2022/10/09

20221009-10_第30回日本山岳耐久レース・長谷川恒男CUP(前編)

今年トレランのレースに復帰しようなんて、エントリーする直前まで考えてもいなかった。ましてや、復帰戦一発目をハセツネにするつもりなんてまったくなかった。でも競争率の高いハセツネに、さしたる競争もなくエントリーできると判った瞬間、PCのディスプレイから目が離せなくなってしまって、私は無心でキーボードを叩いた。何故だかほとんど迷いは無かった。そのまま私は、レースまで残りあと何日かを示すスケジュール表をexcelで作った。あと121日。私の中枢から何かが込み上げてくるのを感じた。

COVID-19のせいでこの2-3年間に数多くのレースが中止になって、私はといえばCOVID前に故障した膝がようやく治ってきてそれなりに走り始めてはいたものの、レースにエントリーするほど調子が戻っているわけでもなければどうしても何かのレースに出たいといった情熱もなかった。本調子でもないのにエントリーして、直前でレースが中止になってエントリーフィーが返金されなかったら嫌だなぁとか考えていたし、まぁ復帰するとしても2023年の奥久慈かキタタンからかなと思っていた。

私の周りの人達もあまり走らなくなって久しく、そんな中何の前触れもなく奥久慈トレイル完走という友人の報告を耳にしたのが5月末。その時も興奮こそしたけれど興奮止まりで、その後毎年恒例のハセツネエントリー日である61日を迎えて誰かがエントリーできたりできなかったりと盛り上がっているのを耳にしても「うわー随分エントリーフィー値上がりしたなぁ」とか思って傍観するだけだった。それなのに、だ。タイミングというのは実に不思議なもので、今年初参加をしようとしていた友人のなりさんがゆずれーるでエントリーできたと知り、ふと自分もランネットを確認してしまった。なんと女子一般のカテゴリーのゆずれーる枠があるじゃないか。普通こんなにタイミングよくゆずれーるとか出てないだろ?こんなの運命だろ。再始動するなら今ってことなんだな、そして何かに導かれるようにして私の夏が始まった。


日々の山行やらトレーニングやらといった細かい話は省略するとして、ひとつだけ書いておきたいのがハセツネの前にエントリーしてあった歩荷レース、9月4日の西駒んボッカのこと。中央アルプス木曽駒ヶ岳の西駒山荘まで薪を担ぎ上げる競走で、私は15kgの部で女子2位になれた。女子でいえば自分より速くゴールした人は3kgの部を含めても4人しかいなかったのだ。走るレースではなかったけれど、膝故障後の初レースだったので満足のいくレース展開ができたうえ、きちんと結果に繋がったのはとても嬉しく、自信にもなった。

そして5度目のハセツネ、出るたびに初心者並みに装備迷うのだが、結局似たような格好、似たようなものを食べて似たような量の水を飲むわけで。以下とりあえず備忘録。

<エネルギーと水分>

・エネルギー:持参-2618kcal→ゴール時残500kcalほど 体重増えても摂取量大差なし

・水分:持参-麦茶2000ml→月夜見500mlほど残し/綾広の滝での追加なし、ゴール時残1000mlほど

※雨のため忍者めしをつまむ余裕なし(手が濡れていてあらゆるものが開封しづらいため)
※気温低く水分の消費少ない

※VESPA HYPERよりTOP SPEEDが良かった(大ダワで投入)

※ANDOのパッケージが頼りなく破けそうだったので浅間峠より手前で消費

※レース2日前から食事量相当多く、体内ストレージは満タン状態。但し若干やり過ぎた感あり。


<服装、装備>

・ヘッドギア:Patagoniaのダックビルキャップ

・上半身:Finetrackのノースリーブドライレイヤー+Patagnia半袖T、アームカバー、チャリ用グローブ

・下半身:Patagoniaのメンズのランパン(インナーは切った)、TNFのパンツ(ヨレヨレなのでもう捨てるけど股擦れしなくてよかった)、ドライマックスのソックス、cepのカーフサポーターみたいなやつ(厚手の方、ハセツネ会場で当日買っていきなり使用w)

・ライト:モンベルの300ルーメンのヘッドライト、ジェントス閃ハンドライト(325時代のもの、150ルーメン)+黄色フィルター
・ザック:UltrAspire Omega

