2019/12/14

20191208-14_しまなみトライアングル&石鎚山系縦走 後編(最終章)

前編
山編1
山編2
山編3
中編

Day7--12月14日(土)
8:00過ぎに音戸の瀬戸公園を出発、この日のゴールは尾道駅で、その日のうちに家まで帰る予定だ。別に翌日さしたる用事がある訳でもないし、帰りの電車のチケットを買ってある訳でもなかったのでそのまま関東に向かって漕いでみてもいいのかとも思ったが、しまなみトライアングルがトライアングルたる所以がよくわからなくなるので、尾道までで終えようと思っていた。1日も雨に降られず、歩けて漕げただけで満足で、美味しいものもたくさん食べられたし十分だなぁと・・・そう、思い残すことは何もない・・・1点を除いては・・・。

私は牡蠣が好きだ。とりわけ生牡蠣には目がない。今回の旅も2日目にBBQで1つ焼き、5日目には店で蒸したものを5つ食し、それでもまだ生牡蠣にはありつけていなかった。広島まで来て、好物がきっとそこらじゅうにあるにも関わらず、食べることができずに帰るのが唯一の心残りだった。前の日の夜に友人が教えてくれた剥き牡蠣の直売店のようなところが兎に角気になったので、この日の最初の目的地はその牡蠣屋さんに決めた。牡蠣のシーズンだけ営業していて、しかもシーズン中は無休だという。ビニール袋にみっちり詰まった剥き牡蠣を購入したところで、私がそれをどうやって、どこで、どのようにして食べるのかは全く考えていなかったが、そんなことはどうでもよかった。

安芸川尻駅のすこし手前あたりで昨日のルートに復帰し、ここからさざなみ海道に入った。海を見ながらこうして自転車を漕ぎまくるのも今日で最後か、としみじみしたのも束の間、これまでにないくらい牡蠣の直売所が海岸沿いに乱立していて心が掻き乱された。しみじみしている場合ではない!!
牡蠣の殻なのか、中身の入っている牡蠣なのかはわからないが、天に向かってのびるベルトコンベアに乗って
牡蠣があがってゆき落下する。エサ狙いのカモメ?が二羽・・・賢いなぁw
そして辿り着いた不動商店。住宅街の中に突如現れるのだけれど、店主体調不良とのことでまさかのおやすみ・・・。
(泣)
いよいよ切羽詰まってきて、どうせ同じ海からとってきた牡蠣でしょうどこも美味しいんでしょうと、手当たり次第に直売所に入っていって声をかけ始めた。犬に吠えまくられたりもした。しかしどこも答えは同じ、直売所はレストランじゃないから牡蠣を開けて食べさせることはできないとのことだった。こんなに沢山の牡蠣が目の前にあるのに食べられないのか、私はこのまますごすごと帰るしかないのか。直売所で買って家に送り、家に帰ってから食べるという手もあったけれど、そういうことじゃない。そういうことじゃないんだよ。ここで食べたいんだよ。
紅葉が残る山
ずっと沿岸を走るルートとはいえ、この牡蠣海道(勝手に命名)がどこで途切れるかもわからない。実際問題、次第に直売所の数が減ってきたような気もする。ネットで調べてみると、少しルートを外れた所にかき小屋があったりBBQのできる地元のなんちゃらがあったりするようだったが、いやいや旅の前半で既に焼き牡蠣やってるしそういう焼き焼きイベントはもう要らないんだよ、、、と独り言ちつつ進む。しかしこのままだともう牡蠣にありつけないかもしれない、いっそ途中のドライブインのようなところで牡蠣フライ定食でも食べてしまおうか。

前日に買ったレモンケーキとおにぎりで済ませた軽めの朝ご飯はもうすっかり消化してしまった。お腹すいたな。牡蠣フライ定食も、牡蠣バター定食も食べログで見る限り美味しそうじゃないか。でもそうじゃない。牡蠣フライも好きだし美味しいのはわかっているけれど、今すぐに食べないと倒れる程の空腹ではないからもう少し頑張って生牡蠣を探してみよう。もしかしたら、もしかするかもしれない。私が食べたいのは生だ。生牡蠣だ。

