2025/05/18

20250509-11_BTR Ultra 100k(レース後編)

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ドロップバッグポイントを出発して間もなく夜が明けた。今アグン山山頂付近に居る人はこの景色を山頂から眺めているのだろうか。ちょっと羨ましくもある。
林道の登りで再びAdelinah選手に追い付いたので雑談。後ろを振り返るとアグン山が鎮座していて、あの頂に昨夜居たのが信じられないよなぁ、というような話をして2人してしみじみする。
レースのスタートは夕方だったのでその後すぐに夜がきて、初日はそこまで灼熱という感じにはならなかったのだが、今日はこれから日が高くなるにつれてどんどん気温もあがり湿度も高いので蒸し暑くなるのは明白だ。あまり晴れ過ぎないで欲しい。
この山脈のどこかがリンジャニだよとAdelinah選手が教えてくれた(一番高い山かな?)
夜が明けて振り返るアグン山。

【WS7 / 67.3km Jatituhu】5/10 7:53

途中ニワトリの行列に出くわしたりなどしながら次のエイドに到着。ここでも盛大に鼻血を出した。既に手持ちのティッシュが無くなってきていたのでエイドのティッシュを使わせて頂き、更に出発時にも何枚か貰った。あまりにも血が止まらず、しかもティッシュを取り換える時に鼻からドバドバ血が滴りまくるのでメディカルスタッフまでやってくる始末。ドリンク冷却用の氷を袋に入れてくれたので、鼻の上の方や首の後ろを冷やしつつ鼻血が止まるまで暫く休む。またAdelinah選手が先行して出発した。
豆とご飯のお粥のようなもの、ココナッツミルク風味の優しい味で美味しかった。
(鼻血を出しながらも、エイドのメニューはきっちりこなしていくスタイルw)

赤いシェルを腰に巻いているのがAdelinah選手
アバン山(Mt. Abang)の登りで再び彼女に追い付き、ここからは結構ずっと一緒だったと思う。進むトレイルにはワラビが沢山生えていたので、これ日本では食べるんだよね、というような話をした。このままじゃ食べられないから重曹に一晩浸してさぁ、みたいなことを言っていると、別の草をむしり取って、私達はワラビは食べないけどこの草は食べるよ、チリソースをかけてサラダにして食べると美味しい、とか話していた。一気に登れずに腰を下ろして一緒に休憩しつつ、彼女がいつも持参するという「肉」を分けてもらった。味付きのオレンジ色をした謎肉ジャーキーのような甘じょっぱい味付けだったので、こんなのビール欲しくなるやつやん、といって笑った。しゅわしゅわしたいなぁ。
右手前にワラビ。もうバリは結構暑いし、日本の感覚でいったらもうワラビの時期でもないと思うのだけれど何故かワラビ最盛期w
藪がちな急斜面を登ると人工物のある平場に出た。ガスっていて先がよく見えないので、ここより高いところがあるかどうかがよくわからない。ここが山頂かな?多分そうじゃない?みたいなことを言いながらまた鼻血。彼女に先行してもらって私はここで暫く休む。
しかし偽ピークだったのかここは山頂でもなんでもなく、少し降ったと思ったらまだまだ続く登り!
ようやく山頂!
山頂に着くとレースと関係のない普通の登山者も多数いて賑わっていた。この辺りから60kのコースと被るようで、100kと60kのランナーが入り混じるようになる。スタッフの人が居たので写真を撮ってもらった。鼻血のティッシュ詰めたままだけど、これはこれで面白いのでこのまま撮影。こんなところでわざわざ旗みたいな装飾がされているのはレース仕様なのか、はたまた常日頃から装飾されているのかはわからない。
アバン山、標高2150m。最後の大きな登りが終わった!
ここからの降りは岩場系+砂礫系スリッピー。100kmのレースの中でサーフェスが目まぐるしく変わっていくので、色々な状況に対応できないと難しい感じだ。でもその難しさが楽しい!これはこうやって降りると上手く降れるよね!みたいに、過去の自分の経験を活かして答え合わせをしていく感じだった。ちょっと大袈裟だけれど、まるでこれまでやってきた山の集大成のような。
捻らないように慎重に・・・
アバン山を降ってくるとガスの中に湖が見えてきた。スタートする時に見たバトゥール湖に帰ってきたのだ。旅がとうとう最終章に差し掛かったのを感じながら脚を運ぶ。湖の中に何か四角い人工物が並んでいるのが見えたがあれは何だったのだろう?