・シューズ:Salomon Sense ride 4(初のSalomonのシューズ、調子よかった)

・その他:ハイドレーションシステム(400mlフラスクも持参したが使わず)、エマージェンシーキット、雨具(寒さを想定して上はモンベルのストームクルーザー、下は防風用としてGoLiteのボロボロのシェルを持参→ズボンは履かず)

色んな種類を。食べたことないものも多数、食べる時わくわくするのがいい。
おいしい!とか、まずい!とかそういうのも楽しみのひとつになる。
左から順に、スタート~浅間峠・浅間峠~月夜見・月夜見~ゴール分。
レインはすぐ着ると思ったので外に。
スマホはジップロックに入れて奥の方へ。スタート後はまったく見ず。
毎回毎回ギリギリまで用意をしなくて直前に焦るので、今回こそは余裕をもって、と思っていたけれど、行動パターンというのは大人になってからそうそう変えられるものでもない。天気のこともあり、矢張りギリギリまであれこれ迷ってしまった。ザックさえも直前まで決められず、現地に2つ持って行ったほど。。。何せ5年ぶりの参戦、今回どれくらい走り続けられるのかというのがわからない。リタイヤするイメージはなかったけれど、プッシュし続けるほどのコンディションに自分が仕上がっているとも思えない。とりあえず、雨は結構早い段階で降り始めてずっと降り続くだろう、ということだけは確信が持てたので、レイン上はずっと着るだろうなと想定して重い方を持つことに。尚、せっせと作ってプリントアウトまでしてあったタイム表は、家に忘れた・・・。
徒歩組も、ラン組も。仲間と記念撮影!
11時過ぎに仲間と会場入り。足首まわりのテーピングは家でしてきたので特に会場ではやることもないし、感染拡大防止ということで控室も複数あり皆部屋もバラバラだった。ハイドレーションへ麦茶を入れ、昼ご飯代わりのパンやゼリードリンクを少し食べているとあっという間にスタートの時刻だ。応援のメンバーも駆けつけてくれていたので、久しぶりの顔ぶれに顔をほころばせつつなごやかに列に並ぶ。今回はエリートの部が15分早くスタートしているということもあって、11時間後半あたりに並んでもかなりゲートから近い。こんな前の方にいたら周りのペースに巻き込まれて潰れてしまうのではないか?

レースに対して多少のプレッシャーはあったけれど、過度に緊張しているというわけでもない。レースが始まると全体的にいつもよりものんびりしたペースでロードを進む。あれ?皆ダッシュしないけど、しなくていいのかな?誰もそこまでダッシュしないし私も普通に走っていれば渋滞にならないのかな??そんなことを考えながら流れに身をゆだねて進んでいく。ペースが速すぎないのでトレイルに入るまでのロードは全部走れて苦しくもなかったし、その後も割と先まで渋滞せずに進めた。いいんだか、悪いんだか。ペースは速すぎる感じはしないけれども、どう考えても例年よりも早く進んでいる気はする。エリートの部が先にスタートしている、という普段のハセツネとの違いが案外大きくて、自分の調子の判断がしづらい。再びコースはロードに出て変電所を過ぎ、今熊神社より手前の沿道のあたりを走っていると望月将悟さんが応援しているのが見えた。もーちづーきさーん!!両手を振って声を掛けると「マイペースでね!マイペース!」と、まるで今年の私の作戦を見透かされたような言葉が返ってきた。いつだってこの人はそうだ、何故か私を肯定してくれるような言葉をかけてくれるのが本当にすごいなと思う(こちらの心の持ちようなのだろうけれども)。更に進むと神社の階段下には石川弘樹さんがいた。みんな飛ばし過ぎ!今そんなに汗かいて息切らしててどうするの!抑えて抑えて!そんな掛け声を聞きながら進む。

