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2024/10/14

20241012-14_新倉-伝付峠-二軒小屋-蝙蝠岳-塩見岳-鳥倉山(後編)

前編はこちら


Day3--10月14日(月・祝)
5:05 三伏峠
↓ - 1:40
6:45 鳥倉登山口
↓ - 1:45
8:30 鳥倉山取り付き(仮)
↓ - 1:35
10:05 鳥倉山山頂
↓ - 3:40
13:45 大河原BS
↓ - 1:15(道の駅・歌舞伎の里 大鹿しばし物色)
15:00 桶谷BS
こんな早朝に三伏峠から下山する人なんて誰も居ないw
折角泊まりで山に来ているというのに毎晩展望のないところで眠っているせいで朝晩の良い時間帯に大した景色を見ていない(残念)。あれもしたいこれもしたいと思っても、なかなか全部盛りにするのは難しいものだ。とりあえず隙間から見えるこんな景色を自分なりに楽しみながら降る。すれ違う人からは何度も「塩見小屋からですか!?」とか「下山早いですね!?」と声を掛けられた。
Innerfactのシャツの柄みたいな色w(伝われ)
登山口着。車の人もここまで車が入れる訳ではないため、皆チャリを使っているようだった。登山口にはチャリがいっぱい。積雪期前ラストスパートの執念のようなものさえ感じる。
チャリは10台以上あったと思う(写っているのは知らない人)。
さてここからは今回の山行の第二部。舗装路歩きを経て鳥倉山を目指す。変な時間なので車もほとんど通らないし、通ってもこれから入山する人の車が数台といったところ。鳥倉山はなんだかお手軽そうな山のイメージだったので登山口もわかりやすいだろうと高を括っていたが、地味すぎて分かりづらかった・・・というか自分が取り付こうとしたところには何のマーキングも道標もなかった。
実際に歩いたのは赤線ルート、鳥倉山は左下のピンク〇から登り始めて時計回りでぐるり
一番一般的なのは赤線で右から歩いてきて黄緑の林道を歩いて赤〇の登山口からの周回らしい(ピンク〇のところで出くわした地元の方に聞いた)。
ピンク〇のところから取り付いて赤〇ポイントまではルートでも何でもなかったがとりあえず尾根道をゆく。踏み跡もあり顕著な尾根だったので特に問題はなし。本当は周回せずに黄色のルートを歩きたいと思っていたのだが、黄色の取り付きポイントにマーキングもなく不安すぎたので諦めた。鳥倉山で迷ったりして想定以上に時間がかかってしまうとこの後のバスに乗れなくなり、即ち家に今日中に帰れなくなる可能性があるからだ。低山というほど低山でもないけれど、塩見と比べたら低い山なわけで、しかし標高が低いからと言って侮ってはいけない。こういうところほど迷う可能性があるし、何より自分はこの山域にそう慣れているわけでもない。安全牌でいこう。しかしこの黄色ルートにあるP1903‐P2082をつなぐ尾根は遠目に見てもとても美しくて素直な斜度だったので、できればいつか歩いてみたいなと思った。
ここがピンク〇地点の取り付き(ちょい崖w)
こちらが赤〇の取り付き。こちらは道標もある
このあと鳥倉山山頂までは遊歩道といった雰囲気を装った道標がちらほら設置してあったが、気軽に入ったら絶対普通の人は迷うだろ、、、という感じのルートだった。特に登り始めて暫くは顕著な尾根道というわけでもなくのっぺりしているせいか、どこを歩けばいいのか微妙で、しかも踏み跡もそこまでしっかりついていなかった。勿論、普通に山歩きしている人なら問題ないレベルではあるけれども。そしてなんだかんだ、三伏峠から降りて再びここを登るのは案外面倒かもしれない。キノコ観察などしつつ、荷物も全部背負ったままデポもせずで1時間半ほどで山頂に到着。例の手拭いを颯爽と取り出して記念撮影。これがやりたかったのである。一人遊び極まれり・・・
ビジターセンター的なところで売っているらしいが、鳥倉山に登った写真を見せると1000円から300円に値引きしてくれるそう。
私は何故かプレゼントに応募していて当選したため自宅に送られてきた。
この手拭い、当選者は僅か5名だったみたい。当選した5人のうち、手拭い持って山頂行ったのはきっと私が最初だっただろうな。そして2024mだから2024年に大々的に手拭い作ろうう・・・みたいなことだったのかもしれないけれど、山頂標には2023mと書かれていたのは結構ミステリーである。小数点第一位四捨五入or切り捨て的な問題だろうか。

