2021/03/07

20210306-07_胴島尾根-笹山(後編)

前編はこちら

Day2--3月7日(日)
3:00 出発
↓ - 3:47(CT2:27)
6:47 白剥山
↓ - 4:28(CT3:15)
11:15 笹山南峰
↓ - 3:15(CT4:35)
14:30 奈良田バス停

前回の伝付峠越えの時は荷物が22キロを超えていてしんどかったので、今回は水込み18kgくらいに抑えてきた。前回は3泊、今回は1泊なので食料が少ないというのもあるけれど、寝袋を厳冬期用ではなく3シーズン用にしてきたのが割と大きかったかもしれない。夜はちょっと寒かったけれど、湯たんぽを作ったら普通に眠れたし、そもそもこの週末は割と気温が高かったのが良かった。朝も暖かかったので、朝寒くて寝袋から出られないということもなく1:15くらいに起床。背水の陣である。凍ったワカンのベルトを締めたりなんだりで足回りの準備に結構時間がかかってしまったが、どうにか3時すぎに出発。朝から食欲旺盛な自分でも、流石に1時半くらいにカレーメシを食べるのはなかなかしんどかったなぁ。

前日のつづきの林道を暫く進んだあとは、奈良田越を境に林道を離れて北へとトレイルが続く。が、この尾根への乗り方が雪のせいでよくわからず結構考えてしまい、20分以上あれこれしていたような気がする。明るければ簡単に分かったのかも知れないが、何せここに着いた頃はまだ日の出前で真っ暗、何も見えなかったのだから仕方ない。いくつかあったピンクのテープのうちのひとつにアタリをつけて登っていくと、廃屋絡みで嘗て持ち込まれたのであろうケーブルが現れた。尾根に乗りゃいいんでしょ尾根に、ということでアタリをつけてゴリゴリ登って正解だった、合っていたのかは謎だが。

それにしても今回は初日からコンパスがフル稼働。というかエマージェンシーキットにコンパスって入れておくべきなんじゃないのか・・・。
私の手元の地図には、奈良田越の脇に「迷」と書かれているw
白剥山に向かって登り始めると富士山がお目見え!
そしてようやく6:47頃、白剥山に到着!コースタイムの1.54倍ほどかかった。この程度で済んでいたのか・・・(もっとかかっているような気がしていた)。
山頂の写真だけ見ると雪大したことないように見えるのだけれど、ここだけ何故か雪が少ないというだけです・・・遠かった・・・ようやく到着
そして再び笹山に向けて進む。無雪期ならば枝葉というのは背より高いところにあるものだけれど、雪が積もって地面が高くなっている分、ヒトの胴体や顔の高さで煩いのが積雪期で、足元のラッセルも然ることながら上半身は藪漕ぎみたいなことを強いられる。森を泳いでいるような感じ、たまにふと我に返るとつらい。ン”アァ”ーーー!!ガァアアーーー!ダァアーーー!みたいな奇声を上げながら進む。たまにずっぽり沈むと脚が抜けず、ザックをおろしてショベルを組み立て、脚を掘り出して脱出する、みたいなことを度々繰り返していた。疲れるんじゃ・・・
この雪の上をふわふわ浮けたらどんなに楽かと思う・・・実際は沈みまくる
等高線の緩いところの方がしんどい。平らなところは積雪を真上からずっぽり沈むまで踏み込まなくてはならず辛いのに対し、斜度がきついとアイゼンの前爪を蹴り込むだけでなんとかなるから多少ラク。自分が登りに割と強いので登りがそれほど苦にならないというのもあるけれども。。。この感じ、うまく伝わるだろうか。。。