抑えてと言われても人の流れを止めるわけにもいかず、結局1時間ちょっとで入山峠に着いてしまった。うーん、ちょっと今の自分が序盤でここまで速いのは確かに速すぎる気がするし、今は良くても後に響きそうだ。途中からほぼ一緒だったナガイ君とそんなことを話しながら、抜きつ抜かれつしながら進む。登りでナガイ君に抜かれ、下りで私が抜く。結局そんなことを繰り返しながら、2人でほぼ同時に浅間峠に着いた。まさかの3時間45分。そこまで飛ばしたつもりもなかったし、なんなら浅間峠に着く前にもう雨も降りだしていてトレイルのコンディションもそこまで良かった訳でもないのに、4時間以内とは。今の自分なら4時間丁度くらいじゃないかな、と思っていただけに、驚く。
浅間峠でも応援部隊がお出迎え。写真ありがとうございます!
まずはトイレ、そしてジェルの入れ替え、ゴミまとめ。既に雨脚も強まっていて、浅間峠の手前からレインを着ている選手もたくさんいたが、私はここまではレインなしで進んできた。ここでようやくレインを着ることにする。ストックとヘッドライトを出したらすぐ出発しよう。今回は雨でトレイルがどろんこぐちゃぐちゃになるだろうし、脚の仕上がりからしても、全体的にトップスピードでガンガン走るということはないと踏んでいたので、その分できるだけ刻んで、止まらず、休憩せず、登りも細かく細かく走ろうと決めていたのだ。だからまだまだ序盤の浅間峠でのんびり休んで時間を使う訳にはいかない。そんなのは予定にない。
浅間峠に到着した時刻は予想より早くて、今の私にしてみたらこのタイムは突っ込み過ぎてるかもしれないとも思えたが、あれこれ作業をしながら冷静に自分のコンディションを観察してみると、なんというか、体がどこも疲れていないというか、ひょっとしてこれ調子いいのかも?という気がしてきた。7月に一度だけ皆で試走に来たけれど、その時より全然ダメージがない。これは案外いけるんじゃないだろうか。そう思ったら、急に楽しくなってきた。いける、きっといけるぞこれは!自分を信じてあげよう。「ちょっと、調子、いいかもしれない。」応援の皆にそう伝えて、私はナガイ君より先に浅間峠を出発することにした。
今回は涼しいので水の心配はなさそうだったが、念のため2000ml担いできた。まぁ月夜見までに飲み切ることは無いだろう。ここから月夜見までは、いつも割と人がパックになっていて、そこに自分もひっついて動いていくイメージがあったのだけれど、今回はパックに追いついては丸ごと抜いて、また追いついては抜いて、というのを繰り返していた気がする。夜セクションを静かに進む独特な寂しさみたいなものはもう今更私の中には無いし、ただただ黙々とこなしていく感じになっていた。西原峠で固形物入れる、西原峠で固形物入れる、それを脳内で呪文のように唱えながら淡々と進んでいると割とあっという間に西原峠に辿り着いたので、セブンイレブンの黒糖わらびを吸い込む。ハー美味しい。1時間に1度のジェルと、30分ずらして1時間に1度のアミノバイタルというルーティンに加え、固形物摂取のタイミングはボーナス的に訪れるので、固形物とジェルの摂取タイミングが近くなることもたまにある。あまり温存して食べずに持ち運んでいても荷物が重いだけなので、とにかくコンスタントにエネルギーをとっていく。

西原峠のわらびチャージのお陰か、三頭山の登りがすこぶる調子良い。たしかこの区間だったと思うが、結構大きめのパックをひとつ抜いて、ぐいぐい登ってぶっちぎる箇所があった。自分の登りが軽快すぎて嬉しくて楽しくて、ニヤニヤを通り越してニッコニコしながら、たまに両手を広げてワーイ!ってなりながら登った。気が狂っている。登れる!超登れる!楽しい!テンションはMAXだった。下りならまだしも、何故登りで?どうかしてるぜ!って自分で自分に突っ込みを入れながら、すこし声を出して笑ってしまっていた。

とはいえ山頂直下の階段は矢張りきつくて、ようやく我に返って最後の登りを必死にこなし山頂をとらえる。たしか19時半頃。ここまでのタイムを2倍するとゴールタイム、って話をよく聞いていたから、ここまで6時間半てことは13時間だな、と思いながら何か食べたのだった気がする。ハセツネもう5度目のくせしてコースの把握はすこぶる曖昧で、三頭山のあとはもう下ってロード出て月夜見だ!とか間違ったイメージがあり、鞘口峠から月夜見が思いの外長くて気持ち的に疲れた。とはいえ後でタイムを見てみたら、この区間はどうやら自分史上最速のペースで進んでいたようだった。

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