2015/12/20

20151220_高尾山天狗トレイル18K

視界に入った女子はすべて抜いてきた筈だ。
でも、見えない敵がいるのは判っていた。だから最後の最後まで全力で走った。

今年、レースに出るたびにほぼ入賞できていた私は、最後の一戦での入賞を狙っていなかったというと嘘になる。とはいうものの、このレースの女子は年代別ではなく、なんと「女子」という1カテゴリーしかなかった。しかも3位までしか表彰して貰えないと知ったのは本番数日前のこと、そして昨年の女子の優勝タイムは2時間19分。キロ8分とかそういうスピードだった。いやいや、別に私は入賞するためだけに走っている訳じゃない。けれど、手が届くかもしれないのならば、手に入れたいと思うのは性ではないのか。
朝9時前、仲間数名と高尾山の駅前で集まってタクシーで現地入り。みんなそれなりにレース経験豊富なメンバーだったし、何度もこのレースに出ている人もいたというのに、なんだかこの日はとても緩い雰囲気で、誰もレースの状況や詳細を把握していない。短距離だからなのか、よく知ったエリアだからなのか、はたまた忘年会気分なのか、兎に角みんな完全に舐めている・・・(自分も含め)。

コースは何度か走っているコースのツギハギみたいな感じだったのでなんとなく雰囲気は掴めていた。ただ、アップダウンが意外とあるんだなということに気付いたのも、途中のエイドで水の補給はできても食料の補給がないということを知ったのも、何を持って走るか決めたのも全てレースの前日。ロードもトレイルも含めて、自分が出た中で過去最短距離のレースだったので、いまいち感覚がわからないものの、スピードレースになるだろうということは予測がついた。どうして今年の締め括りとなる最終戦を苦手なショートレースにしたのかと、エントリーした自分を少し恨めしく思った。

スタートは、各自が申請したタイムを元に決められた11:00, 11:20, 11:40の3段階ウェーブスタート。私は11:20、他の仲間はビビちゃんが11:00、あとは全員11:40とのことだったが、いつの間にかビビちゃんは11:40スタートに変更手続きを済ませていて、結局先にスタートするのは私だけとなった。日影沢キャンプ場でスタートを待つ間、日の当たらない日影沢沿いはとてもとても寒く、ダウン上下を着ている人まで居る程だった。体を冷やさないようにと言ってもどうやっても冷えてしまうので、着替えてから荷物を預けるまでの間は適度に着込んだ状態でその場で足踏みをしてやり過ごす。荷物を預けてからは、ウォーミングアップがてら林道を登ったり下ったり。会場は狭く、端から端まで歩いても1分とかからないサイズ感、とてもアットホームでこぢんまりとした大会だ。女子と男子のトイレが別になっていないので、かなりの行列になっていたのが残念。。。

レースが本当にあっという間に終わってしまったので、あまりコースのことであれこれ書くことはない(すみませんw)。高低図を見るとわかるように、登りが3回あるのでこれをこなせばよいだけといった感じ。ちょいちょいロードや林道もあってそれなりに走れるコースなので、そこをきっちり走れないといいタイムは出せないし、登りもそれなりに攻めないとどんどん遅くなっていってしまう。想像よりもスピードレース感はなく、自分のペースで走ることができたのはよかった。

ロードを登り続けて山に入り、山から抜けてロードを走ると唯一スタッフの配置されている給水ポイントがある(のだったと思う)。給水所の少し手前を、自転車に乗ったサングラスの男が1人登ってきた。こんな坂道を一人でヒルクライムなんて馬鹿だな、でもその気持ちわかるぜ?と思って挨拶代わりにニヤリと笑顔を投げかけてみるとそれはJackieboyslimだった。なんだよ、応援行けないとか言ってたけど来てくれたのか!と嬉しく思いダベりながら進んでいくと、その先にanswer4コバちゃん & moonlight gearチヨちゃん夫妻の姿。皆、山が大好きで高尾にほど近いエリアに引っ越しをしてしまった人達だ。はええなと言われながらとりあえず水を一杯だけ補給して先を急ぐ。
最初の給水エイド手前にて。ジャッキー、チャリを漕ぎながらの1枚。(私つらそう・・・)
 photo by Jackieboyslim (応援ありがとう!)
そしてまたトレイル。登って降って元来た舗装路に出るとKMDの姿。後ろから写真を撮ってくれているのはわかっていたものの、ここからかっ飛ばすぜという意気込みと共に私は最後の大爆走をはじめた。