道標のようなもの(下の写真)を通り過ぎて、ここからまた一気に標高を下げていくのだが、確かこの区間がとんでもない急斜面だったと思う。長いロープがひたすら続いているので一旦ストックをしまったのだったか。ロープに全体重をかけるのはよくないなと思って岩や木の根などを掴みながら降りていくが、アグン山といいアバン山といい、この過激なルートがレースコースだなんて信じられないwワンミスが命取り、大事故待ったなしである。
翻訳ツールで訳したらこのようになったw
「マハルディカ・ブキ・テルニャン自然観光の対象 テルニャン村」
まぁ保全地域みたいなことなのかな?
ここまでずっと水には困らなくて、1L持ってエイドを出ても1L飲みきることは無く、区間によっては500mlすらも飲みきらないまま次のエイドに到着することも多かった。しかしこの降りの途中で水の残量に不安を覚えた。自分の時計のコース表示が狂っていたのか自分の勘違いなのか今となっては真実はわからないが、急坂を終えてもまだエイドまで7-8kmはあるような気がしていて、これは相当水を節約していかないと足りなくなるぞと焦り始める。太陽は既に真上に至り気温は高く、ロードが長く続くとまずい。汗をかくのであまり飛ばし過ぎないようにしたい。
途中、山の中腹に売店があって、そこでおばちゃんがドリンクやお菓子を売っていた。現金は持参していたので買おうと思えば買える。買うべきなのかな?ていうか炭酸売ってる!飲みたい!とか思いながら少し迷っていると、Adelinah選手が後ろからやってきてI'm so hungry!! と言いながらベンチに腰を下ろした。え、彼女ここでご飯食べるの??と混乱しつつも私はそのまま水分も食料も買わずに先を急いだ。

エイドから持ってきたチョコレート系のエナジーバーとかだと口の中の水分が奪われていくので、日本から持って行ったセブンイレブンのわらび餅シリーズを水分代わりに食べてしのいだ。宇治抹茶わらびと桜わらびを食べたが、いずれも黒糖わらびよりも汁気がなく、食べた後のゴミがべとつかなくて良い。そしてインドネシア料理ばかり食べていて数日間忘れていた和の繊細な香りが鼻に抜けてとても心地良く、緊張を強いられてたロープ区間でささくれた心は穏やかに落ち着いた。食べ物というのはエネルギーを補給するだけのものではなくて心に作用するとても大事なものだとつくづく思う。

【WS8 / 79.5km Terunyan / CP5】5/10 13:54
心配をよそに、突然ぽっと次のエイドが現れた。助かった!ほどなくしてAdelinah選手も到着した。中腹の売店ではhungryと大声を出していたけれど、別に食事はしなかったようだった。
道を挟んでエイドの逆側には大きな寺院が。
たぶんPura Ratu Sakti Pancering Jagat Trunyanだと思う
ここは結構大きなエイドで人も多く賑わっていた
ターメリックドリンクという謎のドリンクがタンクに入っていたので恐る恐る飲んでみたけれど、甘くもなくただただターメリックの粉を水に溶いたような液体でざらついており、これがランナーにとって何の役に立つのかは全くもって不明だったし説明もなかった。とてもまずい。
あとで調べたところによると「研究者たちは、ターメリックを摂取することで、激しい運動後の筋肉痛や炎症を大幅に軽減できることを発見しました。 ターメリックに含まれるクルクミンの抗炎症作用は、運動中に発生する酸化ストレスと戦うのに役立ち、回復プロセスを加速させます。 つまり、ターメリックは、単に不快感を和らげるだけでなく、より早く効果的にトレーニングへ復帰できるようサポートしてくれるのです。」とのこと。そうなの?カレーペーストみたいになっていたら美味しく食べられて良さそうな。
お米に鶏やジャガイモの入ったスープを欠けた雑炊のようなものをいただく。
ゆで卵トッピング
水の心配が溶けてガブガブと水分をとりまくる。ココナッツドリンクにコーラに水、冷たいものを一気に飲みまくってAdelinah選手より先に出発。飲み過ぎた気はしたものの、レース全編を通じてお腹を壊すようなトラブルに見舞われることもなかったのは良かった。異国の食べ物をひたすら口にしているというのに、私の胃腸ってば強い!

