2025/07/16

20250627-28_Deep Japan / Uonuma 80k(前編)

100mileではなく80kmの方を選択したのは、確実に完走するためだった。
諸事情あって、このレースはどうしても完走しなければならない理由があったのだ。
80kmに出走したことで当然きっちりゴールすることができたし、目標としていた15時間台を大きく下回り14時間かからずにゴールが出来たことで自己肯定感もほんのすこし上がり、自分にとっては良いことしかなかった。レースが終わってからリザルトを見てみると、女子の100mileを完走した人の顔ぶれが凄まじかったので、これは仮に欲を出して100mileに挑戦していたとしても完走できなかっただろうなぁと思った。80kmで良かった。

バリ島でのレースBTR Ultraが終わってから約1ヶ月半。
バリは100kmのレースで、そもそも初めての海外レース、累積標高も7000m超えと少し完走に対して不安のあるレースだったが、それに続く今回のUonumaは80kmで累積標高4000m程と個人的には割と心配の要らないスペックだった。距離と累積でいえばほぼハセツネに近いし、トラブルがなければ完走できるだろうという確信があった。しかしそのせいでコースの分析もろくにせずに当日を迎えてしまい、パッキングは家を出る日の早朝にやるという体たらく。レースは金曜正午スタートだったが、ちょっぴり乗り鉄の私は都内から各駅停車で6時間半かけて前日に会場入りすることにした。ある意味贅沢な木曜昼間の大移動、最初の修業(苦行)は乗り鉄タイムをほぼアルコール無しで過ごすことだった(まじ苦行)。さすがにレース前日に6時間半飲み続けるのはどうかと思ったのでアルコールは控えた。旅の序盤、都心を抜ける前に電車が遅延しはじめてしまって前日受付に間に合わないかと思われたが、どうにか電車も接続してくれて助かった・・・。

受付会場である入広瀬へのアクセス最終章、只見線に乗る前に1時間の待ち。
この時間を利用して、片道15分ほどのコンビニへ買い出しに向かう
1両編成の只見線!
只見線に乗ってようやくビール解禁!そして鉄分補給のレバーw
(今回もまた女子の日とレースが被りました・・・)
ここから徒歩数分で受付会場である入広瀬小学校に到着。
受付は17:00迄だったが、駅に到着したのが16:45くらい。小学校は既に廃校となっているところを借りてスタート/ゴール地点としているようだ
同じ只見線にはアジア系の顔立ちの男性が乗っていた。彼も会場に向かってスーツケースを転がしながら歩いており、会場に着いてから話をしたところ、なんと先日私が出場したBTR Ultraのレースのコースディレクターの方で、今回Deep Japan(100mile)出走のためにわざわざバリから来日したとのことだった。こんな偶然があるのかと驚いた。

レースの受付はレース当日の金曜日でも良かったのだが、折角前日に移動したので余裕をもって前日のうちに受付を済ませ、ゼッケンやら何やらの装着といった厄介ごとを落ち着いた状態で夜のうちに終わらせておきたかった。自分のメンタルを惑わす程の過度な情報は要らないから、ひとりの時間があったのはとても良かった。会場では久しぶりにトモさんに会えたのでどのくらいのタイムが目標なのか等を聞かれて軽く話をした。15時間台くらいかなぁと言ったら、それくらいだろうなぁという顔をされたので、トモさんがそう思うならばきっと私の予想は強ち間違ってはいないのだろうなと思い、改めて15時間台(あわよくば15時間以内)というのを目標に掲げた。私は最近ハセツネで13時間半くらいかかっているから、それより距離が10km弱多くて累積標高は500mくらい少なく、私が苦手とするロードが長いともなれば15時間前後だろうなぁというのが目標タイムの根拠でもある。

物販は協賛のGoldwinメインであまり店舗数はなく、ブラブラ会場を楽しむには小規模だったのであっという間に見終わってしまった。特にあてもなく歩いていると、丁度メインステージのようなところの脇で上位入賞者のための木製の盾が並べられていた。よく写真で見かける、UTMFで入賞すると貰えるような感じの盾だった。(そもそもこれは盾と呼ぶのか、木製のトロフィーと呼ぶのか、よくわからないけれども。)

