2021/07/25

20210722-25_乳川谷北沢-餓鬼岳-東沢乗越-中房温泉(前編)

餓鬼岳の手拭いが、渋くてさ、次行ったら欲しいんだよね。と言ったら友人が共感してくれたので、今年はソロではなく友人と、しかも沢から餓鬼岳を目指すことになった。地形図を見る限りガレと岩場の連続だし、ろくに上部詰め上がり付近の記録が出てこない。正直、ほぼ山頂近くに詰め上げる乳川谷北沢の完全遡行は出来ないだろうと思っていた。良くても百曲りのあたりにそれて登山道にエスケープかなと。しかし実際は北沢の完全遡行が出来てしまって、私は結構感動した。今まで私なんかは、しょっちゅう、無理はしないとかできる範囲でとか、そんな言葉で沢山のことから逃げて(良くも悪くも)身を守ってきたのだけれど、真っ向からその無理かもしれないものに立ち向かって明るく楽しくいつも笑顔で深刻にならずに突き進める人達の強さと尊さをまざまざと見せつけられた気がした。もっと精神的にも肉体的にも強くなりたいものである。

手拭いの画像は知り合いのブログより転載

過去にソロで白沢登山口から3回登って毎度燕方面へ縦走している、私のお気に入りの山・餓鬼岳。2018、2019年に行った時は10月の小屋閉め後だったので、2020年こそ小屋の営業している時期に訪れて手拭いを購入したいと思っていた。しかし台風の影響で、餓鬼岳のメインの登山道である白沢登山口からのルートが派手に崩落してしまい小屋の営業期間が極端に短かく、結局この年も営業中の小屋へ行くことはできなかった。

そうこうしている内に季節は進みスキーシーズンとなった。山やら移動中の車やらでK氏と喋っている時に私がたまたま餓鬼岳とこの手拭いの話をしたところ、K氏が手拭いに滅茶苦茶食いついてくれたことで緩やかに計画が始まった。行くなら沢から行きたいけどどの沢から行くのが良いか?みたいなことを考え、半年ほど経過して季節は梅雨を終えて夏になった。メンバーは最終的に昨年黄蓮谷に一緒に行ったK氏とU氏、そして二人の山仲間であるN氏と私の4人。U氏とN氏は北海道からクライミングの特訓のため2週間本州にきていた北海道勢だ。N氏のことはU氏の動画などで見て一方的に知っていたので、今回ひょんなことからご一緒できたのはとても嬉しかった。想像通り、いや想像以上のキャラクターで楽しませてくれた。


Day0--2021/7/21 (Wed)
全員揃うのは23日。私は22日からカレンダー通りお休みなので、1人で1日前倒しで現地入りした。安曇沓掛の駅でステビ。駅の近くにコンビニがないことが分かっていたので到着してからの晩酌は諦め、電車で晩酌を済ませ、到着後は即就寝zzz
座布団があったのでマット要らずw カナブン多数。

Day1--2021/7/22 (Thu)
駅から入渓点まで2時間弱の舗装路&林道歩き。前方に聳える餓鬼岳の山頂直下には、白いガレがあって、それは遠くからでもよく見えた。林道に入ると軽トラ2台ほどに追い抜かれたが、その後1台が戻ってきて「どこに行くの?」と尋ねてきた。私が「乳川谷です」と答えると軽トラの夫妻はホッとしつつも驚いた表情をした。私が餓鬼岳に行こうとしてルートを間違えているのではないかと思ったらしく、一旦私を追い抜いて行ったにも関わらずわざわざ引き返してきてくれたのだ。まだまだ先の長い林道、私は軽トラの荷台に乗せられ、ラッキーな時短でマムシ平に到着した。夫妻は乳川谷のヒョングリの滝まで行ってピストンしてくるとのことだった。帰りにもしお会いできたら是非沢のお話聞かせてくださいと伝えて夫妻を見送った。

初日はソロだし釣りをしたかったので、その名もズバリな「釣魚沢」を探釣することに。一旦幕営地を決めてツェルトを張った後、出合まで下って釣魚沢へ。しかし沢の入り口付近に多摩ナンバーの車が一台。まさかの先行者に呆然としつつ、とりあえず行ってみたが、まぁ残念ながらボウズ、魚影もない。