WS8では欧米人の60k選手が隣で既に食欲を無くしてじっと俯いていた。WS8を出発してから暫くの間前後しながら進んでいたが、最初の登りで盛大に戻している音が聞こえた。多分お腹に何もないだろうから、出てくる固形物はなさそうだった。

【WS9 / 82.2km Pedahan】5/10 14:26
登り口に大量にゴミがあるのを横目で見ながら急な斜面を登り、ほんの数キロでWS9に到着した。この区間だったと思うが、時計(COROS Pace2)のバッテリーが減りすぎてログが取れなくなってしまった。充電しようとしても何故か充電されない。ログが取れないということはコース離脱アラートが鳴らないということであり、残りの距離が時計だけでわからなくなるということであり、それは地味にメンタルに響くアクシデントであるのは明白だった。とはいえまぁもうここまで来ている訳だしここからメンタルが崩れる程フィジカルがダメージを受けている訳でもない。まぁ仕方ない。

WS9は食事のない簡易エイドだった。手前のエイドからそれほど離れていなかったので空腹もなく、エナジーバーやらジャガイモやらを少しだけ口にして通過する。

全部のエイドにトイレがある訳ではなかったしどんなトイレかも分からなかったので、私はずっとその辺で適当に用を足していた。このエイドを出た直後に雨が降り始め、きっと皆エイドで雨宿りしてから進んでくるだろうなぁと思いながら用を足していたら、ズボンを上げた途端に後続の選手が走ってきてしまいちょっと慌てた。少し待てばスコールなんて止むのに、皆待たずに進むのね・・・

ますます雨は激しさを増す。バナナのような葉の下で雨宿りをしていると、向かいの家の家主が手招きで私を軒下に入れてくれた。凄まじい雨の中を選手が数名通過してゆき、私も休んでいる場合ではないと思い直す。暑いけれど、あまりにも雨が酷すぎるのでとりあえずレインジャケットを羽織る。
程なくして雨は止み、降ったあとは暫く平坦な道を進んで再び登り。平坦な道の途中では大きな岩の上に男性が座っていて、スタートの時に挨拶した日本人の100k参加者マコトさんだった。「あなたが落としたのは金の斧ですか?銀の斧ですか?」・・・ではないけれど、私は会って一言目に「もしかしてMAGMAを落としませんでしたか?」と尋ねると「落としました!」との答え。Adelinah選手がアバン山の登りの途中で「これ日本語書いてあるけど、あなたが落とした行動食じゃないの?」といってMAGMAの入ったジップロックを私に渡してくるので「いや私のじゃないけど、日本人何人か走ってるのは知ってるから、後で会ったら聞いてみる」と言って預かったのだった。マコトさんは眠すぎるので少しここで瞑想するとのことだったので、少し会話して私は先に行くことにした。途中どこかで眠気ではなくてパフォーマンスの低下を感じてカフェイン入りのメダリストを摂取したような気がするが、どこで食べたかは記憶がない。とりあえずマコトさんと会ったタイミングでは、私はびっくりするくらい全然眠くなかった。カフェイン抜きが効いたのだろうか。

次の登りは再び急斜面。いかにも虫が多そうに見えるけれどそうでもない。
鬱蒼とした草の中を登る。草で脚が痒いw
ここがかなりの激登りで苦戦した。こんな後半にこんな厳しい登りがあるとは正直想定していなかった、というか標高グラフを見てもここまでの登りをイメージできていなかった。激しい呼吸で登っている途中でふと後ろを振り返ると虹が出ており、レインボー!と声を出して周りに知らせてみるも、皆特に興味がなさそうだった。見慣れているんだろうか。