塩見目指して鳥倉登山口まで車やバスでアプローチする登山者にとって鳥倉山はおそらくただの通過点で、そこまで展望が良いわけでもなく、わざわざ車から降りて何時間もかけて、奥の有名な山々をさし置いて登るような山でもないだろう。正直私だって、これまで登ってこなかったということはそういうことなのだ。でも最近、遠方の低山や里山みたいなところを歩きたい欲が出てきているということもあってか、とても楽しく歩くことができた。3000m級のような派手さはなくとも森は豊かで各種キノコもあちこちに顔を出しており、植生も独特で楽しめた。派手な稜線を歩いた後にこういうところを歩くクールダウン風情みたいなのも良い。

山頂をすぎて尾根を抜け、東に高度を下げると小ぶりな池があり、その後砂利の林道を経由して再び取り付きに戻る。
鳥ヶ池。鳥はいなかった・・・
林道におりたところから上を見上げての写真。時計回りだとここが降りになるが、反時計回りのルートをとった場合はここから登ることになる。道標も何もないところから闇雲に登らせるのか・・・ 遊歩道を名乗るにはあまりにも道案内が雑すぎるw(本当に何もない)
赤〇ポイントを過ぎてピンク〇ポイントまで戻る途中
赤〇まで戻ればあとはひたすら舗装路歩きを続けるだけ。あわよくば誰か後ろから車がやってきて~なんて多少期待したりもしたが、結局全部歩き通した上、バスの時刻より早く大河原バス停に着きすぎてしまって暇だったので、更に先の桶谷バス停まで歩き続けてしまった。
夏期は鳥倉登山口-伊那大島駅間のバスがある
鳥倉登山口-伊那大島駅区間のバスがシーズンオフになってしまったら自分の足で進むしかないのだとずっと思い込んでいたが、今回調べて初めて大河原‐伊那大島間のバスがあるということが分かった。この区間は18kmもあるので、バスが使えることには大きな意味がある。今後も覚えておきたい路線だし、どうか廃線にならないでほしいと祈るばかりである。暖かい時期なら荷物軽量化して走るとかいうのもあり得るけれど、冬装備を背負って31km走るのは苦痛すぎるのでね。

<参考>
鳥倉登山口‐伊那大島駅 31km
鳥倉登山口‐大河原 13km
大河原‐伊那大島駅 18km

伊那大島駅はすぐ近くにセブンイレブンがあるので、下山後のアルコールやらおつまみやら買い出しをしてから各駅停車の旅で家路についた。飯田線スタートで埼玉の自宅までの帰り路は相変わらず長旅だったが、そもそも電車移動が嫌いではないというのも自分の強みだろう・・・。道中、下諏訪の乗り換えが45分くらいあったので途中下車して温泉も入って帰れたのも最高だった。

たぶん久々の2泊3日、公共交通機関利用のちょっくら遠方ソロ山行、原点回帰というほどのものではないにせよ、矢張り自分にとって最高に楽しい時間だなと再認識できてよかった。忙しかったり準備にかける気力体力が足りなかったり、毎日天気をチェックするだけのモチベーションを失ってしまったり、ちょっとしたことで山に行けなくなり始めると悪いループにすぐ陥ってしまうものだけれど、どうにかこうにかメンタルに火をつけていざ動き始めてしまえばこんなにも素敵な時間が私を待っているのだ。この多幸感を、どんなにしんどい時も忘れないようにしたいし、いつでもここに戻ってこられるんだということを信じたいなとつくづく思う。