さらに漕ぐこと暫し。道の左側に僅かばかりの人だかりが見え、ただならぬ雰囲気を察して減速する。
!!!!!!!!!!!!!!
むむむ!これは!!!!
店の中や外には10人弱ほどのお客さんがいて、水がザーザー溢れる水槽には牡蠣が無造作にがちゃがちゃ入れられている。他の直売所では、作業場の奥の方で作業をしている従業員がいて、牡蠣そのものがこんな風に見える所に出されていなかった。明らかに他の店とは違う。とはいえここも地元の人に販売するだけの販売所かもしれない。

黙々と牡蠣のサイズの選別をしている女性に声をかけると中国の方だったようで言葉が通じず、店主らしきおかみさんに再度お尋ねする。ここで牡蠣を開いて頂いて私がここで食べることとかって、できま・・・

「できますよ、開けますよ!」

!!!

明らかにストレンジャーな私が地元の方々の列に並んで待つこと暫し。ああさっき牡蠣開けて欲しいって言ってた子ね。で、どれにする?ってな塩梅で聞かれ、興奮冷めやらぬ私はこれ2個これ3個と次々に頼んでいく。私がこの場でそんなに食べると思っていなかったようで、明らかにおかみさんは戸惑っていた。忙しい時に申し訳ないんですけど、でももう口も胃も牡蠣モードなんでお願いします!お願いします!と心で言いながら笑顔のわたし。結局100円3個、150円3個、200円1個、300円2個の合計9個で1550円分お買い上げ。なにやらかき小町というブランド牡蠣らしい。
最初に声をかけた中国のお姉さんが牡蠣をあけてくれる
おかみさん「あんたこれ開けてくれる?」
中国のお姉さん「え、全部?」
おかみさん「そう全部なのよw」

みたいなやりとりの後、さっきのあんたか・・どんだけ牡蠣好きなのよという目線をこちらに向けてニヤリとしてから手際よく牡蠣を開け始めるお姉さん。ひとつめが開くのをワクワクしながら背後で見守るわたし。ん、んん!?大き過ぎないか?これがたまたま大きいのかな?そしてふたつめ、またまたデカイ。食べ切れるのか・・・?w
もうどれが200円とか300円とかよくわからないけど大きい!
お店の人が牡蠣を取るのに使っているバケツがその辺に積み上がっていたので、そのバケツをひとつ借して頂き、逆さに置いてテーブル代わりにした。私はかなり手が大きくて、手を広げると親指から小指まで23cmあるのだが、その巨大な手と比べてもこのサイズ感。
そもそもこの場で食べることを前提とした店ではないからお醤油などは置いていないのだが、私は昨夜スーパーでお刺身と一緒にお醤油の小袋を2つもらっていたのでそれを使うことにした。ひとつはお刺身用、もうひとつはスーパーで一緒に買ったじゃこ天用のつもりが、まさか生牡蠣にかけることになろうとは、誰が想像しただろうか。
たぶん過去食べた生牡蠣の中でも最大サイズ!いただきます!!!
店の前にどっかと胡座をかき、ヘルメットを脱いで牡蠣を食う。ウマーーーー!買おうか迷っているらしき人がその大きな牡蠣の身を見ては「大きいですね!これ幾らのやつですか?」と聞いてくる。全種類買いましたけどもうどれがどれだかわからないですよねー!ワハハ!でもどれも滅茶苦茶美味しいですよーーー口に入りきらないっス!!もごもご。
嬉し泣き
1時間半車を運転してわざわざここへ買いに来ては、九州の親戚に年末送ってあげて喜ばれているというおじさんと暫く立ち話をした。ここの牡蠣は生でも食べられる、あたったことは一度もない。独自の洗い方をしているみたいだよ、とのことだった。ここの牡蠣を食べるようになってから、他のところの牡蠣を食べられなくなっちゃったんだよね、近所でも買える場所はあるんだけど、わざわざここまでいつも買いに来るんだよ、と。