おたすけロープも持参していないので、滝の巻きも2つめくらいでとっとと諦めて乳川谷の本流へ移動。
先行者がいるのに面倒な巻きとかやりたくない!ということでとっとと撤収した釣魚沢。
沢のサイズ感は本流より圧倒的に小さい
その後本流では5センチくらいの稚魚みたいなのを見かけた程度で魚影は見ずに終了。しかもハリス・フォーセップ・ラインカッター・ラインのごみ入れ・フロータント・フライボックス等をセットにしたものを落として失くしたたり、グラベルガードを沢の流れに持っていかれたりなどしてしまって釣りが成り立たなくなり、早々に幕営地に撤収。まぁちょっと前の週の山の疲れも残っていたのでゆっくりしようと思っていた割にはついつい長時間釣っていたなぁという感じではあった。焚火の火も何故かロクにつかないし、ついても全然長持ちしないで消える(着火剤代わりのダクトテープがそもそも湿っていたのか全然着火しなかった)。連日夕立があるとの地元民情報もあったが、この日はほとんど降らずに済んだのは不幸中の幸いか。

18時頃、軽トラに乗せてくれた夫妻が疲弊した表情で下山してきた。水が多くて大変でした、、、明日泊まり装備を背負って行くなんて本当にすごいです・・・と言われて一抹の不安を覚えた。
適当に夕飯食べて赤ワイン飲んで就寝。

Day2--2021/7/23 (Fri)
私が幕を張っていた場所はかなり半端でわかりづらく、携帯の電波も入らなかったので、朝食後に私は仲間を迎えにマムシ平まで戻ることにした。今回軽量化のために私は寝袋を持参せずシュラフカバーとシーツのみ(防寒具は上半身は化繊ジャケット、下半身はキャプリーン4の薄手フリース)だったのだが、1200m以下のこの地点で既にぽかぽか快眠というわけでもなく、残りの2泊について不安がよぎっていた。そこそこ寒かったなーと思いながらの朝食はそうめん2束(白目)。沢水でワシワシと洗った麺が胃を冷やす。

マムシ平を越えて進んできた仲間の車を見つけ無事合流、いざ乳川谷へ!前日からそうだったけれど、相変わらず水量が多いが、お構いなしに突入して泳ぎだす面々。私も今回から導入したFinetrackの厚手のフラッドラッシュ(上)のお陰で、上半身まで水につかってもさほど寒くなく快適だった。
自ら進んで踏み台になる漢K氏「俺の屍を越えてゆけ」
水自体は透明なのだけれど、花崗岩の白い岩の上に空気をたっぷり含んだ沢水がドッと押し寄せて乳白色に見える。「水を口に含むとほんのり甘く美味しい。これはこの川の水が乳、だからではなく花崗岩質のため苦味成分となる2価金属イオンや植物由来の塩基性物質が少ないためなのだろう」(こちらのブログより抜粋)とのことだが、水の味はよくわからなかった・・・。
何段も続く美しい釜、私も一度はトライしたがドボンして諦め、結局一人で右岸を巻いた。
ほかの3人は突破したけれど、かなり難儀していた様子。幅がそこそこ広くて大変!
ヒョングリの滝(1500m付近?)
「ひょうぐる」「ひょぐる」という動詞があるのを私は今回初めて知りました・・・
私だけ突破できずに高巻いたところが2ヶ所ほど(メンタル不足)、そしてスリングやお助け紐で手を借りたところが数ヶ所あったけれども、概して楽しく綺麗な水量豊富な沢といった印象でずんずん進み、中沢出合の手前あたりで16時前くらいにようやく幕営適地を見つけて23日の行動は終了。せっせと幕を張って乾杯をした頃にぽつぽつと雨が降り出した。と思ったら大雨になった(1時間も経たずに止んだけれど)。皆で一緒にいればある程度までは笑って過ごせる大雨も、1人だったら結構すぐに緊張するものよなぁ。
食担はK氏、私はつまみ。U氏とN氏は登攀具担当。今夜のごはんはリュウジのバズレシピの至高シリーズのカレーとのこと。美味しかった!私はヒラタケとスモークしたホタテのオイル漬缶と何かを炒めたようなのを作ったのだった気がする(詳細忘れた)。
焚火缶(大)にたっぷりのカレーと焚火缶(中)には炊き立ての玄米。
4人で全部きれいに平らげた。

後編へつづく

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