山に行き始めてもう15年以上経つけれど、いまだにこんなに楽しいだなんて本当にとんでもない趣味だなとつくづく思う。この趣味と出会えて本当に良かった。

2024/10/13

20241012-14_新倉-伝付峠-二軒小屋-蝙蝠岳-塩見岳-鳥倉山(前編)

全然大した山行ではないのだけれども、自分にしてみたら久々に少し距離長め。
散々年末年始に計画しては悪天候に阻まれるってのを繰り返し、ようやくチャンスがやってきても結局到達できなかったり、なんだかんだで中々辿り着くことのできなかった蝙蝠岳にようやく辿り着いたのでとりあえず記録に残しておく。ルートはざっくり言うと東西横断。数年越しの憧れの蝙蝠岳に何故急に行こうと思い立ったかというと、鳥倉山の手拭いプレゼントというのに当たって家に水曜か木曜に手拭いが届いたからだった。そうだ、鳥倉山に行こう。ついでだから蝙蝠岳も行っちゃおう。そんな感じだった。

伝付峠を越えて二軒小屋に入るルートは過去1度だけやったことがあったが、その時は冬で荷物が22kgくらいあり、序盤の登りが兎に角きつい上に、その登りのザレで手古摺ったし危なかった記憶が強かったので、今回は兎に角軽量化を心掛けた。具体的にはテントをダブルウォールのエスパースではなくクロスオーバードームにしたことと、ザックは自分が持っている大きめザックの中でも一番軽いグラナイトギアのものにしたこと。あとシュラフも本当は夏用にしたかったのだが、これは3シーズン用にして正解だった(2晩目は3シーズン用シュラフでもかなり寒かった)。今回は厳冬期のチャレンジではなかったので、特に軽量化を考えなくても前回より重くなるとは考えにくかったけれど、今体力が充実しているという自信もなかったので、無理のない範囲で軽量化した。


Day0--10月11日(金)
仕事を1時間早退して高速バスで飯富まで。最近ステビスポットがマンネリ化しつつあるがここはマンネリというか安心・安定のステビポイントで地味に気に入っている。向かいのローソンに夜も朝も世話になる。
見慣れた光景w

Day1--10月12日(土)

7:35 飯富
↓ - 0:41
8:16 伝付峠入口
↓ - 3:11
11:27 東電管理小屋(保利沢小屋)
↓ - 2:03
13:30 伝付峠
↓ - 1:15
14:45 二軒小屋(このあと彷徨う)

奈良田行の始バスに乗って伝付峠入口下車。こんなところで降りる人は居ないだろうなーと思いきや、自分含め3名が下車。皆バラバラに出発した上に大した会話もしなかったので、一緒に下車した2人がどこに向かってどんな計画の山行だったのかはわからない。