しかし冷静に考えてみて、この調子だと今日家に帰れない可能性もあるなぁという気がしてきた。CTの2倍で推移したら笹山まで10時間ほど、笹山から下山に4時間かかると想定すると、出発が3時だったので単純計算で17時下山になる。奈良田発の終バスは15:55なので間に合わないし、奈良田から身延駅までタクシーとなると幾らかかるのか、そもそもここから笹山までトラブルが無いとも限らない。電波の通じる場所で、ひとまず理解ある上司と理解あるクライアントに第一報を入れることにした。あと、帰りの高速バスを一旦キャンセル。矢張り前日に検討した通り、朝は2時に出発すべきだったか・・・いや今更後悔しても意味がない。
夏ならなんてことのないこの案内版、冬に見るとゾッとする。
いやこの時期に伝付峠から農鳥って・・・想像しただけで死にそう
10m進むのに何分かかるのかという感じのが続く
空が見えてきた
金曜だったか土曜だったか忘れたが、数日前に笹山ダイレクト尾根で奈良田から笹山をピストンしている人がいるということをSNSで確認していたので、笹山まで行けば楽に下山できるなというのはわかっていた。笹山ダイレクトは何度も通ったことがあるルートではあったけれど、雪のコンディション次第では、下りでさえも雪にはまって速度が出ないことだってありえる。今回はトレースがあるのがわかっていたからこそ「胴島尾根を引き返す」という選択肢を選ばなかったとも言える。

そうこうしているとようやく開けた場所に出た。2500m過ぎくらいから雪が心なしか締まって沈みにくくなってきて有難い。日が高くなって雪を溶かそうとするのと、雪が溶けずに頑張って持ち堪えてくれるのとのせめぎ合い、私が時間と闘いながらその境目を蠢いている感じ。笹山に着くまで、どうかこのままのコンディションであってくれと祈りながら。
メロウな斜面、スキーがあったら滑りたい!(私は登っているんだけれども)
悪沢岳とか小河内岳とかそっち方面が見えているのだろうけれど、山座同定している時間的余裕もなければ、山を見てすぐわかるほど知らないw(歩いたことはあっても見てわからない・・・)
勿論最初からここまでずっとノートレース。笹山が見えた時点でちょっともうウルウルしてきてしまう。ひとまずここまで到達したという事実だけで感無量である。ここからは夏道も若干出ていたが尾根の真上を歩いた方が楽そうだったのでそうすることにした。サクサクと雪を踏む音しか聞こえず、風もそこまで強くない。最高だ。とはいえこの絶景とここまでの道中に思いを馳せて感動している場合ではない。下の写真を撮影したのが10:27、元々の計画だと10:30に「登頂」→下山15:26のはずで、今こんな手前にいるのではバスに間に合う可能性は低そうだった。ここから山頂まで何分かかるのか、笹山からは最速で何分くらいで降りられるのか、逆算して最大何時に山頂に着けばバスに間に合う可能性が残るのか・・・この青と白の美しい世界の中で脳味噌フル回転で私が弾き出したデッドラインは「11:30」、流石にこれを過ぎたら間に合わないと踏んだ。
このとき10:27
一切沈まないという訳では全然ない。とはいえ樹林帯の中よりは断然歩きやすく締まった雪が続いてくれたお陰でペース落とさずぐいぐい登ることができ、デッドライン前の11:15に無事南峰登頂。実は南峰の西側の方を歩いていたので南峰をスルーして北峰に行こうとしてしまったので、少しだけ引き返すような形での登頂。奈良田からピストンした方(たぶん2人パーティー?)はどうやら南北両方の峰に登られたようで、彼等のトレースに導かれて無事南峰へ。危うく無駄に北峰まで登ってしまうところだった、時間がないというのに・・・
自撮りがへたくそw
長居もしていられないのでぱぱっと写真を撮って奈良田方面への下山を開始。この雲海の奥あたりに多分富士山があるのだと思うのだけれど、見えない・・・。
デッドラインは死守したがまだまだ気は抜けない・・・ということで急いで下山する。お腹がすいたり喉が渇いたりしても、もうそんなことは少しだけ後回しにして進む。最早何度も歩いているので写真も撮らない。標高が下がってきたら雲の下になったみたいでどんどん曇りがちになっていって、幸か不幸か写真を撮りたいという感じにもならなかった。しかし、そろそろワカンなくても良いかなぁと思った頃に足元に何かぶら下がっているのを感じて下を見たら、ワカンが崩壊していた。崩壊したのが終盤で良かった。ラッセルの真っ只中に崩壊していたらと思うと怖い。
U字のパイプ2本をリベットで繋いであるため、リベットが捩じ切れて分解した感じ。
既に過去何本もリベットが死んでいて、死ぬ度にボルトとナットで修理をしていたのだが、今回は生き残っていたリベットが一度に複数個死んだ模様・・・。(以前メーカーに修理を問い合わせたのだが、リベット1本300円以上するから買い替えた方が良いですよと言われたので自分で修理した・・。)