垂直に近いような角度でぐいぐい登る。脚の元気に任せてプッシュしているとオーバーヒートでまた激しく鼻血が出た。周りの人もとても優しくて、ティッシュをくれたり高度障害の一種じゃないかとかなんとか言って取り囲んでくる。いやーつい数日前まで高い山に居たし高度障害ってこともないと思うんだがなぁ。彼らに見守られながら休んでいると後ろからまたAdelinah選手がやってきた。なんでこんな急斜面で座ってるの!また鼻血!?かれこれもう5-6回目だよとかそんな会話をして再び彼女とスライドした。どちらが先にゴールゲートを潜るかはまだわからない。

【WS10 / 92km Alenkong / CP6】5/10 17:26
時計が時を刻む以外の仕事をしてくれなくなってから暫く経ち、次のエイドって何キロ地点にあるのだろうか今自分は何キロくらい進んだのだろうかと思い巡らせながら辿り着いた92kmエイド。手元のタイム表だとエイドは68km-80km-85kmと続くはずだったが、実際は82.2kmの次が92kmだった(全然違うw)。思いがけずもう92kmまで進んでいたことがわかり、大分気持ちは楽になった。アグン山を登る前のエイドで食べて美味しかったソーセージがまたここでも登場したので喜び勇んで2本ほどいただく。美味しいんだよねぇこれ。
もうこの先ずっとロードだよ!と大嘘をつかれる
スタッフの人から「このあとずっとロードの降りだよ!」と言われた。ロードは嫌いだよ。でもここから10km程度のロードの降りなら、1時間もあればゴールできちゃうんじゃないの?想定していたよりもめっちゃ早くないか??ロードと聞いてすぐにストックを畳んで仕舞い、ラストスパートとばかりにアスファルトを飛ばした。こんなに走れる脚が残っていたならもう少し手前から本気出せよ・・・と自分に突っ込みつつテンションMAXで進んだが、すぐ舗装路が終わって林道になったばかりか道が登り始めて走れなくなり普通にスローダウン。全然ロードでもなければ降り一辺倒でもない。騙されたw 長い~長いよ~ もうあとちょっとで終わりだと思ったのに全然終わらない!登って降って曲がって、畑の脇や民家をすり抜ける。ひょっとしてぎりぎりヘッドライト使う前にゴールするんじゃないのかとさえ思ったが全然そんなことはなく、流石に諦めてサングラスとヘッドライドを入れ替えた。全区間の中でここが一番長く感じた。

【WS11 / 100km Songan / CP7】5/10 19:10
ゴールかな?と思ったら、ゴール直前のエイドまでピストンするという謎コースがあり、これをこなして更にもうひとふんばり。一応CPなので、ゴール直前だというのにタイムが記録された。ここの補給ポイント要らないと思うw

【GOAL / 102.27km】5/10 20:17
WS10から勢いよく出発して脚も十分残っていたけれど、残り何キロかもわからない状況でだらだら進んで段々飽きてきて、たまに失速したりしながらもようやくゴールゲートが現れた。やった、ついに走り切った!脚は終わっていない、そのことがとても嬉しい。初めて走った奥久慈トレイルの時のように、ゴールゲートまでの数十メートルで猛ダッシュをブチかましてやった。
ニーインしているように見えますねw
不細工ですいませんw
ゴールして完走メダルを首にかけてもらうと、ゴール正面にはゴール見物をする人達が椅子に座っていた。他のカテゴリを走っていたと思われる日本人男性らに「100はやばいっす!おめでとうございます!」と声を掛けられた。彼らが何キロのカテゴリの人だったのかはわからないが、3000m超のアグン山を登るのは100kのみなので、それだけをとっても「やばい」と思えたのかも知れない。いやまぁどのカテゴリも尊いと思うわ。自分なりにレースを完結させることが重要のような気がする。

