2026/02/28

20260228_The 9 Dragons/ Asia Trail Master Season 10 Final 70k(後編)

前編はこちら

明け方、雨が一時的に上がった(あとでまた降るのだけれども・・・)。
階段の降りがここだけでなく全編にわたって多かった

香港の夜明けは遅い。ピークから1時間ほど、明るくなりだした6:30頃CP4に着いた。13時間想定くらいのタイム推移だ。ここまでは12時間想定くらいで走っていたので少し落ちてきた。とはいえ自分のタイム表の信憑性がそもそも怪しいのでなんともいえないところではあるけれども。

エイドのテーブルの端に知っている人が立っていた。チームメイトのM山さんだった。

ゼッケンに印刷されたQRコードの読み取りでタイムが記録される。
ただ、World Timeのところに記載されているIn/Outの時刻は大分怪しいと思う。毎回結構長居していたので1分とか2分とかで出発したCPなんて1つもなかったはず・・・
一瞬脳内がバグる。M山さんに似た別の人?いや本人だよな。なんでここに居るんだろう?まさか追いついた訳がないし・・・。えっ!どうしたんですか??と尋ねると、膝の痛みが重篤でDNFしたとのことだった。しかももう1人のM山さん(以降○山さんとします)も脱水でDNFだそう。男性陣5人中2人DNFということは、まだトレイルを走っている3人のうち1人でも潰れたらもうチーム戦として成立しなくなってしまう。しかもその事実を今も走り続けている3人に伝えることができない。仮に電話やメールをしたとしてもレース中に見ることなんて絶対にないだろう。私は動揺した。3人が無事にゴールしてくれるよう祈るしかない。

女子は全員CP4を通過しているとのことで、4位のU木さんは私のすぐ前にいるらしい。ただ、上位が潰れたら、チームを後ろから追っているU木さんや私の順位は繰り上がる。いま私にできることは、チームのために少しでもいい順位で完走して、女子メンバーに万が一があった時のバックアップとしてうまく機能するよう頑張って確実に進むことだ。

簡潔に言えば「ケツを守る」のがミッション。目的が明確になった。私達はチームだ。
麺類を貪りながらM山さんとお喋り。レッドブルも1缶いただく
CP4~CP5の区間はコース内で最も長い17kmほど。CP4を出発すると暫く舗装路をゆく。ここまでも舗装路はちょこちょこ通過していたが、山あいでもない普通の道路という感じのところに出てきたのは久しぶりのような気がした。レースに関係ない一般の人達ともすれ違う。電車が時々走ってくるので写真を撮りたかったのだがタイミングが合わず取れなかった。自分がずっと山の中にいたので田舎の里山みたいな気分でいたがここは割と都市部だし、電車も8両編成くらいはあったように見えた。
なにか湖のようなものが見えてきた
ここに2人くらい人がいて、応援かなと思ったけれど普通の観光客だった
標識があったのだろうと思うが写真はない。地図を見る限り、ここはおそらく流水響水塘(Lau Shui Heung Reservoir)というところだと思う。結構降らされて低いところまできてから再び登って1回目の黄嶺(639m)へ・・・。すれ違い区間に入ってすぐだったと思うが、チームのK村さんとKさんが既に北側のラウンドを終えて戻ってきているのに出くわした。2人とも、こちらが日本語で声を掛けても一瞬気付かないくらい集中している。3人目と会わない内にすれ違いゾーンを過ぎ、私も北側のラウンドに突入した。
標高600m程度の尾根とは思えない雰囲気
雨が降り、風が吹きつける。まるで夏の北アルプスのちょっとした稜線風情だ。寧ろこういう感じのところ、北アで歩いたことあると思うけど、どこだったかな。レースコース全編にわたって低山のため稜線の強風みたいなものをイメージしていなかったけれど、全身ずぶ濡れだし、あと少し気温が低くて動いていなかかったら低体温症待ったなしという環境だ。いやー、予報当たったね。風吹くね、そんなに吹かなくていいんだけどね。
9時頃到着、スタートから既に8時間
結構景色良いんだと思う・・・(見えない)
黄嶺から1時間弱でCP5に到着。登りで水を消費したが尾根では寒くてあまり飲めず、飲み切ると思われた1Lの水はぎりぎり残っていた。エイドは結構豪華だとの前情報だったが、蓋を開けてみたらそうでもなく、どこに行ってもラインナップがほぼ同じだったので段々飽きてきたのはここだけの話・・・。ただ、私はそもそもビスコフが大好きなので、どこのエイドでもビスコフ食べ放題なのは凄く嬉しかった!
山を降ると雨は止んだ。
駒を先に進める。沙頭角海(Staling Inlet)という湾沿いの平らな道をゆく。ここはとても気持ちが良くて、近所にあったらいいランニングコースだなぁなんて思いながら小雨の中を走っていた。平らなので休むことを許されない感じで、前後の人達と追いつ追われつでじりじりと進む。最初は気持ち良いコースだなんて呑気なことを言っていたが、途中から段々飽きてきた。長い・・・。そして脚が疲れてきた。
疲れてきてこの辺から段々写真が減ってくる。そうこうしている内にCP6に到着すると、香港在住の日本人女性の方が応援にきていたので色々お話しさせていただいた。ここでは麻辣系の春雨スープみたいなものを食べたのだったと思う。とても美味しかった。
日本の男子チームは2人か3人が既に無事ゴールし、女子も全員通過したみたいな情報も入ってきたと同時に、再び「女子4位はすぐ前にいますよ!」と言われた。それ何度も言われてるけど一度も会えてないんですよね・・・。お互い似たようなペースで休まず進んでいたら、同じくらいの間隔のままでゴールまでいくのだろうか、というか私がエイドで毎回休みすぎ(食べすぎ)だから追いつかないのだろうか。自分のペースを崩すつもりはないけれど、会えたらいいなくらいの感じでCP6を後にした。