嗚呼、私、これ欲しいな!シンプルにそう思ったら入賞のイメージが一気に強くなった。負けそうになったらこの盾の姿形を脳内で反芻すれば力になると思った。こんなの家にいっぱいある人にとっては邪魔なものかもしれないけれど、持っていない人にとってはちょっと魅力的なんだよな。
実際に近くで見るとものすごく魅力的に見えるものだな・・・
会場近くには地元のAコープというスーパーがあり、その存在は事前に調べてあったのだけれど、どんなラインナップかわからなかったので小出駅の乗り継ぎの時にひととおりの夕飯と晩酌用おつまみと翌朝のご飯は調達してあった。予想は的中、Aコープはそこまでお惣菜やらご飯やらといったものが売られていなかったので小出で買い出ししておいて正解だった。Aコープではアルコールだけ調達し、会場内で最適と思われる場所を見つけてソロで晩酌。今回宿は取らずに近くの道の駅でステビしようかと思っていたのだが、控室が夜間も解放されていて泊まっても良いとのことだったので遠慮なく女子控室(音楽室)で眠らせていただくことにした。ほぼほぼ貸切w最高。
セブンのつくねセットみたいなやつとレモンサワーで晩酌。
控室は飲食禁止と書かれていたので、小学校敷地内のプール跡地にて。エモい!
夕焼け鑑賞会
信号が近い
音楽室で就寝。右奥に2人くらいスタッフの方が眠りにきただけであとは私1人だった。
廃小学校の音楽室で眠るという体験もなかなかできるものじゃないので、これはこれで楽しい。人も少なく普通に朝まで爆睡。

6/27(Fri)12:00 Start
寝泊りしていた音楽室からスタートゲートまで徒歩1分以内というあり得ない状況で、20:00~8:00くらいまで1度くらいしか目覚めることなく爆睡。9時頃に一通りの炭水化物をブチ込み、テーピングや水など最後の準備を整えてまずは100mileの選手達のスタートを11:00に見届ける。
米粒の形をした魚沼のゆるキャラ「うおぬまっち」と記念撮影w
手の形も米みたいな形をしてる、脚が短くてうまく歩けない愛すべきキャラw
福田六花先生(医者)によるライブw(カテゴリー毎に毎回ライブしていたぽい)
Deep Japanのために作られたオリジナルテーマソングの披露、やたらサビが耳に残る・・・
そしてレース主催の松永紘明氏が語り(ラップ?w)部分を担当w
個人的に全く想定していなかった熱血レースでちょっと面白いw
自分は何のために生きるのか?自分探しの旅へ出よう、みたいなクソ熱いラップを聴きながら、80kmでも160kmでも30kmでも別にそこまでの意味はねぇよと思いつつテーマソングを聞き流す。いやこれが自分にとって初めての距離だったとしても、そんなに走りながら自問自答みたいなことはしないと思うのよ。別にいいけどw

このレースの特徴は大きな登りが2度あること(100mileはさらにもう1回ある)、そしてロードが長いこと、必携装備が多いことが挙げられる。そして浅草岳、守門岳という雪深いエリアを通過するため、場合によっては軽アイゼン等を含む「残雪セット」や、フリースやダウンを含む「低温セット」という2パターンの必携装備追加が言い渡されることがある。今回いずれのセットも除外になったので一番軽い装備で出走できた筈なのだが、それでも中間着や脚を完全に覆えるタイツ、防水防寒手袋など、他のレースではあまり見ないような装備の携行を強いられるため、装備品の選定が勝負を分けることになる場合があると言ってもいいだろう。ウォーターストレージも2L以上必携のため、今回は久しぶりにフラスクではなく2Lのハイドレーションをメインに、+αで500mlフラスクとした。
ロードが長いのは、標高図を見てなんとなく感じてはいたものの、6-7割ロードだとかいう話を聞いたのはレース当日の朝だった(実際何割がロードだったのかは分からないが)。走るしかない・走らない理由が無い、というか走れないのは練習不足だよねみたいなのを突き付けられる林道がずっと続くということは、まぁ、そういうことだ(察し)。これほどロードが多いとなると、きっちりロードを走れるかどうかでタイムは大きく変わってくる。
西側から始まりまずは東の浅草岳の登りをこなす。その後往路と同じポイントを経由したりしつつ西に戻り、大岳(守門岳)を登って小学校に戻る。

