2012/05/05

20120503-06_上高地-蝶ヶ岳-常念岳-大天井岳-燕岳(3日目)

朝3時頃。

それはそれは物凄い暴風雨に見舞われ、
これはどうしたものかとテントの中で過ごすこと1時間ほど。

しかし自分達の生ぬるい行動とは裏腹に、周りのテントの人達が何やら調理をし始める。
いい匂いだ。
予報では、夜中から晴れる筈だった。
ひょっとして気圧配置がダイナミックに変わってしまって、今日は天気が悪いのか??
しかし周りは皆活動を始めている。出発する気まんまんである。

ええい、最悪、出発の準備が終わった時に大雨だったら出発しないで待機すればいいんだ。
だって、6時になって晴れていて、出発の支度ができていないことの方がダメージが大きい。
とりあえず朝食を済ませ、テントの中を片付けていると、雨音が止んだ。

テントから出て空を見上げると、青い色をしていた。
空気が滅茶苦茶澄んでいる。そりゃあれだけ雨だのアラレだのが降りゃあね。
朝6時。何とも言いようのない、しかし確実にこの後晴れてくれる予感のある空。
山屋ならこの空気って皆分かると思う。
■5月5日(土・祝)晴れて暴風(風速20m前後)、18時過ぎより雷雨及び霰
6:30 出発
↓ - 3:20
9:50 大天荘
↓ - 0:10(休憩)
10:00 大天荘出発
↓ - 0:15
10:15 大天井岳
↓ - 0:15(アイゼン装着等)
10:30 山頂出発(夏道と異なり、そのまま北へ進む)
↓ - 3:47(暴風)
14:17 大下りの頭
↓ - 0:35
14:52 蛙岩
↓ - 0:53
15:45 燕山荘
常念小屋から常念岳へ登っていくパーティー
写真右側に写り込んでいるのはトイレ。奥には美しい稜線!
皆好天を予感してそわそわ出発していく
自分達より1つトイレ側に幕営していたご夫妻が常念岳をバックに写真を撮ってくださった。
松本在住とのことで、この辺りに毎週来ているらしい。羨ましい!
さて、起き抜けに大天井岳に向かってひたすら登る。
ああ、しんどいなぁと思って斜面を眺めていたが、
意外にもここから大天井岳へのルートは非常に気持ちのよいルートで
かなりのゆるふわハイク。景色を楽しみながら、バテることもなくスイスイ進む。
さて登りますか
むん。(この山行でまだ一度もアイゼンをつけていない)
お、トラバース。稜線のアップダウンを気にせず進めるのねと分かり俄然足取りが軽くなる
2日分の食料も減って多少身軽だし、高度にも慣れて息もあまり上がらなくなってきている。どんどん進もう。
今日の幕営地点はまだまだはるか彼方。
ソロハイカーが数名、60代以上×8名程のパーティーが1つ、3人くらいのパーティーが1つ、そして我々。
総勢15名くらいが燕山荘方面へと進んでいく(案外少ないような)。
ここは天国か
雲の影が雪面に映る
うわぁ。
ここのトラバースは少しだけ怖い。踏み外したらすり鉢状の斜面を滑落必至・・・ 
ほうほう、トラバースした後でいきなり一気に稜線に乗り上げるわけですか
ここですね
強風!
登り切った所は強風で雪がかなり飛んでおり、土が見えている。
今まで見えていなかった向こう側の景色が素晴らしい。


美しい景色を見ながら歩みを進めてゆくと、大天荘に到着。冬期小屋もある
中はこんな感じ。扉は下から上に向かってシャッターのような感じで開閉し
中に入る時は潜り込むような体勢になる。(面倒だったので中には入らなかった)
常念小屋の注意書き通り、大天井岳のピークを通らないトラバース道は使わないようにする。
きちんとピークを踏み、そのあとピストンで引き返してくるのではなく燕側にそのまま下降する冬ルートをとる。