順位を狙う上でとても難しかったのは、ウェーブスタートだったという点。いくら女性を抜いたとしても、私より20分先に出発したグループの中にもし女性がいたとしたら、余程でない限り私がその人に追いつくことはない。同時にスタートしていないだけに、あと何人抜けば何位にあがるのかがまったく分からなかった。つまり、あと1秒速くゴールすれば見えない誰かを抜いて入賞できるのかもしれない。逆に、1秒遅くなったことによって、入賞を逃すかもしれない。けれど、それが一切見えない。仮に今ぶっちぎりの1位だったとしても、誰からもそれは教えて貰えないから、兎に角タイムを縮めるしかないのだ。整備された舗装路を抜けて状態の悪い林道に出ても私は止まらないし止まれない。走って抜かすのは男性ばかり、行けども行けどももう女性は見えてこない。そこへ再びJackieboyslimとコバちゃんが現れ、そして私の視界から消えていった。背後から「ヤスヨー!ブチかませーー!」というジャッキーの叫ぶ声がする。おう、ブチかますよ、もう別に脚を温存する理由なんてひとつも無いんだから。

20分後にスタートしたメンバーの中で最も速いアキラさんにも抜かれることなくとりあえずゴール。別に女性がゴールしましたということで盛り上がる訳でもない。ゴール地点ではチヨちゃん一家が出迎えてくれ「さっき一人目の女性がゴールしました!ってアナウンスしてたけど、それぐらいしか聞いてないからなぁ」と状況を教えてくれた。まだゴールしている女性が少なすぎて暫定順位表さえもなかなか貼り出されないし、ゴールしても結局何位かわからないままだ。アキラさんもまだゴールしない。

チヨちゃん達が車に戻ろうとして私と一旦離れて数十秒した頃、レーススタッフのおじさんが女子の順位表を貼りにきた。ドキドキ、、、ドキドキ、、、

ド!!!!!
キ!!!!!!!!!

待って!!ちょっと待って!!1位だよ!マジかよ!!
1人ではとてもじゃないけれど冷静で居られなくてすぐにチヨちゃん達の後を追いかけた。「ねえ!私優勝ぽいんだけど!!」私の興奮をすくい上げてくれる仲間が近くにいてよかった。そうこうしているうちにアキラさんがゴール、ほどなくして表彰式が始まった。男子の部の表彰がひとしきり終わり、最後に女子の部の表彰。
photo by チヨちゃん(だったかな?)
嗚呼、今年最後のレースで入賞どころか優勝できたなんて本当に夢を見ているみたいだった。だって、1年の締めくくりのレースで、自分が一番速いなんて、もうそれより上を目指しようのない最高の結果じゃないか。なんだこれ?こんなにいい目に遭っちゃって本当にいいの?
表彰式の時間帯があまりにも早過ぎて、応援部隊もランナー達もほとんど居ない中終了w
photo by KMD
戻ってきた仲間達は、賞状だの何だのと抱えている私を見つけるとすぐ、入賞したんだなと気付いて声を掛けてくれる。そこで私が一言、優勝しちゃいましたテヘと報告をする。もうね、やっぱり嬉しいもんは嬉しいんだわ。隠そうったって隠せないくらい嬉しい気持ちは溢れ出してくるんだよな。
お風呂はパスして近くの中華やさんで打ち上げ!
何年か前、ろくに練習もしないでレースに出て良い結果を出して調子に乗るなと詰られたことがあった。別に調子に乗っていたつもりはないけれど、その人からはそう見えるようだった。そんな風に言われて私は結構傷ついた。ただただレースに出ることが楽しかっただけなのにどうしてそんなことを言われなければならないのかわからなかった。そして私の周りの人が皆その人と同じように思っていて、嫌な思いをしているのだとしたらどうしようと思った。走るのが好きなら一人で走ればいいし、レースなんか出る必要があるのかとその人は言ったけれど、私はそんな風に言われた後も私は別に練習をするつもりもないままレースにエントリーし続けていた。けれど自分の中に答えは無かった。

いつどんなきっかけで人がトレーニングを始めるかなんて人それぞれだ。理由もまちまち。何がきっかけで走ることに対する情熱に火がつくかも人によってバラバラだ。詰られたことは割と長い間私の中で燻っていたのだけれど、2015年の途中から完全にそれが気にならなくなった。別にその言葉を浴びせてきた人への対抗心から走るようになった訳ではなく、心と体が内側から求めたものに従っただけだ。そう、奥久慈のレースを完走したくて走り出しただけのことだ。純粋な感情ほど強いものはない、そして私はここまできた。もうあの言葉を浴びせた人に何か言われることがあったとしても正面切って堂々としていられる。わたしはわたしなりに答えが見つかっているし、走りたい時に走り、走りたくない時は走らない、ただそれだけのことだ。やりたきゃやる、やりたくなきゃやらない。趣味だもの。
さあ今日は2016年奥久慈のエントリー。2015年の私を高みに引き揚げてくれた山に、今年はお礼を言いに行こうと思います。