ゴール後にも食べ物が用意されていたので、私はフライドチキンと白飯、更にチキンスープみたいなものを食べてから撤収した。たまたま何か聞こうとして声を掛けた人が運営側の人だったので色々話したけれど、アグン山からの景色を見て欲しいから来年は100kのスタート時間を変えようかと思っているのだそう。エイドの食べ物や間隔はどうだったかとか、マーキングは大丈夫だったかとか色々尋ねられた。正直マーキングは十分すぎて、付けるのも外すのも大変だろうと思った。どうやら前日に人海戦術で一気にマーキングしたらしい。

因みに一緒に参戦した友人も無事ゴール。二人とも完走できて本当に良かった。

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女子6位でゴール!
文章にするにあたり細かくリザルトを見ていて初めて知ったのだが、ずっと同じようなペースで推移してきたAdelinah選手はWS10から11にかけて失速したようでWS11の到着タイムは私より20分も遅く、ゴールタイムは私より1時間15分ほど遅かった。何かトラブルがあったのかと思ってSNS経由で状況を聞いたところ、酷い水ぶくれができて全く走れなくなりリタイヤ寸前、最後は泣きながら進んだとのことだった。それでも彼女はゴール出来て幸せだと言った。彼女は強い。なんだかんだで一緒に写っている写真はいくつかあったけれど、最後一緒に写真撮りたかったなぁ。またいつかどこかで。

友人の誘いがなかったら私はこのレースに出ていないだろうし、初めての海外レースなんて5年10年後になっていたかも知れない。彼女とは二人だけで一緒に山に行ったこともなく、一緒に山を走ったのは複数名でしかも10年くらい前の一度きり、そんな私を今回このタイミングで気軽に誘ってくれたことに対しては感謝しかない。

レース後は現地に数日滞在し、ラフティングにスパ、プールにダンス鑑賞とバリ満喫。小学生の頃に見て以来のケチャダンスを今回絶対に見たいと思っていたのにタイミングが合わなくて見られなかったので、バリにはまた来ないといけないなぁと思っている。

レースが終わって歯を磨くと、歯茎に近い歯の表面が酷く沁みた。痛みは数日続き、そんなに痛みが続くのは今までで初めてのことだった。体にとって負荷が強いレースを走り終えると歯が沁みるのは自分にとってはよくあることではあったが、今回は実に数年ぶりだったと思う。そこまで追い込んだつもりもなかったけれど、自分が思った以上に身体は頑張ってくれていたのかもしれない。とはいえレースが終わってみると筋肉痛などのダメージはそこまで無くて、一晩眠って起きて午後くらいにはすっかり元気になった。まぁ鼻血のせいでそこまで追い込めなかったからな。

総じて、楽しかった。
私のリザルトまとめ。順位上げていく展開が出来て良かった!
終盤の降りでは失速した自覚があるけれど、全体で見ると他ほど失速しなかったというか、皆失速したから自分だけ沈む感じにならなかったのかな?
ゴール後の宿もOle Athltcの方々にお世話になりました。
友人のコネクションのお陰。ありがとうございます!
翌朝解散後に集合写真!

20250509-11_BTR Ultra 100k(レース前編)