Start~CP1 山菜会館(13:15)
最初のエイドはスタートから9kmほど。スタート時の水は2Lのハイドレーションを満タンにはせず1L程とし、1度目の山菜会館で水を補給してから浅草岳に取り付く作戦とした。ちょこちょこトレイルに入るけれど基本的にはロードの9km、天気予報では小雨が降る中でのスタート→次第に雨が上がってその後は曇り、ということだったがスタート時も雨は降らずずっと曇天だった。日差しがあったらもっともっと暑くなっていただろうから曇り空でとても助かった。とはいえ湿度が凄まじく、夜間にガスが出るのではないかと不安がよぎる。持ってくるつもりでいたハンドライトとフォグフィルターのセットを忘れたことにここで気が付いた。時すでに遅し。

緩やかな傾斜のロードの登り、こういうところを走り切っていく人は強い。私は休んだり走ったり、走ったり休んだりを繰り返しながら、でも止まったり極端にペースの遅い歩きにならないように気を付けてずっと進み続けるようにした。登りのロードで女性ランナー2名ほどに抜かれたのを覚えていて、最低でももう3位(もしかしたら更に前にも何人か居るかもしれない)、女子選手が少ないとはいえなかなか女子総合で入賞するというのはハードルが高いことだなぁとぼんやり思っていた。最初は「あわよくば3位以内」と思っていたものが、あっという間に「5位までに入れれば盾貰えるし・・・」になり、そのうち「15時間台という個人的な目標さえ達成できれば、、、。順位っていうのは結果についてくるものであって、、、云々」と下方修正を繰り返した。たかだか10kmでそこまで下がってゆく目標、なんと自分に甘いことか!

体から湯気が出るくらい火照った状態で1時間15分で辿り着いたCP1山菜会館。エイド食も楽しみのひとつではあるものの、私はついつい食べ過ぎてエイドで長居しがちなので、今回はできるだけエイドでの滞在時間を短くして順位を落とさずに、より良いタイムでゴールすることを目標とした。ここのエイドでは豚汁を少しとおにぎり、甘酒、ヤマザキの薄皮シリーズのあんぱんとピーナッツパン(だったかな?)あたりを頂き、ジェルを1本頂き、水を2L満タンに積んで出発。甘酒が兎に角めちゃくちゃ美味しくて、小さめのコップに何杯お代わりしたかわからない。後で聞いた話によると、地元でお米を作っている農家の方が甘酒にして販売しているもので、赤米の甘酒はまだ発売しておらず、今回のレースでしか飲めないものだったらしい。農家の方自らレースに甘酒を提供したいと申し出てくれたのだそう。ピッチャーの中の甘酒は半分凍っていてほぼフラペチーノ、火照った身体のクールダウンに最適だった。甘さも丁度良くて7-8杯はお代わりしたかも。美味しい美味しいといって補給はほぼこれに頼っていた気がする。
お世話になった甘酒!
タイムを見ると、1~3位の女子は多分同じ時刻にここに居たと思われ、記憶を辿っても多分女性を見かけた気がする。そうなってくると矢張り気を遣うのがエイドの滞在時間をどれだけ切り詰めるかだ。熱いヌードルや豚汁に時間を費やしている暇はない。80kmの人はもうここには戻ってこないよー、とエイドのおばちゃんに言われて、えっそうなの??と思う程度にはコースを把握していなかった。実際は浅草岳が終わったらここに戻って来る(流石にマップやタイム表を作って持参していたというのに、焦りすぎて認識が酷い)。
去り際に1枚パチリ

 CP1~CP2 山菜会館ふたたび(17:55)
(ここまではレース後割とすぐに書いたので記憶が新しいのですが、この先は少し時間があいてしまったので記憶が大分薄れていますスミマセン)
肝心の浅草岳の記憶が薄れているのが本当に悔しいのだけれど、まぁ天気は悪くてガスで景色もなく、ヒメサユリが見られたことだけが救いだった。水2Lはやっぱり重い。でも登りは正直得意な方なのでそこまで辛かった記憶はなく、しかもまだ一度目の登りなのでぐいぐいいけたような気がする。寧ろ疲労の溜まった状態で臨んだ2つ目の大岳の登りの方がキツかった。
真っ白w
一昨年くらいに同じような時期に浅草岳に行った時、諸事情で見られなかったヒメサユリ、
今回はお目にかかれて光栄でした!
ようやく降り。雪渓ちらほら。
やっぱりブログはすぐ書くに越したことはないな。。。途中まで書いていたのでやめるわけにもいかず惰性で続けているものの、こんなに鮮度の落ちた文章に何の価値があるのだろうかと思ったりもしている・・・。
浅草岳を終えて再び山菜会館へ。
途中この辺りだったかもう少し手前だったか記憶が怪しいのだけれど、1時間前にスタートした100mileに出走した友人に出くわす。温存しているであろう長距離の人達より80kmの選手の方がスピードがあるとはいえ、これは自分は突っ込みすぎなのではないかと不安がよぎる。いくら彼らを抜かすにしたってこのタイミングは早すぎないだろうか。
浅草岳の登りで前後した沙樹さんとは、下山後のロードは一緒に走っていたのだったと思う。一緒に喋りながら走れたことで気が紛れたよね!というような話もした。思ったより長い長いロード。
CP2とCP3の沙樹さんとわたしの到着時刻はほぼ同じ。