歩き始めて割とすぐ、前回一番過酷と思えた激登りポイントの取り付きあたりで落石に備えてヘルメットを装着する。しかし登り始めると、荷物が格段に軽いせいか思った以上にラクで危ない区間の距離も短く感じた。前回太腿がミシミシいって壊れるんじゃないかと思いながら登った斜面、今回はいとも簡単にすいすいとこなす。落石も大したことはない。一安心。
前回からまた数年経っているので状況が悪くなっているかと思ったけれどそうでもなかった
今回足元はトレランシューズ。
徒渉的なところもしばしば。足元が濡れることはない程度。
ぼちぼちヘルメットを外そうかというあたり。
前回途中で木に激突したりしてヘルメットにはお世話になったので今回も持参したが、今回はそこまでヘルメットの必要性は感じなかった。一応塩見の辺りでも被ったけど。
前回の記憶を辿るように伝付峠に向かって登っていく。このあたりは前回は雪が深くなってきてスノーシューを履いたのだっけ。こんな感じの道だったんだなぁ、雪がないとめちゃくちゃ普通で平和だなw
笹の道
5時間ほどで伝付峠に到着。時刻はまだ13時半。前回ここに着いたのは16時半頃だったので冬場どれほどきつかったかがよくわかる。今回はあっさりすぎてなんだか拍子抜けしてしまった。途中でご夫婦の登山者を一組抜いてきたけれど、それ以外では人に会っていない。人は極めて少ない。連休にこういう人の少ないところを選び取れるというのは我ながら素晴らしいと思うw
穏やか~
この後は下り。部分的にちょっと行きすぎたりルートがわからなくなったりもしたけれど大きな問題もなく1時間ちょっとで二軒小屋に到着。
犬が複数いてめちゃくちゃ吠えられた・・・
二軒小屋の今年の営業は終わっているからテントも張るなと書かれていたので、蝙蝠尾根に取り付いて少し登ったところでテントを張ってもいいなと思った。蝙蝠岳登山口までは特にわかりづらいルートであるはずもなかったので何も考えず淡々と進んでいったのだが、地形図にひかれたルートを辿ると何故か沢沿いの謎の崖のようなところを歩くよう促され不意討ちを食らう。こんなところ歩いた記憶ないけれども・・・ルートが崩れたのかな・・・とか思いながら、ロープを掴みながら沢沿いを進んでみたがいよいよルートがおかしい。よくよく考えて、こんなところを通過しないと千枚岳にさえ登れないなんてありえるだろうか。仮にルートが崩れていたとしてもここまで酷いとは思えない。戻ろう。ザックの中に仕舞っていた9mのダイニーマテープをひっぱり出し、クライムダウンが厳しければテープを使って降りようとまで考えて準備を整えた。結局テープは使わずに戻れたけれど、戻った後もあっちでもないこっちでもないとうろついているうちに、伝付峠までの登りで追い抜いてきたご夫婦に追い付かれてしまう始末。結局何が悪かったのか見間違えたのかよくわからなかったが、とりあえず正規ルートに復活してようやく蝙蝠岳登山口に到着した。実に二軒小屋で1時間半くらい彷徨っていたことになる。もう今更蝙蝠尾根に取り付くつもりもないので登山口近くに幕営を決め込む。ここなら脇の沢水も使い放題でいい。先行者は2名。尾根からの落石を避け、少し離れた平場に張る。
先行者はソロ男性×2。色が綺麗に3色揃って信号みたいw
手前で一番とっ散らかしている緑が私w
赤テントの方と少し情報交換&お話をしたが、私の到着が遅かったこともありお二人ともひととおりの夜の支度が済んでいるようだったので私も静かに飲み食いして就寝。明日も早い。今回は軽量化も踏まえて野菜だ肉だ酒だお菓子だと詰め込まずに来たのでご飯はシンプル、初心にかえってラーメン。
この日は辛ラーメン(賞味期限切れw)+卵+にんにくの芽。

Day2--10月13日(日)
5:20 蝙蝠岳登山口
↓ - 3:55
9:15 徳右衛門岳
↓ - 2:00
11:15 蝙蝠岳
↓ - 2:05 
13:20 塩見岳
↓ - 3:00
16:20 三伏峠