宿から会場までは徒歩で20分ちょっとだったが、有難いことに宿の人が車で送ってくれた。到着して間もなく激しいスコールに見舞われ、会場は一瞬にしてどろぐちゃになる。インドネシアのスコールの激しさは日本のゲリラ豪雨とほぼ同じ感じで凄まじい。レース中もこれがきっとやってくるんだろうなぁ、ということで装備は細かくジップロック等にパッキングして雨対策は万全に。
軒下で雨宿り
会場では控室のようなものが用意されている感じでもなく、Ole Athltcの物販ブースにお世話になることに。サポート選手でもスタッフでもないのに彼らからプレゼントして頂いたTシャツを着てブース内で過ごすw(場所使わせて頂けて大分助かった)
レース会場の敷地付近にご飯を食べられる場所があったので直前の腹ごしらえ。
胃腸を気にせず現地に馴染み続けるわたしたち
メニューの垂れ幕を見て、どんな料理か特に調べもせず、かといってナシゴレンのような分かりきったメニューにするのも面白くないかなと思った私が、あてずっぽうに頼んだ料理がこれ。骨付きチキンと白飯のセットで、チキンはどう見ても揚げてあり、添えてあるソースはまたしてもピリ辛サンバルソース。およそレース2時間前とかに食べるものではないとは思うが、気にせずいただく。ここでも周囲にはハエがぶんぶん飛んでいて鬱陶しい。
胃よ、頑張って消化せよ
印刷してきたタイム表を早速なくしてしまって無い無いと大騒ぎしたものの結局見つかって一安心。タイム表といっても100kmカテゴリは今回初開催なので過去のデータが無く細かい予想タイムは作れない。とりあえず定められた関門をベースにして28時間・30時間・制限時間の34時間の3パターンを参考資料程度にメモしただけのもの。
Foodと手書きしてあるポイントは麺や米などがあるエイド。それ以外はスナックやフルーツなどの食べ物はあるが麺などのご飯ものがないという事前情報だった。
結果的にはあちこちのエイドでカップ麺程度は用意されていて、食べ物には困らなかった。
いよいよスタート!
ひとりだったら初海外レースだなんて多分いつも以上に緊張していたと思うが、友人が一緒なこともあり少しだけ気が紛れた。長旅だ、突っ込み過ぎず、それでいて温存し過ぎず行こう。100kmは長いようで短く、短いようで長い。自分にしかわからないメンタルとフィジカルの駆け引きがある。

沿道の熱い視線と力強い声援に見送られゲートをくぐるとレースが始まった。初開催の100kmにチャレンジしようとする選手達への、過剰なまでの尊敬の眼差しと熱量を肌で感じる。スタートしてひとつめのピークはバトゥール山(Mt. Batur)、火山であり足元は黒い砂礫が続く。降りは良いが登りが砂だと少しずつずり落ちて疲れる。しかし天気も悪く無く、景色も楽しめる。植生もいちいち新鮮だし、前後に日本人など一人もいない。目に映るすべてのことが興味深くて興奮が続き、ニヤニヤが止まらず終始キョロキョロする。興奮しすぎて疲弊してしまいそうだ。
レース序盤でも渋滞はなくスムーズで、ストレスとは無縁
この後目指す遠くの山の頂が見える
国は違えど山を神聖なものとして扱うのは人間としての本能なのか何なのか。火山と湖が雲の衣を纏って神々しく遠くに鎮座している。まるで不思議な物語の中に居るようだ。もう既に泣きそうである。
近くのスタッフに景色が良くて感動していると思わず伝えたけれど、英語がわからなかったようでスルーされたw現地の人全員が、英語を理解してくれる訳ではない。

ムーミン谷のような景観に圧倒される
歩みを進めると今度はトレイル脇に複数の猿が現れる。逃げもしない。
山を守っているかのようでもある。
バトゥール山付近でスタッフからラバーバンドを貰うと、そこにはStay Strongという文字が書かれていた。いくつかのポイントの通過の証として、この後色違いのラバーバンドを合計4つ貰うことになる。

【WS1 / 8km付近】5/9 17:50頃
富士山の砂走のようなところをザーッ、ザーッと砂もろとも気持ちよく滑り落ちてきたところにひとつめのエイド。砂走の経験が活きる。
下の写真に一緒に写っているのはボルネオ島に住むマレーシアのAdelinah Lintanga選手(どうやら普通にスポーツ選手みたい)。こんな序盤でも近くに居たとはこの時気付いていなかったけれど、この写真を見て初めて知った。降りやロードは彼女の方が速くて、登りは私の方が速く、抜きつ抜かれつしながらずっと一緒だったので結構色々喋って楽しかった。
公式のカメラマンが何十人と配置されており、道中大量の写真を撮って貰えた。
無料でDLできる写真が、何十枚もあってとても有難い。
カメラを向けたらポーズを取ってくれたお茶目な選手w
エイドには何があるんだろう?とワクワクドキドキ。小ぶりなサイズのサラダ煎餅のようなもの、ゆで卵、皮付きの小ぶりなジャガイモ、スイカ、バナナ、ドライデーツ、チョコレート味のプロテインバーみたいなもの等があり、水分は普通の水と豆乳とスポドリのようなもの(普通のスポドリ味とココナッツ味の2種類が基本セット)。個人的にはココナッツ味のスポドリが滅茶苦茶気に入ったので、500ml×2のボトルのうち1本はずっとこれを入れていた。スイカは黒い種がほとんど無く白い小さな種しかないのでそのままガブガブ食べられて良い。ジャガイモも、私は普段から皮ごと食べてしまう人なのでそのまま食べていた。走っている最中にジャガイモ食べるなんて初めてだったけれど、結構美味しかった。