一旦本編から離れてスペック系まとめ

<エネルギーと水分>

・エネルギー:レギュレーションで800kcalとあったので800~1000kcalほど持参。250kcalほど残して他は消費。ジェル・黒みつ・アミノバイタル顆粒・羊羹など。セブンイレブンの宇治抹茶わらびも持参したが、食べたい時にザックのポケットの奥の方に入ってしまって取りだせず、ゴール後に食べた。途中、エイドに置いてあったジェルは2本ほど貰って食べた。

・水分:2Lのウォーターストレージがレギュレーションだったので久々にハイドレーションを持参。ハイドレ2L+インナーファクトのフラスク500ml→スタート時1L程、その後浅草岳前と後では2Lフルチャージ。その他必要に応じて500mlにはスポドリを入れるなどして味変。ハイドレはずっと水。


<服装、装備>

・ヘッドギア:HerenessのFOCUS CAP(チームのロゴ入りオリジナルデザイン)

・上半身:Finetrackのノースリーブドライレイヤー+Patagonia半袖T(どこかのレース会場で買ったもの)、ORのアームスリーブ(一度も伸ばさず手首につけたまま終わった)、チャリ用指切りグローブ

・下半身:知り合いがカモシカの刺繍を入れて販売してくれているバギーズショーツみたいな感じの短パン(3000円くらいの)、CW-Xのボディバランスアップスパッツ・ショート(BCY101)、ドライマックスのソックス
・ライト:レッドレンザーH8R(メイン)+モンベルマルチパワーヘッドランプ(予備)

・ザック:Black DiamondのDistance15(必携装備が多く、TR10には収まらなかった為)

・シューズ:HOKAのTorrent4

・その他(必携装備等):エマージェンシーキット、雨具(ORのヘリウム2ジャケット+モンベルのストームクルーザー下、一度も着ず)、ココヘリ端末、MilestonesのCloud Hoody(ミッドレイヤー必携のため持参したがこれも着ず)、ヘッドライト予備電池(レッドレンザー用とモンベル用といずれも)、モバイルバッテリー(Ankerの10000mAh)+ケーブル、ヘリテイジのULトレイルポール、ワークマンのメリノグローブ、アクシーズクインの防水グローブ、ティッシュ&ビニール袋、生理用品、モンベル熊鈴(小)、Fold-a-cup(マイカップ必携のため)、手拭い、スノーピーク極カップ+100均カトラリー(推奨装備だったが一度も使わず)

後編へつづく

2025/05/18

20250509-11_BTR Ultra 100k(レース後編)

レース前日編はこちら
レース前編はこちら

ドロップバッグポイントを出発して間もなく夜が明けた。今アグン山山頂付近に居る人はこの景色を山頂から眺めているのだろうか。ちょっと羨ましくもある。
林道の登りで再びAdelinah選手に追い付いたので雑談。後ろを振り返るとアグン山が鎮座していて、あの頂に昨夜居たのが信じられないよなぁ、というような話をして2人してしみじみする。
レースのスタートは夕方だったのでその後すぐに夜がきて、初日はそこまで灼熱という感じにはならなかったのだが、今日はこれから日が高くなるにつれてどんどん気温もあがり湿度も高いので蒸し暑くなるのは明白だ。あまり晴れ過ぎないで欲しい。
この山脈のどこかがリンジャニだよとAdelinah選手が教えてくれた(一番高い山かな?)
夜が明けて振り返るアグン山。

【WS7 / 67.3km Jatituhu】5/10 7:53

途中ニワトリの行列に出くわしたりなどしながら次のエイドに到着。ここでも盛大に鼻血を出した。既に手持ちのティッシュが無くなってきていたのでエイドのティッシュを使わせて頂き、更に出発時にも何枚か貰った。あまりにも血が止まらず、しかもティッシュを取り換える時に鼻からドバドバ血が滴りまくるのでメディカルスタッフまでやってくる始末。ドリンク冷却用の氷を袋に入れてくれたので、鼻の上の方や首の後ろを冷やしつつ鼻血が止まるまで暫く休む。またAdelinah選手が先行して出発した。
豆とご飯のお粥のようなもの、ココナッツミルク風味の優しい味で美味しかった。
(鼻血を出しながらも、エイドのメニューはきっちりこなしていくスタイルw)

