2024/02/12

20240210-11_厳冬期越百山

結構前から行きたいなと思ってはいたものの、アクセスの悪さから中々実行に移せなかった厳冬期の越百山。人と行こうとしても中々誘える相手もおらず、行くことになったところで大雪に見舞われて見送りになったりしていたが、三連休使えばソロでも行けるんじゃないかと計画してこの度ようやく辿り着くことができた。正直トレースさえあれば別に難易度がそこまで高い訳でもないだろうし、連休だから絶対に誰か入っているだろうと思っていたのだが、蓋を開けてみたら全然人がいなくて結局山頂に到達したのは私だけだった。

Day0
20:00 池袋から高速バス
24:40 松本着→ステビ

バスであれこれ食べてきたけど24時過ぎになんかサラダ的なやつとウィスキー飲んで就寝
昨年10月、転職したわけではないけれど仕事の内容が少し変わり、それに伴って外出が増えた。月曜にPCを持っていかなくてはならなかったり、はたまた金曜にPCを持ち帰らなくてはならなかったりといったことが多くて最近は少し山に行くのに身動きが取りづらい。この週末は連休だというのに金曜に客先でミーティングがありPC持参だったので荷物持って出社からの山直行というムーブができず、一旦帰宅して30分程で出発するというタイトスケジュールをこなし高速バスで松本入り。そこから夜のうちに少し駒を進めたところで土曜始発で動いても目的地である須原駅の到着時刻は同じなので、お馴染み松本駅でステビを決め込む。久々の松本駅だったがローソンとセブンイレブンが潰れていてファミリーマート1強になっていたのには驚いた(しかもファミマは駅前に2店舗もあってどちらも健在)。松本の人はファミマが好きなんだろうか。

Day1
6:32 松本から篠ノ井線
8:05 須原駅下車
↓ - 2:45
10:50 伊那川ダム
↓ - 2:55
13:45 上のコル
↓ - 0:20
14:05 おこじょ平
↓ - 2:10
16:15 幕営地(小屋より手前)

松本駅の朝は朝食が選べて良い。マックにしようか松屋にしようか迷ったけれど、お米食べたいなと思って松屋へ。朝定の特盛(米430g)を食べて移動中のデザートにシュークリームとコーヒーを買って電車へ。そして何故か一口だけ飲んだコーヒーをどこかへ置き忘れる・・・
これで380円はありがたすぎる(肉少ないけど)
倉本、上松は利用したことがあるけれど、須原は初めての駅。
一応徒歩8分くらいのところにコンビニはあるみたいなので、ステビはできそうw
いやぁわかっちゃいたけど10キロの歩きは長い。しかも登山口からも更に林道歩きだ。冬季公共交通機関利用の定めか・・・。途中何台か車に抜かれたけれど、すべて工事車両だったので拾われることもなくひたすら歩く。
駐車場に登山客のものと思われる車は3台あったけれど、空木方面の人のものもあるから、結局車を見ただけでは越百方面に何人入ったかは分からない。
結局ダム付近に着いたのが11時頃(想定内)。1300mアップなので1時間300m登れる計算で雪に余程苦戦しなければ16時過ぎには小屋に着くだろうと予想していた。登山口に着くと踏み跡が1人か2人くらい、しかし積雪はそれほどでもなかったのでまぁなんとかなるだろうという感じでスタートした。最初の水場の少し上のあたりで神戸から来たという老夫婦に追いついたが、とてもじゃないけれど小屋に着かないしコルより上にいくと幕営地もなさそうだから下山しようかなと思っている、とのお話しだった。先行者は一人いるとのこと。
下のコルのあたり
絵がかわいい
次第に雪が深くなってきた
予報では雪が降るなんて書いていなかったのに、14時くらいから雲行きが怪しくなってきて結局シェルを着た方がいいなと思う程度に降ってきた。それにしても老夫婦の言っていた先行者に全然追いつかない。1人居ると言っていたからきっと一緒に出発したのだろうが、そんなに差がつくものなのか?
悪天で展望なくなる
ほぼ予定通りのペースで進んで直線距離で300mを切ったくらいのところ、地形図で黄色くしたあたりだったと思うが、青いテントが建っているのが見えた。えー、もうちょっとで小屋なのに何故ここでテント!?尋ねてみると、この先のルートが分からなくなって、しかも雪が深くて1人では無理そうだからここでテントを張ったとのこと。因みに私が追い抜いてきた老夫婦とおじさんは会っていなかったらしく、老夫婦が「前に1人いる」と言っていたのはただの予想でしかなかったw