大天荘の小屋の近くに、東鎌尾根への分岐の道標がある。
どこをどう辿るのかぱっと見全くわからなかったが、どうやらかなりのアップダウンのある尾根のよう。
槍の稜線はどこも険しい。
我々が山に入る直前にも滑落された方が居たし、
そもそも雪山ルート集ではこの尾根は通れないことになっていた。
ロープを使うルートも多数紹介されている本にさえ、破線も引かれていないのだから、
積雪期・残雪期はさぞかし険しいことだろう。夏に一度は行ってみたいものだ。
雲が発達してきている
ずっと見えていなかった槍の穂先がようやく見えた午前10時
この時刻に大天荘に居るなら、今日の燕到着時刻は心配いらなさそうだ(と思っていた頃)
大天井岳山頂に到着すると、逆側から登ってきた人も含めかなりの人数が狭い山頂に犇めき合っていた。
ま、まぁGWだし仕方がない。
とりあえず「写真撮ってもらっていいですかー?」「撮りましょうか?」みたいな波に飲まれつつ、
逆側から上がってきた方々にルート状況を伺うことに。
とりあえず撮ってもらうしかない
と、ここでアイゼン装着。
アイゼン付けないで登ってこられましたよーと仰る方は1名、それ以外は全員アイゼン装着という状況を鑑み、
しかも行く手を覗いてみると結構な斜度であり、
さらに、別に自分達、残雪期を歩き慣れているという訳でもないため、
安全を期してアイゼン+ピッケル装備に切り替えることに。

ここまでアイゼンもピッケルも一切使わずに進んで来たけれど、
ようやくここへ来てアイゼンもピッケルも使える・・・
(この時期の北アへ来るのに、これらを持たないという選択肢など無いのだが、
そうとはいえ、使わずに山行が終わってしまったら何だかそれはそれで無駄な重量だったように思えて
悔しいのである)。
久々のアイゼン・・・なのにいきなりここか・・・
こ わ い よ ?
こ こ ?
トラバース(涙)。ステップは切ってあるけども雪がだいぶ緩み始めている。。。
先行者を眺めて溜息をつく・・・ああ、そういう感じだよね・・・前向いて下りるの怖いよね。
ここからしばらく、写真がかなり少ないのだが、未だかつて経験したことのない強風に見舞われ
ここの斜面に居た全員が、動いては止まり、止まっては動き、、、の繰り返しであった。
手前に居るのは私。座ってる。体勢低くしていないと飛ばされる。
なんと山頂を出発してからこの道標に辿り着くまでに1時間25分もかかった!
来たことのある方なら、これがどれほど遅いかお分かり頂けることだろう・・・・
例えば斜め左前方から風が吹いてくると、前に居る人達が右側にハラハラと倒れるのが見える。
それを見て「あっ左から風が来るんだ」と構えて体勢を取るか取らないかというタイミングで突風がくる。
そんな感じであった。

左から風が来て、自分の右側が斜面でなければ滑落の危険はないし、
ましてや右側に大きな岩でもあれば、それより先に吹き飛ばされることも無いだろう。

と思っていたら、岩に激突させられて膝や肘に青痣だの内出血だの・・・(´Д`)ああ・・・
因みに体重と荷物の合計が70キロぐらいだった私でコレである。
本気で耐風姿勢を取ったのが初めてだったということもあるので、
うまく風に立ち向かえていなかったのかもしれないが、それにしても風は怖い。
不安定な場所でこんな風に吹かれようものなら、あっという間に滑落するだろう。
足元が安定した場所で良かった・・・
しかしまだまだ燕への道は続くよどこまでも(前方に岩場)
トラバース
この辺りだったか、燕山荘に既にテントを張って大天井岳方面にピストンしようとしていた
30代くらいの男性ソロハイカーと出くわす。
彼はアタックザックを背負って、岩場もガリガリとアイゼンのまま歩いている不思議な人で、
荷が軽いこともあり、それなりにペースは速いのだが、
少し歩いては止まる、という彼なりのペース配分なのか、我々を導いてくれたのか、
何故か引き離されても引き離されても主要ポイントにくると必ず我々は彼に追いつけるのだった。
まるで雷鳥のような人だった。
燕岳に近付いてくると段々岩場率が上がってくる
写真の上下左右丁度中央付近に見えるのが北鎌尾根、そして尾根のてっぺんに槍。
段々とあちら側の雲行きが怪しくなってくる、と思ったら、あちら側で雷鳴。
お、道標だ
ようやく大下りの頭に到着。
雲が黒くなってきた。予報では16時から1mmの雨。17時に一旦晴れて、また18時に雨。
16時前に着きたいところ。この時14時40分。
相変わらず岩場。
と、思ったらここが蛙岩。中央に岩の隙間があるのでここを通り抜けていくのだが、
かなり狭いので荷物がひっかかって大変だった。
夏場はこの隙間を通らずに、どうやら外側を通るようになっているらしい。
燕側から歩くと、岩にでかでかと「冬ルート」と矢印があるので分かり易いが、
今回のように大天井側からくると、頼りなさそうな矢印がひとつ書かれているだけでこの隙間は
見つけづらい。ここでも「雷鳥」ボーイが隙間への入口を教えてくれた。
狭い。リッジレストをバリバリ岩にこすりつけながらどうにか突破
通った穴を下から見るとこんな感じ
ロープ?
と思ったら直後に雷鳥発見。
岩の間を通り抜ける(風がうまいこと遮られて良い感じ。ビバークできそう)
もう少しなのに雷鳴が聞こえてきた。穂高側にかかった黒い雲から吹き飛んできたと思われる雨粒も少し。
小屋が近付いてきた!
雲黒いよー(焦)
もうかなりヘトヘト。。。でもどうにか雨が降る前に到着してよかった・・・
(実際は案外降り始めが遅かったのでテント設営中も雨には降られずに済んだ)