しかし登り始めて少しした頃、左のボトルから水を飲もうとしたらバルブを吸っても水が出てこないことに気付いた。しまった、お喋りに興じすぎて補給を忘れた。ここから次のエイドまで11km以上、しかもあの黄嶺を再び越えてないといけない。残るは右のボトルの500mlのみ。足りるのか。いや足りないとか言っていられないので足りさせるしかない。ペースをあげすぎると水の消費もあがるので、息があがらないくらいのペースで進むことにする。相変わらず黄嶺のあたりは風が強かったが、天気が悪いなりに気温があがってきたせいか、一度目の黄嶺より寒くはない。

視界の隅に4位のU木さんの姿を捕らえた。疲れてきてペースが落ちたようだ。少し話してから抜かせてもらったが、もし既に女子も3位までゴールしていたらU木さんと私がどんなに頑張って早くゴールしたところでチーム戦には何の影響もない。とはいえ皆がゴールしているかどうかは分からないままだ。まだ全員トレイルにいるかもしれないし誰かが転倒してレース続行不能になったら私が3位になる可能性だってある。手は抜けない。
水が万が一切れそうになって、もしU木さんの水が少し余っていたら貰おうかな(チーム戦はそれが許されているらしい)、とか考えていたけれど、何とか持ちこたえてCP7。直後にU木さんも到着した。あと5kmちょっと。何も食べなくたってゴールできるだろ、と自分に突っ込みを入れつつもあれこれエネルギーを放り込む。最後の4kmくらいひたすら階段で降るよ、と聞いていたのでこのエイドからずっと降り続けるような気がしていたけれど、軽めにもう一発登りがあった(忘れてた)。
そこまで長くない軽めの登りを登り切るとそこから噂に違わぬ階段の降りが延々と続いた。この階段はちょっとした観光地だったようで、観光客があちこちで写真を撮っている。遊園地のローラーコースターのように階段の両脇にはカラフルな手すりが設けられていて、道幅は狭い。ひたすらずっと降り続けるとなると既に死にかけている前腿が更に死ぬなぁと思っていたけれど、実際はその階段がたまに登りに変わったりしており、降り続ける感じではなかった。だからといって前腿への負荷が軽くなるかといえば決してそんなことはなく、コンクリートの衝撃で前腿にズンズン刺激がくる。痛い。でももうあとちょっとだから、痛くたって死ぬわけじゃないし筋肉痛は怪我ではないと自分に言い聞かせて脚を動かす。