おじさんが右往左往した踏み跡がその先にすこしだけ続いていたので少し自分もその先を探ってはみたものの、もう時刻は16時半近いし雪が降って寒い。整地の時間を考えたら自分ももうここで一緒に張った方が無難だろう。まさか小屋のこんなすぐ手前で幕を張ることになろうとは想定していなかったなぁ。ノートレースならもっと標高の低いところで幕営になるはずだったし、トレースがあれば冬季小屋に着くだろうと思っていたので、今回は内張をつけた吹き流しのエスパースではなく、より軽量なクロスオーバードームにしてきたというのに、まさかの展開・・・。結局この夜はマイナス20度を下回った。。。寒かった。
ここにてタイムアップ
朝食べたの松屋の朝定のお陰もあって午前中はほとんど行動食なしで行動できたが、中盤以降は夢中で登っていたのであまり食べている余裕がなく、着いて整地して一気にお腹がすいてきた。水を作るのもさて置いてとりあえずのマイクポップコーンを1袋かっ喰らう。寒いのでとにかくあれこれ口に放り込みつつ(ビール飲みつつ)、水を作ってようやく鍋にありつく。最近山での鍋は鶏ガラスープの素とゴマ油みたいな味に落ち着きつつあってすこしマンネリ化してきたので今回はうどんスープの素で和風にしてみたが、期限の切れた高野豆腐が春菊の灰汁のようなものを吸い取って結構不味かった。蛋白源ブーストで入れたジョンソンヴィルも、まぁ合わないとは分かっていたけど想像以上に酷かった。整地がうまくいっていない歪んだテントの中、贅沢言っていられないのでとりあえずお腹を満たせれば良しとする。それにしても美味くない。
金曜は午後に客先訪問の予定だったけど昼休みを利用してパワーガス買っておいて良かった
ノーマルだったらこの気温ではどうにもならなかっただろうな・・・w

Day2
7:45 出発
↓ - 0:35
8:20 越百小屋
↓ - 1:35
9:55 越百山山頂
↓ - 1:30
11:25 テント戻り
↓ - 0:50(腹ごしらえと撤収)
12:15 テント出発
↓ - 2:15
14:30 登山口到着
↓ - 2:45(残り4‐5kmのところで軽トラに拾われてワープ)
17:15 須原駅到着

雪が降り続けて
不安な夜だった。3時くらいからトイレを我慢し続け6時過ぎ起床。今日どんな予定ですかとおじさんに尋ねると、今日早目に帰らないといけないのでもう降りますとのこと。兵庫からきているというその方はそのままテントを畳んで下山とのことだった。明日未明に降雪の予報が出ているしそれがどれ程の降雪量かもわからない。彼のトレースが残っている内に自分も少しでも標高を下げておきたいけれど当然山頂も気になる。葛藤の末、とりあえずアタックしてみることにした。足元はアイゼンとスノーシューで迷ったが、雪が割と締まっている気がしたのでアイゼン一択にした。山頂近くではアイゼンに履き替えたという記録を読んでいたのでアイゼンを持たないという選択肢はないし、両方持つのも重い。敢えてスノーシューは持たずに出発した(持てば良かった)。
さらさら雪でいくら掘っても固い雪が出てこず、過去最低の整地・・・
夜、かろうじて繋がった電波で調べたところ、ここから先冬季はトラバースの夏道ではなく尾根を登るらしかった。まぁそりゃそうだよな。岩場のマークもあるけれどなんとかなるのだろうか?とりあえず見る限りはそれほど急勾配でもないので地形図を見ながらゴリゴリ上がってゆくと近くのピーク付近に出てきた。緩やかだ。
美しい朝の景色と青空
ようやく小屋に到着
トラバースしないで登って下らされたので思ったよりは時間がかかって小屋に到着。これ、夜のうちに行こうとしていたら荷物も重かっただろうし時間帯的にもしんどかっただろうなと振り返る。小屋も滅茶苦茶埋もれているし、正直どこが冬季小屋の入口なのか探すのも一苦労だろう。ましてや1人で出入口を掘り出すのも大変だ。矢張り小屋より手前で幕営して正解だった気がする。

ここまでくれば越百の頂は射程圏内だ。とはいえ、なんせスノーシューがないのでここまでくる間にも既にちょっと雪で苦戦している。標高差や距離では計算しきれないブラックホールに吸われるかもしれないし、山頂まで行けたとしても日が高くなれば雪が緩んで復路で踏み抜きに泣くかもしれない。どこで線を引くか?ひとまず「テントに戻ってテントを畳んで標高を下げて一日を終えるためにはテントに戻るリミットが12時」と決めてビクビクしながら再スタートを切ることにした。結果的にはちょっとビビりすぎたw