評判の良い燕山荘。とても規模が大きくて整備されていて中もキレイ。
この時期、水は出ていないので、ペットボトルでの販売のみ。とはいえ500mlで200円という良心的な価格。
(もしかしたら夏場、水場が使える時期はもう少し値上げしているかも。こんな安くしてたら採算合わないだろう)
テン場も圧倒的な強風。
しかも今夜はさらに風が強くなるらしい・・・などという話も耳にしたため、
とりあえず携帯の電波がそれなりに強い高台を陣取る。
しかし高台なのでそれなりに風を受けるはずということで、雪のブロックを高めに積むことに。
前に幕営した方のブロックの名残はあるので、ここの土台の上面を均した後でブロックを積む
左官職人マスタ登場!
17時08分。日が陰るでもないのにこのドス黒い空。。。確実にこの雲、どこかで悪さをしている。
ブロックが出来上がったのでテントも設営。風が本当に強い時は先にブロック積んだ方がテント張りやすいんだなと実感
積み過ぎwww
トイレからテントに戻る時、テントが光が一切漏れてこないので場所が分からなくなりがち。
(周辺のテントを散々ヘッデンで照らしまくってしまったスミマセン)
ちょっとピンぼけしてるけど充実の売店。
一番手前の列の左の方にあるドーナツ、6個も購入してしまったw 1個50円とお安い。
そもそも、涸沢ぬるぬる山行のつもりだったので食糧計画がかなり緩く、
大食らいの我々はかなりの(自称)飢餓状態になっていた。
最終日とはいえ、翌日の行動食も結構タイトだ。
そんな中、この日の夕飯はソル・レオーネのパスタと魚肉ソーセージぐらいのものだったが、、、、、、
なんと、、、、、

1 食 分 こ ぼ し た (涙)
(ここまで運んできた500mlの水と共にテントの中にぶちまけた。。。)

汁についてはもうどうしようもないので諦めたが、パスタは諦めるわけにはいかないので拾ってコッヘルへ。
このままもう1食と合わせて煮込んでも味が薄くなるのは目に見えていたので、
翌朝用のオニオンスープの粉と、塩胡椒、そしてさらにカルパスを投入して味を調整。
お湯が沸騰してからパスタを投入せよとの注意書きも無視し、もう面倒なので水から全部ぶち込む。
(ヤケクソという名の必死)
あらやだ美味しい
普通に作るより美味いよ?

おそらく、ソル・レオーネは水から作った方が美味しくできると思う。
パスタが水に溶け出して、少し汁にとろみが出るみたい。
こぼした汁気の処理や掃除に40分くらい費やして、そのせいで寝る時間も遅くなったけれど
まぁお腹は満たされたので良しとしよう・・・

翌日の天気を見ると、8時過ぎくらいにはもう雨が降りだすという。
5時半くらいには出発して一気に下山してしまおう。

しかしご飯を食べ終わって落ち着いた頃、
遠雷だったものがいつの間にやらすぐ近くから聞こえるようになっているのに気付く。
やがてテントごと白い光に包まれ、最短で2~3秒後にはバリバリと轟くではないか。

以前本気で雷に打たれそうになった経験がある我々は、万が一に備え
金属製のテントポールから身を離してしばらく様子を見ることに。
20分ほどで雷はある程度落ち着いてくれたため事なきを得たが、
もしもどうしようもなくなったら、とりあえず小屋に入れてもらおうと思っていた。
(小屋まで身ひとつで走っていくのか・・・と考えるととても恐ろしいが)

パスタ事件に加えて雷鳴。とっとと眠って明日も早いうちに下山・・・なんて思っていたのにこれだ。
翌日の状況は想像に難くない・・・

4日目へ続く

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