赤いシェルを腰に巻いているのがAdelinah選手
アバン山(Mt. Abang)の登りで再び彼女に追い付き、ここからは結構ずっと一緒だったと思う。進むトレイルにはワラビが沢山生えていたので、これ日本では食べるんだよね、というような話をした。このままじゃ食べられないから重曹に一晩浸してさぁ、みたいなことを言っていると、別の草をむしり取って、私達はワラビは食べないけどこの草は食べるよ、チリソースをかけてサラダにして食べると美味しい、とか話していた。一気に登れずに腰を下ろして一緒に休憩しつつ、彼女がいつも持参するという「肉」を分けてもらった。味付きのオレンジ色をした謎肉ジャーキーのような甘じょっぱい味付けだったので、こんなのビール欲しくなるやつやん、といって笑った。しゅわしゅわしたいなぁ。
右手前にワラビ。もうバリは結構暑いし、日本の感覚でいったらもうワラビの時期でもないと思うのだけれど何故かワラビ最盛期w
藪がちな急斜面を登ると人工物のある平場に出た。ガスっていて先がよく見えないので、ここより高いところがあるかどうかがよくわからない。ここが山頂かな?多分そうじゃない?みたいなことを言いながらまた鼻血。彼女に先行してもらって私はここで暫く休む。
しかし偽ピークだったのかここは山頂でもなんでもなく、少し降ったと思ったらまだまだ続く登り!
ようやく山頂!
山頂に着くとレースと関係のない普通の登山者も多数いて賑わっていた。この辺りから60kのコースと被るようで、100kと60kのランナーが入り混じるようになる。スタッフの人が居たので写真を撮ってもらった。鼻血のティッシュ詰めたままだけど、これはこれで面白いのでこのまま撮影。こんなところでわざわざ旗みたいな装飾がされているのはレース仕様なのか、はたまた常日頃から装飾されているのかはわからない。
アバン山、標高2150m。最後の大きな登りが終わった!
ここからの降りは岩場系+砂礫系スリッピー。100kmのレースの中でサーフェスが目まぐるしく変わっていくので、色々な状況に対応できないと難しい感じだ。でもその難しさが楽しい!これはこうやって降りると上手く降れるよね!みたいに、過去の自分の経験を活かして答え合わせをしていく感じだった。ちょっと大袈裟だけれど、まるでこれまでやってきた山の集大成のような。
捻らないように慎重に・・・
アバン山を降ってくるとガスの中に湖が見えてきた。スタートする時に見たバトゥール湖に帰ってきたのだ。旅がとうとう最終章に差し掛かったのを感じながら脚を運ぶ。湖の中に何か四角い人工物が並んでいるのが見えたがあれは何だったのだろう?

道標のようなもの(下の写真)を通り過ぎて、ここからまた一気に標高を下げていくのだが、確かこの区間がとんでもない急斜面だったと思う。長いロープがひたすら続いているので一旦ストックをしまったのだったか。ロープに全体重をかけるのはよくないなと思って岩や木の根などを掴みながら降りていくが、アグン山といいアバン山といい、この過激なルートがレースコースだなんて信じられないwワンミスが命取り、大事故待ったなしである。
翻訳ツールで訳したらこのようになったw
「マハルディカ・ブキ・テルニャン自然観光の対象 テルニャン村」
まぁ保全地域みたいなことなのかな?
ここまでずっと水には困らなくて、1L持ってエイドを出ても1L飲みきることは無く、区間によっては500mlすらも飲みきらないまま次のエイドに到着することも多かった。しかしこの降りの途中で水の残量に不安を覚えた。自分の時計のコース表示が狂っていたのか自分の勘違いなのか今となっては真実はわからないが、急坂を終えてもまだエイドまで7-8kmはあるような気がしていて、これは相当水を節約していかないと足りなくなるぞと焦り始める。太陽は既に真上に至り気温は高く、ロードが長く続くとまずい。汗をかくのであまり飛ばし過ぎないようにしたい。
途中、山の中腹に売店があって、そこでおばちゃんがドリンクやお菓子を売っていた。現金は持参していたので買おうと思えば買える。買うべきなのかな?ていうか炭酸売ってる!飲みたい!とか思いながら少し迷っていると、Adelinah選手が後ろからやってきてI'm so hungry!! と言いながらベンチに腰を下ろした。え、彼女ここでご飯食べるの??と混乱しつつも私はそのまま水分も食料も買わずに先を急いだ。

