、山行そのものの難易度とか、アクセスの良さとか、勿論どれも行き先決定のための重要な要素だったけれど、私が今本当に「行きたい」のは北岳だ。自分にとっては少しだけ難しいかもしれない、だからこそ到達できないかも知れないピーク。でもそろそろ手が届くかも知れない憧れの場所。そうだ、北岳、行こう。
冬靴はGreat Cossy Mountainの10 FATBOBに入れて持って行く。 本当はこれ10 FATBOBではないんだけど、以前買ったキューベンを渡して作ってもらったもの。 正規品よりも少し分厚い。 |
道路向かい側にコンビニがあって便利。あれこれ買出しに行ってはトイレを拝借。ありがたいです。 |
2016/12/31 (Sat)
9:00 奈良田温泉
↓ - 3:10
12:10 あるき沢橋BS
↓ - 0:15 (休憩、装備交換等)
12:25 あるき沢橋BS
↓ - 2:01
14:26 池山御池小屋
↓ - 2:19
16:45 幕営地2700m付近
持参する食料はほとんどがアルファ米とフリーズドライ食で、年越し蕎麦的なものがないので、下界で最後のご飯は特盛りどん兵衛に。ひとつで684kcalという暴力的な蕎麦を食べ、7:35のバスに乗って奈良田温泉へ向かう。
↓ - 3:10
12:10 あるき沢橋BS
↓ - 0:15 (休憩、装備交換等)
12:25 あるき沢橋BS
↓ - 2:01
14:26 池山御池小屋
↓ - 2:19
16:45 幕営地2700m付近
持参する食料はほとんどがアルファ米とフリーズドライ食で、年越し蕎麦的なものがないので、下界で最後のご飯は特盛りどん兵衛に。ひとつで684kcalという暴力的な蕎麦を食べ、7:35のバスに乗って奈良田温泉へ向かう。
後乗せサクサク!w |
3時間程度を見込んだ林道歩きのスタートは、このゲートを乗り越えることから始まる。笹山ボーイに「乗り越えるの大変なんで、二人で協力して行くといいかも!」と言われたものの、なんとゲートの一部が解放されていたので、そのままそこを潜って第一関門突破。何故この扉が空いていたのかは不明。
右下が開いている。 ゲートより手前の駐車スペースにはたくさん車が停まっていて、ああ二人だけじゃなくてよかった、 と胸をなでおろす。踏み跡はきっとあるはずだと一安心。 |
単調、且つ、雪など一切ない林道歩きが続く |
ここから突然はじまる激登りw |
同じルートを歩こうとしていた小林くんという男性とは途中まで抜きつ抜かれつしていたが、結局私が途中からブチ抜いてしまって先に池山御池小屋に到着。まだ時刻は14時半、CT3時間のところ2時間で到着してしまった計算になる。これはもっといけそうだな。
池山御池。雪が全然なくて水が作れない。。。 逆に、ここから往復1時間かかる水場は凍結しておらず使えるとのことだった。 |
中はもういっぱい・・・ |
しかしここはどうかな、と思うところにはほぼ全て既に先客があり、なかなか割り込んで張るのには勇気のいる感じ。そうこうしている内にどんどん高度は上がっていってしまう(寒いんじゃないか?)。
2700mを越え、ここが最後だろうと思われる平場で手を打つことに。ここを過ぎたらすぐボーコン沢ノ頭だろうし(実際ボーコン沢ノ頭まで歩いて15分ほどだった)、これより上に行ってももう平らなところは無いはずだった。トレイルを挟んで左側、丁度曲がり角の外側には既に誰かが幕を張った跡があったので、そこに張る方が楽そうだったが、人が一晩過ごしたであろうことが窺える黄色いシミ(ご想像ください)が点在していたのが気になり、トレイルを挟んで右側、曲がり角の内側に穴を掘って今宵のお宿とした。
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富士山どーん!なポイントも張れそうだったけれど、もう少し上へ。 |
樹林の隙間から間ノ岳と農鳥岳の様子がちらほら見え始める |
担いで来た青鬼で乾杯!寒い、けど美味い〜 |
写真奥側は割と掘ってある。 手前はトレイル(というか、踏み跡)で踏み固められていたのと、特に風もなかったのでブロックは積まず。 |
2017/1/1 (Sun)
12:00 幕営地
↓ - 0:15
12:15 ボーコン沢ノ頭
↓ - 0:50
13:05 八本歯のコル
↓ - 1:00
14:05 北岳山頂
↓ - 2:02 (写真を撮りながらのんびり)
16:07 幕営地
新年を迎え、日の出は6:50頃とのことだったが、少し起きるのが遅くなりボーコン沢ノ頭に到達する前に日が昇ってしまった。まぁ、天気が良くてしっかり初日の出を見られただけでも十分だわ、とも思ったが、日の出のタイミングでボーコン沢ノ頭まで行っていれば北岳バットレスが赤く染まるのを見られたのだなぁ、と思うとちょっとだけ残念でもあった。
予定ではこの日、北岳のピークを踏んでから間ノ岳方面に向かい、北岳山荘の冬季小屋(避難小屋)に泊まる予定だったので、テントを畳んで全て背負った状態で登り始める。私よりも標高の低いところで幕営していた人達は、私よりもずっと早起きをして山頂を目指して進んでいたので、私が歩き始めた頃には私の前に何人もの登山者がいた。わざわざ大晦日に上まで上がっておきながら、私は何をしているんだか・・・(ただの朝弱い人
暫し撮影に興じた後、ボーコン沢ノ頭に向かって更に高度を上げる。しかしふと前方を見ると、幕営装備一式が詰め込まれたであろうザックがいくつも転がっていた。これを背負ってここまで上がってきた人達が、その荷物を打ち捨てて空身でボーコン沢ノ頭へ向かっているのだろうか???頭の中にクエスチョンマークが並ぶ。そして上を見ると耐風姿勢でじっと堪える男性がひとり。え、まさかそういうこと?