昨夜は物静かだった黄色のテントの方が朝は会話をしてくださったので少しばかり話をしてから出発。昨日丁度ここからピストンで蝙蝠岳に行ってきたとのことで、今日はまた伝付に戻るのだという。蝙蝠の山頂までは6時間くらいはかかったと教えてくれた。自分の見立てとしてもそれくらいは想定していたので、まぁきっとそれくらいはかかるんだろうなぁ、と自分の手書きのメモを見ながら思う。出発して間もなく、手拭いをテン場に忘れたことに気付いて戻り、無事手拭を回収してようやくスタート。この時は「また手拭い無くすところだったよ!!危ない!すぐに思い出して良かった!」と思ったのだけれど、実はこの翌週に静岡にこの手拭いを持っていき結局無くしてしまったのだった。。。もうこの手拭いとは別れるべき時期だったのかもしれない。。。涙
朝焼けが綺麗
序盤の急な登りを終えて中電の施設を過ぎ、斜度が落ち着くと穏やかな稜線が続く。前回も途中までは行っているので何となく記憶はある。しかし前回幕営したポイントのマーキング箇所までなかなか到着しない。22kg以上背負ってよくもまぁ雪の中そこまで登ったものだよ、と我ながら感心してしまった。前回の幕営ポイントよりも手前にいくつだって幕営適地はあったのに、そしてあの時絶対に蝙蝠山頂に届かないと分かっていた筈なのに、それでも随分頑張ったんだな。そしてマーキングの場所を過ぎると、いよいよ初めて足を踏み入れるエリアに突入だ。わくわくが止まらない。
張ろうと思えば結構どこにでも張れそうな尾根。
期限切れや期限間近のアルファ米をたまに安く買えるので、
これを行動食にするのが一番安上がりだったりする。コンビニおにぎりより安い!
しかもこの時は、飯富のローソンで貰って使わなかった辛子マヨネーズがあったので、アルファ米のチキンライスに辛子マヨネーズを入れて食べた。滅茶苦茶美味しかった・・・
以前幕営するならここかなーと思っていた徳右衛門岳に到着しアルファ米を食べる。テントを張ろうと思えば張れなくもないけれど、地形図で思い描いていたよりはちょっと狭い山頂だった。木に囲まれているので風の影響はなさそう。
地味な山頂
ここは頂(いただき)なのか?と思わずにはいられない徳右衛門岳をすぎて少しすると、木の隙間からようやく、蝙蝠岳が現れた。塩見から眺めたことはあったけれど、蝙蝠尾根の下からこの角度で見るのは初めてだ。鳥肌が立って耳の奥がグビグビいった。久しぶりだ、この興奮は。一瞬で釘付けになってしまって、瞬きを忘れて目が乾いて涙が出てきた。

なんて美しい形をしているんだろう。蝙蝠岳に魅了されて繰り返し訪れてしまう人がいるのも頷ける。こんなところに、こんなに穏やかで美しく穏やかな山が鎮座しているだなんて。嗚呼、南アルプスって本当に色々なメンバーを取り揃えていて私達をいつまでも飽きさせないんだよなぁ。うっとりだ。美しい形を際立たせるかのような紅葉の様子も見事だ。(写真がいまいちなのが心苦しいのだけれども。)
お天気も最高
2715m付近で森林限界。ずんずん近付いてくる蝙蝠の山頂。遠くからずっと眺めておきたいタイプの山のような気がして、山頂に到着したくなくなってくる。
尾根独り占めできるのがまた最高に良い
ようやく!
山頂に着くと、塩見からピストンしてきたらしい人達が5-6人いた。本音を言えばこの山頂も独り占めしたかったところだがこればかりは仕方がない(連休だしね)。しかし先に到着していた彼等はそのうちに撤収していき、最終的には私ひとりになった。贅沢なひととき。
ひとたび山頂につけば蝙蝠岳の姿は見えないわけで、またここを離れて塩見に向かえば蝙蝠岳の姿が拝める。蝙蝠を後にし塩見を目指しながら何度も振り返っては蝙蝠岳の御姿を楽しませてもらった。仙丈ヶ岳のような女王の風格がある。とても良い山だ。