エイドから持ってきたチョコレート系のエナジーバーとかだと口の中の水分が奪われていくので、日本から持って行ったセブンイレブンのわらび餅シリーズを水分代わりに食べてしのいだ。宇治抹茶わらびと桜わらびを食べたが、いずれも黒糖わらびよりも汁気がなく、食べた後のゴミがべとつかなくて良い。そしてインドネシア料理ばかり食べていて数日間忘れていた和の繊細な香りが鼻に抜けてとても心地良く、緊張を強いられてたロープ区間でささくれた心は穏やかに落ち着いた。食べ物というのはエネルギーを補給するだけのものではなくて心に作用するとても大事なものだとつくづく思う。

【WS8 / 79.5km Terunyan / CP5】5/10 13:54
心配をよそに、突然ぽっと次のエイドが現れた。助かった!ほどなくしてAdelinah選手も到着した。中腹の売店ではhungryと大声を出していたけれど、別に食事はしなかったようだった。
道を挟んでエイドの逆側には大きな寺院が。
たぶんPura Ratu Sakti Pancering Jagat Trunyanだと思う
ここは結構大きなエイドで人も多く賑わっていた
ターメリックドリンクという謎のドリンクがタンクに入っていたので恐る恐る飲んでみたけれど、甘くもなくただただターメリックの粉を水に溶いたような液体でざらついており、これがランナーにとって何の役に立つのかは全くもって不明だったし説明もなかった。とてもまずい。
あとで調べたところによると「研究者たちは、ターメリックを摂取することで、激しい運動後の筋肉痛や炎症を大幅に軽減できることを発見しました。 ターメリックに含まれるクルクミンの抗炎症作用は、運動中に発生する酸化ストレスと戦うのに役立ち、回復プロセスを加速させます。 つまり、ターメリックは、単に不快感を和らげるだけでなく、より早く効果的にトレーニングへ復帰できるようサポートしてくれるのです。」とのこと。そうなの?カレーペーストみたいになっていたら美味しく食べられて良さそうな。
お米に鶏やジャガイモの入ったスープを欠けた雑炊のようなものをいただく。
ゆで卵トッピング
水の心配が溶けてガブガブと水分をとりまくる。ココナッツドリンクにコーラに水、冷たいものを一気に飲みまくってAdelinah選手より先に出発。飲み過ぎた気はしたものの、レース全編を通じてお腹を壊すようなトラブルに見舞われることもなかったのは良かった。異国の食べ物をひたすら口にしているというのに、私の胃腸ってば強い!

WS8では欧米人の60k選手が隣で既に食欲を無くしてじっと俯いていた。WS8を出発してから暫くの間前後しながら進んでいたが、最初の登りで盛大に戻している音が聞こえた。多分お腹に何もないだろうから、出てくる固形物はなさそうだった。

【WS9 / 82.2km Pedahan】5/10 14:26
登り口に大量にゴミがあるのを横目で見ながら急な斜面を登り、ほんの数キロでWS9に到着した。この区間だったと思うが、時計(COROS Pace2)のバッテリーが減りすぎてログが取れなくなってしまった。充電しようとしても何故か充電されない。ログが取れないということはコース離脱アラートが鳴らないということであり、残りの距離が時計だけでわからなくなるということであり、それは地味にメンタルに響くアクシデントであるのは明白だった。とはいえまぁもうここまで来ている訳だしここからメンタルが崩れる程フィジカルがダメージを受けている訳でもない。まぁ仕方ない。

WS9は食事のない簡易エイドだった。手前のエイドからそれほど離れていなかったので空腹もなく、エナジーバーやらジャガイモやらを少しだけ口にして通過する。

全部のエイドにトイレがある訳ではなかったしどんなトイレかも分からなかったので、私はずっとその辺で適当に用を足していた。このエイドを出た直後に雨が降り始め、きっと皆エイドで雨宿りしてから進んでくるだろうなぁと思いながら用を足していたら、ズボンを上げた途端に後続の選手が走ってきてしまいちょっと慌てた。少し待てばスコールなんて止むのに、皆待たずに進むのね・・・