階段が終わりそうな所までくると、どんどんペースが落ちて離れていきそうに見えたU木さんに追いつかれた(まじかよ)。謎のブービー賞争奪戦デッドヒート!なんだこれは。ここへきて脚が復活したらしい。追いつかない、けれど追いつきたい。必死で食らいつく。ほどなくして階段が終わり街中に入ったが、気付けば小さくなっていたU木さんの姿がとうとう見えなくなっていた。いやはや千切られたか、と思ったらU木さんが最後の最後で分岐を間違えたらしく僅差で私が4位、19秒後にU木さんがゴールした。ブービー死守!14時間半以上かかってしまった。
ゴールをすると、Team Japanは優勝だよ!とスタッフの方が教えてくれた。自分がゴールしたことよりも優勝したということがとても嬉しかった。私にとって、そしてTeam Japanにとっても初めてのチーム戦で優勝、そのメンバーに自分が入れてもらっているなんて奇跡かな。そして女子は全員完走だ!やったね。

スタート地点と同様、ゴール地点も他のカテゴリーのゴール地と異なるため、ゴール後の振る舞いも派手ではなかった。手巻きのタコスとクラフトビールをいただく。コース上で散々食べ続けていたのでゴール時点であまりお腹はすいておらず、タコス1つとビール1缶でお腹いっぱいになってしまった。もっとお腹をすかせてゴールすれば良かったなぁ。チームのみんなはとっくにゴールしてホテルに戻っており、表彰式の前に宴会をするとのことだったので急いで着替えてバスでホテルに戻り、シャワーを浴びて宴会へ。
クラフトビールは数種類あったから、全部飲み比べしたかったなぁ。
お土産で貰って帰って、部屋で飲んでも良かった・・・
意外と半数以上がお酒を飲まないことにびっくりしながら(私は飲む)
近くのご飯やさんで宴会。鳩を初めて食べた!
男子上位10位までの表彰は既に終わっていたので、ホテルで行われたのは女子10位の表彰とチーム戦優勝の表彰。ホテルのロビーで勝手に表彰式をやるとか自由すぎるだろ・・・。
ゴールしてFinisher Tシャツを貰い、チーム優勝で緑のTシャツを貰った(増えすぎ)。そしてAsia Trail Master Season 11のいずれかのレースのエントリーが1人1回無料になるそうだ。さて、何のレースでこの権限を行使しようか悩みどころである。
U木さんは所用で一緒に撮影できなかったのが残念!
Kさんと○山さんはこの日のうちに帰国!弾丸すぎる・・・
左から順に10位までの女子!日本は3、4、9位にランクイン。
私とU木さんは14、15位。
表彰式の後はM越さんK尾さんと3人でバスに乗って夜の街へ繰り出すことに。レース前の仮眠が効いてまったく眠くなかった。
散々雨の中をずぶ濡れで進んだけれど、街中では濡れたくないので傘

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レースに出る前は当然距離や累積標高、制限時間を見たりして、走れるかどうかイメージするものだけれど、それだけでは分からないものがあって、それはそもそもサーフェスが難しいとか、雨が降ると滑りやすくなるのかならないのかとか、同じ累積標高でもどんな風に標高を稼いでいくのかとか、いろんな要素が絡み合ってそのレースの難易度が決まる。今回のコースは距離も累積もハセツネとほぼ同等かハセツネよりも累積標高は少なかったので、自分の中で「ハセツネよりラクなのでは?」と思っていたが、実際に走ってみたらそんなことはなかった。そもそも自分の認識が最初から間違っていた可能性もあるけれど、石畳がスリッピーでブレーキを掛けながらしか進めず前腿を無駄遣いしてしまったり、夜間は走れるはずのところがガスで見えなくて走れなかったり、階段で足がもつれてテンポがうまく作れなかったりで思いの外苦労したなぁという印象だ。ゴール後は前腿が痛すぎて階段をまっすぐ降りられなかった。練習不足なくせにレースはやり切るから、単純に毎回オーバーワークなのだろう。

ハセツネより早いタイムでゴールできるのでは?なんて思って12時間台のタイム表まで作ってあったがとんでもなかった。思ったタイムでゴールできなかったのは悔しいけれど、これが今の自分の実力。仕方ない。でも私はケツを守れたと思う。そして皆で優勝というお土産を持って帰ることができたのは本当に嬉しい。優勝という成績は上位勢の頑張りのお陰に他ならないのだけれど、それでも、誰がなんと言おうと、私は確かにSeason 10 FinalのTeam Japanの一員だった。その事実は変わらない。

応援ありがとうございました!!


観光編へつづく

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