何度目かの塩見岳は何故かガスの中で展望はなかったため、さっさと山頂標を写真に収めて塩見小屋に駒を進めた。既に三伏峠小屋は今年の営業が終わっていると誰かから聞いたので(赤いテントの人に聞いたのだったかな?)、私は当然その手前の塩見小屋も営業が終わっているものと思い込んでいた。だから蝙蝠岳の山頂で会った人達は皆塩見小屋でテントかなと思っていたのだが、到着してみると小屋は営業しており、しかも塩見小屋はテン場を設けていないためテントは1つも張られていなかった。
標高の高いところで夜を明かせば翌朝の景色も良かろうと思っていたので、営業終了後の塩見小屋付近でテントを張るのもいいなと思っていたが、小屋が営業しているとなるとテントは張れないので、私は諦めてそのまま標高を下げることにした。
営業中の小屋。物販してるよ!とお客さんから教えてもらったけれど
ビールを買いたくなる気持ちはぐっとこらえるw
塩見新道、廃道なんだろうか?気になる。
あんなに晴れていたのに塩見から雲が多くなってきて森の中もガス。
まぁずっと晴れているのも芸が無いし(?)ガスも風情があっていい
三伏山のあたりまでくると、夕方にありがちな雲の切れ目が現れてこの空だよ!最高だな。
三伏峠に降りる途中で思ったけど、三伏山の山頂でテント張っても良かったな・・・
最終日も結構長く歩く予定だったので鳥倉登山口まで降りて舗装路でテントを張ろうかとも考えたけれど、矢張りそれでは味気ないので三伏峠で2日目の行動を終えることにして幕営。人は結構いたが、人が多いと逆に会話しないものなのよな(人によるかもしれないけれど)。因みに、小屋の軒下にごろ寝する人や、普通に転がってビビィ寝の人もいた。こういうの割と少数派だと思っていたけどそれなりに居るのね。
小屋から少し離れたところにある水場は、小屋の営業終了とともに撤去されていて水はとれなかった(更に谷の方に降ると水が出ていると後で聞いた)。私は蝙蝠の登山口で3.5Lくらい水を持ってきていたので特に足りなくなることはなかった。
かなり寒かった・・・
サバをつまみにホワイトラムをお湯割りで。合う訳じゃないけど合わないとかでもない。
地面の湿度がかなり高く、テント内にあがってきそうだったのでシートはテントの内側に敷くことに。
最近ハマっているZUBAANシリーズの豚骨。
ゆで時間1分というのもいいし何より美味しい。
前日に続きトッピングはにんにくの芽と卵。そして前日見当たらなくなっていた市販の
乾燥ラーメンの具と、昨年採ったシャカシメジを乾燥させたものも追加。
想像以上に寒くて、この日はレインウェアを含めてありったけの服を着てエマージェンシーキットに入れてあったホッカイロを使った。何の警戒心もなくテントの外に放り出していた水は、明け方には部分的に凍っていた。ろくに夏山に行かぬうちに、もう冬が始まったなと思った。

2021/03/07

20210306-07_胴島尾根-笹山(後編)

前編はこちら

Day2--3月7日(日)
3:00 出発
↓ - 3:47(CT2:27)
6:47 白剥山
↓ - 4:28(CT3:15)
11:15 笹山南峰
↓ - 3:15(CT4:35)
14:30 奈良田バス停

前回の伝付峠越えの時は荷物が22キロを超えていてしんどかったので、今回は水込み18kgくらいに抑えてきた。前回は3泊、今回は1泊なので食料が少ないというのもあるけれど、寝袋を厳冬期用ではなく3シーズン用にしてきたのが割と大きかったかもしれない。夜はちょっと寒かったけれど、湯たんぽを作ったら普通に眠れたし、そもそもこの週末は割と気温が高かったのが良かった。朝も暖かかったので、朝寒くて寝袋から出られないということもなく1:15くらいに起床。背水の陣である。凍ったワカンのベルトを締めたりなんだりで足回りの準備に結構時間がかかってしまったが、どうにか3時すぎに出発。朝から食欲旺盛な自分でも、流石に1時半くらいにカレーメシを食べるのはなかなかしんどかったなぁ。

前日のつづきの林道を暫く進んだあとは、奈良田越を境に林道を離れて北へとトレイルが続く。が、この尾根への乗り方が雪のせいでよくわからず結構考えてしまい、20分以上あれこれしていたような気がする。明るければ簡単に分かったのかも知れないが、何せここに着いた頃はまだ日の出前で真っ暗、何も見えなかったのだから仕方ない。いくつかあったピンクのテープのうちのひとつにアタリをつけて登っていくと、廃屋絡みで嘗て持ち込まれたのであろうケーブルが現れた。尾根に乗りゃいいんでしょ尾根に、ということでアタリをつけてゴリゴリ登って正解だった、合っていたのかは謎だが。