ますます雨は激しさを増す。バナナのような葉の下で雨宿りをしていると、向かいの家の家主が手招きで私を軒下に入れてくれた。凄まじい雨の中を選手が数名通過してゆき、私も休んでいる場合ではないと思い直す。暑いけれど、あまりにも雨が酷すぎるのでとりあえずレインジャケットを羽織る。
程なくして雨は止み、降ったあとは暫く平坦な道を進んで再び登り。平坦な道の途中では大きな岩の上に男性が座っていて、スタートの時に挨拶した日本人の100k参加者マコトさんだった。「あなたが落としたのは金の斧ですか?銀の斧ですか?」・・・ではないけれど、私は会って一言目に「もしかしてMAGMAを落としませんでしたか?」と尋ねると「落としました!」との答え。Adelinah選手がアバン山の登りの途中で「これ日本語書いてあるけど、あなたが落とした行動食じゃないの?」といってMAGMAの入ったジップロックを私に渡してくるので「いや私のじゃないけど、日本人何人か走ってるのは知ってるから、後で会ったら聞いてみる」と言って預かったのだった。マコトさんは眠すぎるので少しここで瞑想するとのことだったので、少し会話して私は先に行くことにした。途中どこかで眠気ではなくてパフォーマンスの低下を感じてカフェイン入りのメダリストを摂取したような気がするが、どこで食べたかは記憶がない。とりあえずマコトさんと会ったタイミングでは、私はびっくりするくらい全然眠くなかった。カフェイン抜きが効いたのだろうか。

次の登りは再び急斜面。いかにも虫が多そうに見えるけれどそうでもない。
鬱蒼とした草の中を登る。草で脚が痒いw
ここがかなりの激登りで苦戦した。こんな後半にこんな厳しい登りがあるとは正直想定していなかった、というか標高グラフを見てもここまでの登りをイメージできていなかった。激しい呼吸で登っている途中でふと後ろを振り返ると虹が出ており、レインボー!と声を出して周りに知らせてみるも、皆特に興味がなさそうだった。見慣れているんだろうか。

垂直に近いような角度でぐいぐい登る。脚の元気に任せてプッシュしているとオーバーヒートでまた激しく鼻血が出た。周りの人もとても優しくて、ティッシュをくれたり高度障害の一種じゃないかとかなんとか言って取り囲んでくる。いやーつい数日前まで高い山に居たし高度障害ってこともないと思うんだがなぁ。彼らに見守られながら休んでいると後ろからまたAdelinah選手がやってきた。なんでこんな急斜面で座ってるの!また鼻血!?かれこれもう5-6回目だよとかそんな会話をして再び彼女とスライドした。どちらが先にゴールゲートを潜るかはまだわからない。

【WS10 / 92km Alenkong / CP6】5/10 17:26
時計が時を刻む以外の仕事をしてくれなくなってから暫く経ち、次のエイドって何キロ地点にあるのだろうか今自分は何キロくらい進んだのだろうかと思い巡らせながら辿り着いた92kmエイド。手元のタイム表だとエイドは68km-80km-85kmと続くはずだったが、実際は82.2kmの次が92kmだった(全然違うw)。思いがけずもう92kmまで進んでいたことがわかり、大分気持ちは楽になった。アグン山を登る前のエイドで食べて美味しかったソーセージがまたここでも登場したので喜び勇んで2本ほどいただく。美味しいんだよねぇこれ。
もうこの先ずっとロードだよ!と大嘘をつかれる
スタッフの人から「このあとずっとロードの降りだよ!」と言われた。ロードは嫌いだよ。でもここから10km程度のロードの降りなら、1時間もあればゴールできちゃうんじゃないの?想定していたよりもめっちゃ早くないか??ロードと聞いてすぐにストックを畳んで仕舞い、ラストスパートとばかりにアスファルトを飛ばした。こんなに走れる脚が残っていたならもう少し手前から本気出せよ・・・と自分に突っ込みつつテンションMAXで進んだが、すぐ舗装路が終わって林道になったばかりか道が登り始めて走れなくなり普通にスローダウン。全然ロードでもなければ降り一辺倒でもない。騙されたw 長い~長いよ~ もうあとちょっとで終わりだと思ったのに全然終わらない!登って降って曲がって、畑の脇や民家をすり抜ける。ひょっとしてぎりぎりヘッドライト使う前にゴールするんじゃないのかとさえ思ったが全然そんなことはなく、流石に諦めてサングラスとヘッドライドを入れ替えた。全区間の中でここが一番長く感じた。