ここから暫く平坦なセクションが続く。コース分析をしている頃から「まぁこの区間は走らされる感じだよね」と思っていたのだが、次第に暗くなってくるそのコースは足元に拳大ほどの溶岩がゴロゴロ転がっていてすごく走りづらい。下手に走ると岩に足を取られて捻りそうだったので早足で慎重に進む。ところによってはヘッドライトを最大光量まで明るくして照らす。タイムを稼ぐ区間だと思っていたけれどそうでもないかもしれない。月は大きく満ちて、遠くに控える3000m峰Mt. Agungを暗闇の中に浮かび上がらせていた。ひょっとして満月が神聖なもので、レースの日程を満月とぶつけたのかも!?等とひとり地味に盛り上がっていたが、別にそもそも満月ではなかった(この翌日か翌々日くらいが満月だった)。

【WS2 / 16.4km Tanjakan Cinta / CP1】5/9 19:03
写真を見てもここのエイドの記憶があまり無く、WS3の記憶と混同している。。。
標高グラフの上のところに赤い人の形が描かれているのが現在地
中央付近に写っているのは謎の蛍光色のエナジードリンク。ここでは飲まなかった。

【WS3 / 27km Gunung Abang / CP2】5/9 20:58
お待ちかねのフードステーション!鶏肉の入った手作りの汁物で、ピリ辛ちょっとグリーンカレーみたいな感じの汁にビーフンのようなフォーのような麺が入ったもの。ゆで卵も皮を剝いて入れてくれる。美味しい!辛さで胃がやられるかな?いう心配も少しあったけれど、美味しくてあっという間に完食してしまった。既に胃が受け付けなくなっているのか、辛くて食べられないのかは判らなかったが、食べ切れずに残している選手も多かった。いやーこの調子でこんな美味しい物が出続けるなんて最高じゃん!食いつくすぞー!俄然やる気を出す。
必携装備のカトラリーも器も一度も使わなかったw
2杯食べたかったがこんな序盤からエイドに滞在しすぎるのもどうかと思って先を急ぐ
民家のある割と平坦な道を進んでいると、前方に筋肉ムチムチのゴツいアジア人がいた。沿道の木にストックをのばして枝を手繰り寄せたと思ったらなにやら緑色の実をいくつかもぎ取っている。何か食べられる実なのかと尋ねると、私にひとつ実を手渡しながら皮ごと齧りついてニヤリと笑みを浮かべた。ミカン風なその実を齧るとまるで渋柿のようで、ひとかけらも飲み込めなかった。なんだったんだあれは。

【WS4 / 41.7km Puregai / CP3】5/9 23:14
いよいよ始まる3000m峰の登りを直後に控えたエイドに到着した。事前に友人から「Pop Meってカップ麺が結構普通に美味しいから、あったら是非食べて!」と言われていたのでここで食べていくことにした。これも辛くて美味しく、あとソーセージ状のものも気に入った。魚肉じゃなくて多分鶏とか豚なのだろうけれど、肌理が細かくて魚肉ソーセージみたいな食感。ここで1本食べたが、ここから先登りだし暫く食べ物無いから持って行け!とスタッフの人に勧められて更に2本持って行った。ちょっと重いのだけれど、携行性の良い塩気のある行動食は重宝するからね。
最初の関門。25時までは余裕あり。
どれもこれも美味しいw
そして始まる2000m upの登り。私が一番警戒しているセクションだった。なにせ私は高度障害が出易いタイプで、低気圧が来ていたりすると益々状況は悪くなり2600mくらいからペースがガタ落ちする。5/4-5で南アルプスの仙丈ヶ岳(3033m)へスキーで登ったが、この標高はこの後登るアグン山(Mt. Agung, 3014m)とほぼ標高が同じだ。一度登ったところで高度順応ができるとも思っていなかったが、そこそこ重い荷物を背負ってゼーゼー言いながら仙丈に行っておいたのは良いトレーニングになった気がする。普段の登山だと、荷物の重さに関係なく大体300m登るのに1時間くらいかかるイメージがあるのだが、今回アグン山では大体1時間に500mくらい登れたしそんなに息切れしなかった。仙丈では物凄く息切れして全然進めなかったので、荷物の重さが違うとはいえ状況は大分良い気がした。