途中小走りになりつつ下山したら3時間ちょっとで下山してしまい、バスに十分間に合ったばかりか奈良田温泉にも余裕で入ることができた。下山後すぐ上司とクライアントに連絡、そしてキャンセルした高速バスを取り直し。のつもりが、バスの予約については携帯の電波が悪くてキャンセル処理ができていなかったので再度予約を取る必要もなかった。結果論だけど、色々とノーミスで完璧にクローズしたw

とりあえず、厳冬期の蝙蝠岳のアプローチに胴島尾根は使わない・・・!そもそも峠を越えて行くと脚も神経も使ってしまってメインの蝙蝠尾根の前にライフが減りすぎるのでよくない。というか冬にこの白峰南嶺の稜線にあがって下って二軒小屋に入るという課題が、どこからやってもハードすぎてアプローチとしてはまったく現実的ではないのだろうな。とはいえ、ここを越えて入っていくということに何らかの浪漫があるのは否めない。まだ個人的に、この辺りに入るべくして何らかの挑戦はつづく・・・・かもしれない。個人的にはノーマークだった胴島尾根だったけれど、この時期の白峰南嶺を歩けたということも含めてとても刺激的で楽しい山行だった。でも2000m~2500mあたりは本当に埋もれ死ぬかと思った。。。

++++++

最後に、2020年2月3日に笹山ピストンした時の写真も比較対象として。この時初日はおじいちゃんKさんのラッセルに助けられてKさんに追いついたところで幕営、2日目は私と同じ日に登り始めたMさんと合流しラッセル隊を組んで登頂。1ヶ月時期がずれているので今回の写真よりも雪多め。
このときMさん(左)が「使ってみたら矢張りMサイズワカンは小さすぎたのでLを買った」といって、帰り際に中古のMサイズワカンをくれたので、実はもう1個我が家にはワカンが控えている・・・!修理の甲斐なく今のワカンが死んだときは、頂いたワカンに世代交代の予定。

20210306-07_胴島尾根-笹山(前編)

何年も何年も、越年山行で行こうとして行けずにいた伝付峠経由の蝙蝠岳。最早越年に拘らなくても良いのではないかと思って先月トライをしてみたのだが、二軒小屋へ入るのに峠を越えるのはいろんな意味で現実的ではなかった。車で沼平ゲートまでアプローチして林道をMTBで走る以外に何かないものかと思っていたところ、SNSで胴島尾根という尾根の存在を教えて頂いたので、あいている週末を使って早速偵察に行ってみた。胴島尾根のルートは、奈良田温泉を起点に胴島尾根末端から入るのと、尾根上の1583.9mに向かって717m地点から入るのと2つあり、後者の方が緩やからしい。後者の記録の方が若干多かったので、今回はこちらのルートを採用することとした。尾根を末端から制覇したい、というのが今回の目的ではなかったので・・・(つい末端からやりたくなりがちだけれど、きちんと目的は考えた方がいい・・・)

Day0--3月5日(金)
いつもの高速バスで飯富入りしてバス停泊。夜には止むはずだった雨が運悪く降り続いていたため、より雨を避けることのできる奥の某建物の軒下にて晩酌。バス停にいた方が目立ちにくいのだが、道路から近すぎて音がうるさい。今回利用した場所の方が道路から遠く割と静かで、いつもよりよく眠れた。
メンマがうまい。(アルコール本日3缶目w)
今回は初日の情報が少なすぎるので行程表は手書き。
しかもこれ家に忘れて、ヤマレコに登録した内容を見ながら作り直しw
注目すべきは2日目の、こうありたいという希望で作られた帳尻合わせのスケジュール

Day1--3月6日(土)

8:27 湯島の湯
↓ - 0:23(徒歩13分、準備10分ほど)
8:50 取り付き出発
↓ - 8:37
17:27 白峰南嶺稜線到着
↓ - 0:33
18:00 P2073手前コル付近幕営