【WS11 / 100km Songan / CP7】5/10 19:10
ゴールかな?と思ったら、ゴール直前のエイドまでピストンするという謎コースがあり、これをこなして更にもうひとふんばり。一応CPなので、ゴール直前だというのにタイムが記録された。ここの補給ポイント要らないと思うw

【GOAL / 102.27km】5/10 20:17
WS10から勢いよく出発して脚も十分残っていたけれど、残り何キロかもわからない状況でだらだら進んで段々飽きてきて、たまに失速したりしながらもようやくゴールゲートが現れた。やった、ついに走り切った!脚は終わっていない、そのことがとても嬉しい。初めて走った奥久慈トレイルの時のように、ゴールゲートまでの数十メートルで猛ダッシュをブチかましてやった。
ニーインしているように見えますねw
不細工ですいませんw
ゴールして完走メダルを首にかけてもらうと、ゴール正面にはゴール見物をする人達が椅子に座っていた。他のカテゴリを走っていたと思われる日本人男性らに「100はやばいっす!おめでとうございます!」と声を掛けられた。彼らが何キロのカテゴリの人だったのかはわからないが、3000m超のアグン山を登るのは100kのみなので、それだけをとっても「やばい」と思えたのかも知れない。いやまぁどのカテゴリも尊いと思うわ。自分なりにレースを完結させることが重要のような気がする。

ゴール後にも食べ物が用意されていたので、私はフライドチキンと白飯、更にチキンスープみたいなものを食べてから撤収した。たまたま何か聞こうとして声を掛けた人が運営側の人だったので色々話したけれど、アグン山からの景色を見て欲しいから来年は100kのスタート時間を変えようかと思っているのだそう。エイドの食べ物や間隔はどうだったかとか、マーキングは大丈夫だったかとか色々尋ねられた。正直マーキングは十分すぎて、付けるのも外すのも大変だろうと思った。どうやら前日に人海戦術で一気にマーキングしたらしい。

因みに一緒に参戦した友人も無事ゴール。二人とも完走できて本当に良かった。

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女子6位でゴール!
文章にするにあたり細かくリザルトを見ていて初めて知ったのだが、ずっと同じようなペースで推移してきたAdelinah選手はWS10から11にかけて失速したようでWS11の到着タイムは私より20分も遅く、ゴールタイムは私より1時間15分ほど遅かった。何かトラブルがあったのかと思ってSNS経由で状況を聞いたところ、酷い水ぶくれができて全く走れなくなりリタイヤ寸前、最後は泣きながら進んだとのことだった。それでも彼女はゴール出来て幸せだと言った。彼女は強い。なんだかんだで一緒に写っている写真はいくつかあったけれど、最後一緒に写真撮りたかったなぁ。またいつかどこかで。

友人の誘いがなかったら私はこのレースに出ていないだろうし、初めての海外レースなんて5年10年後になっていたかも知れない。彼女とは二人だけで一緒に山に行ったこともなく、一緒に山を走ったのは複数名でしかも10年くらい前の一度きり、そんな私を今回このタイミングで気軽に誘ってくれたことに対しては感謝しかない。

レース後は現地に数日滞在し、ラフティングにスパ、プールにダンス鑑賞とバリ満喫。小学生の頃に見て以来のケチャダンスを今回絶対に見たいと思っていたのにタイミングが合わなくて見られなかったので、バリにはまた来ないといけないなぁと思っている。

レースが終わって歯を磨くと、歯茎に近い歯の表面が酷く沁みた。痛みは数日続き、そんなに痛みが続くのは今までで初めてのことだった。体にとって負荷が強いレースを走り終えると歯が沁みるのは自分にとってはよくあることではあったが、今回は実に数年ぶりだったと思う。そこまで追い込んだつもりもなかったけれど、自分が思った以上に身体は頑張ってくれていたのかもしれない。とはいえレースが終わってみると筋肉痛などのダメージはそこまで無くて、一晩眠って起きて午後くらいにはすっかり元気になった。まぁ鼻血のせいでそこまで追い込めなかったからな。

総じて、楽しかった。
私のリザルトまとめ。順位上げていく展開が出来て良かった!
終盤の降りでは失速した自覚があるけれど、全体で見ると他ほど失速しなかったというか、皆失速したから自分だけ沈む感じにならなかったのかな?
ゴール後の宿もOle Athltcの方々にお世話になりました。
友人のコネクションのお陰。ありがとうございます!
翌朝解散後に集合写真!