とはいえひたすら無心で登れば良い凡庸な登りというタイプの斜面では無く、トレイルは狭く鋭く切れ落ちていたり、かと思えば滑りやすく広い岩場であったり、風が吹きつけて過酷であったり、伊達に3000m級の山岳ではない。記憶が定かでないが、ここの登りぐらいから鼻血が出始めたのだったような気がする。脚も呼吸も余裕があるのに鼻血が出て止まらない。
前の人の脚のゴツさよw
AM2:45、ようやく長い登りが終わった。何なら時間をかけて明け方山頂に到達した方が景色良かったんじゃないのか?と思わずにはいられないような開けた山頂だ。とりあえず夜景だけでも見られて良かったけれど。
昼間ならさぞ絶景だろうな
アグン山は火山であり、火口縁に登山道は無いため山頂真上までは行かず
3000m峰だけあって結構寒い。風はそれほど強くなかった
山頂担当のスタッフからラバーバンドを貰うとすぐ降りようとするが、斜度がえぐすぎる。下手したら登りと同じくらい時間がかかるのではないだろうかと思えるほどのテクニカルなサーフェスだ。登ってきたコースをそのまま引き返すかたちで暫く降り、途中から分岐してWS5(CP4)に向かうのだが、途中で女性特有の月のものがやってきたのを察した。よりによって今かよ!と悪態をつくでもなく、逆にタイミング悪すぎてちょっと笑える。予定ではレース前に終わってくれる筈だったのだが、緊張ゆえなのか何故か始まりもせず、この強烈なタイミングでやってきた。その後もう暫く降ると友人とすれ違い「アレが始まってしまった・・・」という会話をしつつ別れてから暗闇でパンツ脱いであれこれ。周期乱れすぎやろがい!

【WS5 / 57.5km Cegi Village / CP4】5/10 5:30
アグン山の降りには大そう手古摺った。何度も尻もちをつきながらズルズルと降ってようやくドロップバッグポイントでもあるWS5(CP4)に到着。アグン山は綺麗な笠型の峰で、その降りともなればうっかり飛ばし過ぎて前腿が死ぬなぁなどと心配していたのだが実際はそんなことにはならず、逆にスリッピーでブレーキをかけ続けたことで腿にダメージを受けた。Adelinah Lintanga選手との抜きつ抜かれつが既に始まっていたが、ここのエイドではずっと一緒に過ごした。関門時刻は8:00だったが夜明け直前の5:30に到着。一安心だ。
ここで30分くらい滞在した
鶏団子入り雑炊を頂く。これ以外にも何かご飯を食べた気がする
ドロップバッグを受け取り、時計やスマホの充電をしたり靴下を交換したり、擦れ防止のProtect J1の塗り直しをしたりしつつ過ごした。ここでも盛大に鼻血を出したような気がする。Adelinah選手は僅かに先に到着していたので先に準備を終えて出発していったけれど、どうせまた登りであなたに捕まるから先に出るね、みたいなことを言い残していった。浅黒い肌にバチバチに仕上がった筋肉質な脚、明らかに強いであろう彼女が私に対して何らかのリスペクトをもって会話してくれるということがとても嬉しかった。彼女はシャツもパンツも一気に着替えているようだった。彼女が着替えるのを見ながら、そういえば私は今回着替えをドロップバッグに全く入れなかったなぁ、と遅ればせながら思い出した。汗をかきすぎて股ずれし始めていたので、パンツの替えがあったら良かったかもしれない(と思っても後の祭り)。