最後僅かに斜度のきつくなった登りを上がり切り、見え隠れしていた道標の全容が明らかになってボーコン沢ノ頭に飛び出すと、そこには雄大で威厳のある、荘厳な北岳バットレスの姿があった。うわぁ、これは素晴らしい。。。と思ったのと同時くらいに突風に襲われる。体を後ろへグンと押してきたのは、他でもない風だった。そう、ものすごい風が吹いていたのだ。
ひとりだけ、北岳山頂を目指すアタックザックの男性が視界に入る。彼はバットレスに見向きもせず淡々と先へ進んでいた。結局彼がこのとき山頂に届いたのか、それともこのあと引き返したのかはわからないが、彼以外に先へ進む人はひとりも居なかった。彼が進むのを見て、私も少しだけ先に進もうと試みたものの、5mと進まぬ内に諦念。。。これは無理だ、こんな平らなところも真っ直ぐ歩けないようでは、まだ見ぬ難関である八本歯などとても越えられはしないだろう。今さっき畳んだテントを再び張るのは悔しいし面倒臭いけれど、致し方ない・・・仕切り直すしかない。
戻ってくると既に自分がテントを張っていた場所には先客があったので、再び私は要塞を作ることに。昨夜と違って今日は風が強いので、しっかりした要塞を築かなくてはなるまい!ということで、暇に任せて頑張ること1時間半ほど・・・。黄色いシミがーとか言っていられないので汚いところは掘って遠くにポイ!
今回一度も履かなかったスノーシューは、この場所での幕営時にアンカーとして活躍。なんと重たいアンカーなのだろう・・・。今日はとりあえずここで停滞だなぁ、しかし明日からはもっと風は強くなるだろうし、はてどうしたものかとぼんやりしながら雪を溶かして水を作りつつ午前中をやり過ごしていた。
ちょっと長くなったので後編と分けます。
後編へ続く
↓ - 0:15
12:15 ボーコン沢ノ頭
↓ - 0:50
13:05 八本歯のコル
↓ - 1:00
14:05 北岳山頂
↓ - 2:02 (写真を撮りながらのんびり)
16:07 幕営地
新年を迎え、日の出は6:50頃とのことだったが、少し起きるのが遅くなりボーコン沢ノ頭に到達する前に日が昇ってしまった。まぁ、天気が良くてしっかり初日の出を見られただけでも十分だわ、とも思ったが、日の出のタイミングでボーコン沢ノ頭まで行っていれば北岳バットレスが赤く染まるのを見られたのだなぁ、と思うとちょっとだけ残念でもあった。
予定ではこの日、北岳のピークを踏んでから間ノ岳方面に向かい、北岳山荘の冬季小屋(避難小屋)に泊まる予定だったので、テントを畳んで全て背負った状態で登り始める。私よりも標高の低いところで幕営していた人達は、私よりもずっと早起きをして山頂を目指して進んでいたので、私が歩き始めた頃には私の前に何人もの登山者がいた。わざわざ大晦日に上まで上がっておきながら、私は何をしているんだか・・・(ただの朝弱い人
ナイスビュー!! |
少し高度を上げると、そこには間ノ岳と農鳥岳のピンクに染まる姿が!息を飲むほど美しい。 |
最後僅かに斜度のきつくなった登りを上がり切り、見え隠れしていた道標の全容が明らかになってボーコン沢ノ頭に飛び出すと、そこには雄大で威厳のある、荘厳な北岳バットレスの姿があった。うわぁ、これは素晴らしい。。。と思ったのと同時くらいに突風に襲われる。体を後ろへグンと押してきたのは、他でもない風だった。そう、ものすごい風が吹いていたのだ。
ひとりだけ、北岳山頂を目指すアタックザックの男性が視界に入る。彼はバットレスに見向きもせず淡々と先へ進んでいた。結局彼がこのとき山頂に届いたのか、それともこのあと引き返したのかはわからないが、彼以外に先へ進む人はひとりも居なかった。彼が進むのを見て、私も少しだけ先に進もうと試みたものの、5mと進まぬ内に諦念。。。これは無理だ、こんな平らなところも真っ直ぐ歩けないようでは、まだ見ぬ難関である八本歯などとても越えられはしないだろう。今さっき畳んだテントを再び張るのは悔しいし面倒臭いけれど、致し方ない・・・仕切り直すしかない。
来た道を戻る・・・ |
ブロック切り出せるほどでもなかったけれど、どうにかこうにか要塞が完成。 奥は前日まで私がテントを張っていた場所に現れたお隣りさん。 |
風で歪む我が家、とその向こうに富士山のナイスビュー。 |
ちょっと長くなったので後編と分けます。
後編へ続く
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