今日は宴会だといって40個とか買っていくご夫妻、発砲スチロールの箱を持ってきてそこに詰めて持ち帰る方など色々なお客さんがいた。剥き牡蠣も売っていたなぁ。牡蠣は旨味のかたまりで味付けなど不要なくらい、9個の牡蠣を食べるのに小袋の醤油が半分以上残ってしまうほどった。牡蠣ひとつ口に入れるのに、口からはみ出したのはこれが初めてだった。

ここから尾道まで気を付けて頑張って漕いでねー!とおじさんに見送られて再び海沿いを走る。もう思い残すことはないよ。
途中でまたお腹がすいてきて、やる気のないたこ焼きを食べたりしつつちゃかちゃか漕いでいくと尾道間近のところで僅かに雨が降り出した。でもなんとかギリギリ降られなかったと言っていいくらい。駅から片道6kmほどの温泉を目指そうとしていたけれど、本気の夕立がやってきて急に気温が下がったので目当ての温泉は諦めた。まぁこれもご愛嬌、ここまでずっと天気が崩れなかったのだから良しとしよう。結局夕立が去るのを待って、最寄りの温泉施設へ立ち寄ってから帰ることに。
お疲れ様でした!パンクもなく、大きなトラブルもなく。
15年くらい付き合っているマイKLEINですがよく頑張ってくれました。
出発前夜にピカピカにしたチェーンもそれなりに汚れたw
お風呂から戻り10分ほどでチャリを畳んで尾道ラーメンで〆。行きたい尾道ラーメンの店はいくつかあったのだけれど、一番駅から近くてしかも評価も高かった「たに」へ。電車出発20分前に着丼というドタバタw
時間ないのわかっていてチャーハン定食を頼んでしまう悲しいサガ・・・
自転車を漕いだり、宿の近くのスーパーで物色したり、宿でテレビを見ながらお酒を飲んだり、山を歩いたり、山までの往復で初めての電車やバスを利用したり、色々な人と出くわしたり話したり。7日間たくさんのことがあったけれど、本当にどれも楽しくキラキラした素敵な旅だったなぁと思う。一瞬一瞬が楽しくて、こんなにいい旅はなかなか無いし一生の宝物になるなぁと噛み締めることもできた。私はたぶん、一回の旅の行程が長くて、旅をしながら旅の詳細を煮詰めたり臨機応変に旅をかえていく感じが好きなのだと思う。思えば昔からそうだった。旅先で会った人にすすめられた場所に立ち寄ったりするのも楽しいし、ネット経由で友達からすすめられた場所に行ってみたり、たまたま通りがかった店に立ち寄るのも楽しい。基本的に自分がしたいことしかしないし、行きたいことしかしないし、人といる訳でもないので気を遣う必要もないし自分が食べたいものしか食べないから、どんどん旅に対して貪欲になって自分の感覚が鋭くなっていくのがわかるのもいい。大袈裟だけれど、生牡蠣の店なんてまさにそうだ、何の前情報もなく食べログも見ずにここでいきなり牡蠣を開けて道路で食べるという判断ができたのは紛れもなく自分だ。誰に聞いたわけでもない。そういう瞬間は嬉しいものだ。まぁこんなことばかりしているとどんどん一人化が進んでいくので、いいのか悪いのかは分からないけれども、またこんな旅がしたいな。旅はいいものだな。

最後に会計面の備忘録。
7日も国内で遊んで交通費込で7.5万円程におさまったのが地味に凄いと思っているw このうち新幹線通常料金で自宅尾道間往復3.4万くらいかかっているので、宿代食費酒代バス代などの往復交通費以外の費用がを4万くらいにおさめたことになる。予め飛行機のチケットなんかを取っておけば四国方面へは片道6000円くらいでも行けるみたいだが、自転車漕いだり山に行ったりしようとすると天気が良くないといけないので直前まで予定が立てられず、しかも自転車だと高速バスもほぼ使えないので交通費はかなりかかった方だとは思うが、特に何かを我慢したわけでもないのにこの値段でこれだけ遊べたのは我ながら上出来だと思った。

おわり

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