樹林帯を抜けた白い尾根に辿り着くまで、暫く樹林帯を進む。この区間がかなり深かった。地形的にはまぁ所謂「顕著な尾根」だし視界も良好だったので、ルートファインディングには然程苦労しなかったけれど、どこを踏んだら踏み抜くか踏み抜かないかの見極めには慎重になった。何せピッケルだけしか持たずにストックを置いてきていたので、万が一激しく踏み抜くと脱出に何十分もかかるだろうと思ったからだ。兎に角ツリーホールに入らないよう、そして人か獣が通っているであろう木の隙間を狙って進んでいく。
さぁ、どこを歩くかは自分次第
木が疎らになって、遠くに見えていた頂がまた一歩近付いてきた。山頂直下が結構急で岩っぽいように見えるけれどそんなにゴツゴツした山という印象もないよな、大丈夫かな?雪庇も少ないしここから先は風で雪も飛んでサクサク進めるかな?と思ったらとんでもなかった。まだまだ続く深雪、しかし風もないし天気は良い、自分で決めた12時というタイムリミットだって結構余裕を持ったリミットだし、最悪今日中にテントに戻れればいい(←こうやって都合良くリミットを緩めていくのは本当は良くないんだけれども、とりあえず自分で都合よくリミット緩めてるなという自覚があるだけマシか)。今日行かなかったらいつ行くのか?でも雪のコンディションと「スノーシューがない」というコンディションに関して言えば「良い」「完璧」と言えないのは確かだ。今日山頂を目指すことのアドバンテージとディスアドバンテージを頭の中で思い巡らしながら、それでも歩みを止めない。止めよう、というメンタルが、進もうというメンタルを凌駕しないでくれたことにもしも理由があるとすれば、ここ最近結構体を鍛えていて、体重も体脂肪もそこまで悪くないコンディションで、よく走れているということだったと思う。特にレースが何もないのになんでこんなに走ってんだろうな馬鹿馬鹿しいなと思ったりもする日々だったけれど、多分こういう不意に訪れるタイミングで躊躇せずに踏み込むための準備だったのかなという気がする。体調にせよ体力にせよ、体を整えておくということの如何に大事なことか。
やったねコスモ!
来し方を眺むれば、そこには紛れもなく自分が一人で描いた美しいラインが浮かび上がっている。これが最適解かどうかなんて解らない、美しいかどうかさえも判らない。紆余曲折もあった、しかしこうして目指したところに辿り着いたのなら自分にとっての解なのだろう。こうとしかここに辿り着くことはできなかったのだろう。昨日のうちに小屋に着かなかったのだって、きっとなるべくしてなったことなのだ。昨日頑張って進んでいたら迷っていたかも知れないし、小屋に辿り着いていたとしてもきっと疲れて今朝寝坊していたかもしれない。人生にしろ登山にしろ同じことだ。そして雪山登山の良いところは、こうして歩いたルートがその場で目視できるところでもある。俺はこうやって歩いてきたんだぜ!ってダイレクトに感じると最高に興奮する。

今回、南駒ケ岳まで行ってラウンドするのはどうかな?と検討してみたものの、南駒からの下りがきつそうだったので、行くとして仙涯嶺までのピストンだろうなと思っていた。そこまでならば地形図で見る限り緩やかだ(夏場歩いたことはあるけれどルートがどんな感じだったか記憶はなかった)。でも実際は越百の山頂に着けただけで結構満足してしまって、それ以上を求めたらなんだか罰が当たるような気がしたのですんなりと引き返した。あとで考えると、それこそ「この状況で行かずして何時行くの?」という気がしないでもないが、その時そう感じてそう判断したのだからきっとこれで良かったのだと思う。
仙涯嶺方面、ここもノートレースを歩けるコンディションがワンシーズンに何度あるのかと考えたらすごく貴重なタイミングだったのかもしれないけれど
ちょっとした植生を避けたり沈みそうなポイントを外したりしたのを、踏み跡を眺めながら思い出す瞬間は泣きそうになる。
前情報通り、山頂直下の標高差100m弱はアイゼンが欲しいなという感じの斜度と硬さになってきたのでとりあえずアイゼンがあって良かったけれど、7割以上はスノーシューで良かったなと思った・・・(後の祭)。そしてこの時期のこの辺にしては雪が安定していないように感じた。とはいえ今年これ以上冷え込むことがあるのかは謎なので、さらに安定するのを待つよりは残雪期を待った方がいいのかなという気もする。
復路、やはり往路よりも沈む。とはいえ心配していたほどではなく一安心
たまに踏み抜いて腿まで
テントに戻って撤収して降り始めたら、普通に2時間ちょっとで下山してしまい拍子抜けした。しかも舗装路を歩いていたらあと5kmくらいのところで地元の軽トラに拾っていただき荷台に揺られて須原駅まで幸せなワープ。早目に下山しても終電は間に合わないし、またステビして下諏訪で温泉巡りでもして帰ろうかなと思っていたけれど、ワープのお陰でぴったり終電に間に合ってしまったのでそのまま温泉にも入らずご飯も食べず日曜のうちに自宅まで帰宅してしまった。3連休で1日残すのは悔しい気もしたが、これも何か意味のある事だろう。予備日という気持ちの余裕があったからこそ山頂を目指せたのだろうと思うし、もし予備日がなかったらおじさんと一緒に下山してしまっていたかもしれない。

なんかとりあえずブログ残しておこうって思う程度には印象に残る山行だった。行けて良かった。

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