起きると辺りが無茶苦茶ガスっていたが、バスに乗っているうちにどんどん晴れてきて登り始める頃には太陽が顔を出してくれた。西山温泉の湯島の湯バス停にて下車、少し先に進むと取り付きがある。テープの類はないが踏み跡はあり、地形図717m地点のカーブのところなのでわかりやすい。
この尾根ならアプローチに十分使えると思います、という前情報だったのでもっと終始超踏み跡明瞭なのを勝手に想像していたのだが実際はそうでもなく、テープもほとんど無かったw よく考えたら山と高原地図赤破線でもベージュ破線でもないただの無線ルートだし、そんなに明瞭な踏み跡な訳がない。とはいえところどころ明瞭な踏み跡があったし、ちょいちょい歩いている人がいるんだろうなぁという印象。
ひたすら尾根なので、登る分にはテープが無くても踏み跡が無くてもまぁ迷うことはあまりない。
二重稜線というか一時的に三重稜線みたいになっていたのでパチリ(伝わるかな?)
地形図で見ると尾根上に3か所ピークのポイントがあるので、三角点を見つけては写真を撮っていたのだが、2枚しか写真がなかったのでもはやどこのピークなのかまったくわからないw
雪は1800mくらいから徐々に出てきて、まぁ稜線まであと200mちょっとだからどうにかなるだろうと思っていたが甘かった。尾根の上の雪は量こそそうでもなかったが、如何せん岩場を巻く時がグズグズ雪のトラバースになるのでなかなかのエグさ。しかし際どいところでは写真を撮る余裕がなくあまり写真がないのは世の常・・・
14:10頃、アイゼン装着
多分、次に目指すピークを撮ったのだと思う(写真奥)
尾根真上が岩場で、左側の雪のついた斜面のあたりをトラバースしていったのだと思う(うろ覚え)。手前の斜度はそうでもないが、奥に進むに従って傾斜が強くなる。見えない側がどうなっているのか分からない、行ってみないと分からない・・・(岩の上越えた方がいいのかな、とか暫し考えながら進む)
ようやく白峰南嶺の稜線に上がったのが17時半少し手前・・・!稜線の手前が岩場のトラバース続きだったので、抜け切れないのは嫌だなと思っていたのだが、無事に抜け切ることができて一安心。稜線向こうの景色が少しだけ見える。
計画段階では、地図に「広場」と書かれたP2073m付近の林道上が幕営適地かなと思いつつ、しかし翌日のことを考えたらもう少し先へ進んでおきたいなとも思っていた。どうせ稜線まで出てしまえば林道だし、多少暗くなったとしてももう少し先まで進みたかった。稜線の雪は多いのはそれなりに想定していたけれど、以前お正月にこの辺を歩いたことがあったので道自体が崩れているとかそういう可能性はあまり考えていなかった。いや記憶飛びすぎ、全然覚えてなかった。
こんな感じのところがガボッと下まで崩落しているところとかもあり、雪の上をトラバースさせられる。
しかも若干滑落しかけて滑落痕を2mほどつけてきたw斜度がそんなにないのでそこまで落ちないけれども・・・
悪沢岳
右上の斜面からザラザラと崩落しているw
歩いている人がそもそも少ないので、ザラザラしたところが全く踏み固められていない。足を置く度にザラザラと少しずつ自分も一緒に落ちていくので、静かに近付いてくる死の臭い的で気持ちが悪い。実はこの斜面の真上あたりにルートマーカーのテープがついていて、そのまま真下に降りるよう導かれそうになったのだが、いやこんなところルートじゃないだろうということでリルートした。あのまま強引に降りてたら普通に滑落しただろうな・・・。元々は道だったのが崩れたのだろうか・・・。
ここは林道としては崩れたりしていなさそうだけれど雪が多くて厄介
上の写真奥、林道が左にカーブしたあたりで幕営することに。目指していた目的地の広場までそう遠くはないし、落石の心配もなさそうだし、雪の上に葉っぱやゴミがなくてここなら水が作るのラクそうなので。というか、もうね、疲れた。この時間からひやひやする林道のトラバースとかしたくない。
ここいらに張ります。
2日目は計画段階で既に実現不可能に近いスケジュールを組んでいることを理解していたので、冬場の私にしては珍しく超早起きをすることに。そもそも稜線をCT通りで歩くとか無理だし予定通り進む訳がないので2時出発目標1時起き。でも水作ったりなんだりで寝たのは21時過ぎてしまった。
ジェットボイルを真面目にお湯沸かし専用機にしていたので、これが初めての調理w
辛ラーメンにとろけるスライスをブースト!鍋満タン過ぎてこぼしそうだけどなんとか。
美味しかった~
ブレすぎすみません。
後編へ続く