それにしても今回は初日からコンパスがフル稼働。というかエマージェンシーキットにコンパスって入れておくべきなんじゃないのか・・・。
私の手元の地図には、奈良田越の脇に「迷」と書かれているw
白剥山に向かって登り始めると富士山がお目見え!
そしてようやく6:47頃、白剥山に到着!コースタイムの1.54倍ほどかかった。この程度で済んでいたのか・・・(もっとかかっているような気がしていた)。
山頂の写真だけ見ると雪大したことないように見えるのだけれど、ここだけ何故か雪が少ないというだけです・・・遠かった・・・ようやく到着
そして再び笹山に向けて進む。無雪期ならば枝葉というのは背より高いところにあるものだけれど、雪が積もって地面が高くなっている分、ヒトの胴体や顔の高さで煩いのが積雪期で、足元のラッセルも然ることながら上半身は藪漕ぎみたいなことを強いられる。森を泳いでいるような感じ、たまにふと我に返るとつらい。ン”アァ”ーーー!!ガァアアーーー!ダァアーーー!みたいな奇声を上げながら進む。たまにずっぽり沈むと脚が抜けず、ザックをおろしてショベルを組み立て、脚を掘り出して脱出する、みたいなことを度々繰り返していた。疲れるんじゃ・・・
この雪の上をふわふわ浮けたらどんなに楽かと思う・・・実際は沈みまくる
等高線の緩いところの方がしんどい。平らなところは積雪を真上からずっぽり沈むまで踏み込まなくてはならず辛いのに対し、斜度がきついとアイゼンの前爪を蹴り込むだけでなんとかなるから多少ラク。自分が登りに割と強いので登りがそれほど苦にならないというのもあるけれども。。。この感じ、うまく伝わるだろうか。。。

しかし冷静に考えてみて、この調子だと今日家に帰れない可能性もあるなぁという気がしてきた。CTの2倍で推移したら笹山まで10時間ほど、笹山から下山に4時間かかると想定すると、出発が3時だったので単純計算で17時下山になる。奈良田発の終バスは15:55なので間に合わないし、奈良田から身延駅までタクシーとなると幾らかかるのか、そもそもここから笹山までトラブルが無いとも限らない。電波の通じる場所で、ひとまず理解ある上司と理解あるクライアントに第一報を入れることにした。あと、帰りの高速バスを一旦キャンセル。矢張り前日に検討した通り、朝は2時に出発すべきだったか・・・いや今更後悔しても意味がない。
夏ならなんてことのないこの案内版、冬に見るとゾッとする。
いやこの時期に伝付峠から農鳥って・・・想像しただけで死にそう
10m進むのに何分かかるのかという感じのが続く
空が見えてきた
金曜だったか土曜だったか忘れたが、数日前に笹山ダイレクト尾根で奈良田から笹山をピストンしている人がいるということをSNSで確認していたので、笹山まで行けば楽に下山できるなというのはわかっていた。笹山ダイレクトは何度も通ったことがあるルートではあったけれど、雪のコンディション次第では、下りでさえも雪にはまって速度が出ないことだってありえる。今回はトレースがあるのがわかっていたからこそ「胴島尾根を引き返す」という選択肢を選ばなかったとも言える。

そうこうしているとようやく開けた場所に出た。2500m過ぎくらいから雪が心なしか締まって沈みにくくなってきて有難い。日が高くなって雪を溶かそうとするのと、雪が溶けずに頑張って持ち堪えてくれるのとのせめぎ合い、私が時間と闘いながらその境目を蠢いている感じ。笹山に着くまで、どうかこのままのコンディションであってくれと祈りながら。
メロウな斜面、スキーがあったら滑りたい!(私は登っているんだけれども)
悪沢岳とか小河内岳とかそっち方面が見えているのだろうけれど、山座同定している時間的余裕もなければ、山を見てすぐわかるほど知らないw(歩いたことはあっても見てわからない・・・)
勿論最初からここまでずっとノートレース。笹山が見えた時点でちょっともうウルウルしてきてしまう。ひとまずここまで到達したという事実だけで感無量である。ここからは夏道も若干出ていたが尾根の真上を歩いた方が楽そうだったのでそうすることにした。サクサクと雪を踏む音しか聞こえず、風もそこまで強くない。最高だ。とはいえこの絶景とここまでの道中に思いを馳せて感動している場合ではない。下の写真を撮影したのが10:27、元々の計画だと10:30に「登頂」→下山15:26のはずで、今こんな手前にいるのではバスに間に合う可能性は低そうだった。ここから山頂まで何分かかるのか、笹山からは最速で何分くらいで降りられるのか、逆算して最大何時に山頂に着けばバスに間に合う可能性が残るのか・・・この青と白の美しい世界の中で脳味噌フル回転で私が弾き出したデッドラインは「11:30」、流石にこれを過ぎたら間に合わないと踏んだ。
このとき10:27
一切沈まないという訳では全然ない。とはいえ樹林帯の中よりは断然歩きやすく締まった雪が続いてくれたお陰でペース落とさずぐいぐい登ることができ、デッドライン前の11:15に無事南峰登頂。実は南峰の西側の方を歩いていたので南峰をスルーして北峰に行こうとしてしまったので、少しだけ引き返すような形での登頂。奈良田からピストンした方(たぶん2人パーティー?)はどうやら南北両方の峰に登られたようで、彼等のトレースに導かれて無事南峰へ。危うく無駄に北峰まで登ってしまうところだった、時間がないというのに・・・
自撮りがへたくそw
長居もしていられないのでぱぱっと写真を撮って奈良田方面への下山を開始。この雲海の奥あたりに多分富士山があるのだと思うのだけれど、見えない・・・。
デッドラインは死守したがまだまだ気は抜けない・・・ということで急いで下山する。お腹がすいたり喉が渇いたりしても、もうそんなことは少しだけ後回しにして進む。最早何度も歩いているので写真も撮らない。標高が下がってきたら雲の下になったみたいでどんどん曇りがちになっていって、幸か不幸か写真を撮りたいという感じにもならなかった。しかし、そろそろワカンなくても良いかなぁと思った頃に足元に何かぶら下がっているのを感じて下を見たら、ワカンが崩壊していた。崩壊したのが終盤で良かった。ラッセルの真っ只中に崩壊していたらと思うと怖い。
U字のパイプ2本をリベットで繋いであるため、リベットが捩じ切れて分解した感じ。
既に過去何本もリベットが死んでいて、死ぬ度にボルトとナットで修理をしていたのだが、今回は生き残っていたリベットが一度に複数個死んだ模様・・・。(以前メーカーに修理を問い合わせたのだが、リベット1本300円以上するから買い替えた方が良いですよと言われたので自分で修理した・・。)

途中小走りになりつつ下山したら3時間ちょっとで下山してしまい、バスに十分間に合ったばかりか奈良田温泉にも余裕で入ることができた。下山後すぐ上司とクライアントに連絡、そしてキャンセルした高速バスを取り直し。のつもりが、バスの予約については携帯の電波が悪くてキャンセル処理ができていなかったので再度予約を取る必要もなかった。結果論だけど、色々とノーミスで完璧にクローズしたw

とりあえず、厳冬期の蝙蝠岳のアプローチに胴島尾根は使わない・・・!そもそも峠を越えて行くと脚も神経も使ってしまってメインの蝙蝠尾根の前にライフが減りすぎるのでよくない。というか冬にこの白峰南嶺の稜線にあがって下って二軒小屋に入るという課題が、どこからやってもハードすぎてアプローチとしてはまったく現実的ではないのだろうな。とはいえ、ここを越えて入っていくということに何らかの浪漫があるのは否めない。まだ個人的に、この辺りに入るべくして何らかの挑戦はつづく・・・・かもしれない。個人的にはノーマークだった胴島尾根だったけれど、この時期の白峰南嶺を歩けたということも含めてとても刺激的で楽しい山行だった。でも2000m~2500mあたりは本当に埋もれ死ぬかと思った。。。

++++++

最後に、2020年2月3日に笹山ピストンした時の写真も比較対象として。この時初日はおじいちゃんKさんのラッセルに助けられてKさんに追いついたところで幕営、2日目は私と同じ日に登り始めたMさんと合流しラッセル隊を組んで登頂。1ヶ月時期がずれているので今回の写真よりも雪多め。
このときMさん(左)が「使ってみたら矢張りMサイズワカンは小さすぎたのでLを買った」といって、帰り際に中古のMサイズワカンをくれたので、実はもう1個我が家にはワカンが控えている・・・!修理の甲斐なく今のワカンが死んだときは、頂いたワカンに世代交代の予定。