翌朝も晴れ。太陽の光が樹林に阻まれてテントに光が注がれず、ついつい長いこと眠ってしまった・・・出発は8時半過ぎ。幕営地点は丁度雪の有無の境界のあたりだったのだが、そのすぐ先からは残雪だった。踏み抜き地獄というほどではないにしても、忘れた頃にズボッとはまるので疲れる。
なんだかもう変わり映えのない藪の写真ばかり・・・。八幡山から先は藪がちであった。初日の藪漕ぎで既に腕が筋肉痛になりかけているというのにまた今日も藪漕ぎ。腕がだるい。(好き好んでやっているのだけれども。)
 |
何が撮りたかったのだろう |
テープはたまにあるのだけれど、欲しいとこにはテープがなくて、要らないところにテープがあったりする。その隙間を埋めてくれるのが境界見出標の赤い看板。ここ県境だからね。ありがたい。
出発して20分ちょっと経過した頃、シャクナゲの藪をぬけ小山に到達するとひょっこり祠のようなものが現れた。中を覗くことはしなかったけれど、どうやら中には水晶が祀られていたらしい。そもそもこのエリアは水晶が取れるらしいと聞いて興味を持ったのだけれど、結局今回の山行では一度も水晶なんて見かけなかったな。残念。
 |
尾根をあがってくるとこのように祠を後ろから発見する感じに。 |
明らかにこのルートで合ってますよ、という印であるにも関わらず、この先のルートもよく見えないので不安になる。なるべく遠くを見る。近くに気を取られているとルートは見えづらいのだが、引いてみると見えてくるものがある。冷静に冷静に行くべき方向を見据えて、木々の重なりの薄いところを見分けてゆく。時に薄目になったりしながら、勿論GPSにも頼りながら・・・
 |
木の根のオブジェ?やたらと綺麗に土がとれている。木が倒れてから大分経つのだろう |
藪漕ぎの合間にたまに現れる岩場に乗り上げると、まるでご褒美のようにちょっとずつちょっとずつ小出しに素晴らしい景色を見せてくれるこの尾根よ。なんという飴と鞭。
 |
遠くに何某かのアルプス(ではなく八ヶ岳のよう) |
そしてまた藪。
天気が悪くてガスっていたら多分この昂ぶる感じは味わえないだろう。遠くからでもよくわかる五丈岩の特徴的な形が、サイズを違えて何度も何度も目に飛び込んでくる。
藪漕いで岩にのぼって視界が開けて五丈岩。
また藪漕いで岩にのぼって視界が開けて五丈岩(ちょっと大きい)!
またまた藪漕いで岩にのぼって視界が開けて五丈岩(さらに大きい)!!
この繰り返しがたまらない。年齢がバレるけれど、ゲームウォッチのドット感で遠方のものが次第に大きく表現される感じに似ている。経過がなくズン、ズズン、ズズズンと大きくなってくるのだ。いちいち「おおーっ!」と声をあげてしまう。単に目指す山が近付いてくるのとはまたちょっと違う興奮があった。
 |
ずん! |
左手には遠くの山々が。そして後ろでは富士山が見守ってくれている。
 |
遠くの山(八ヶ岳のよう) |
 |
富士山どーん(見えづらい) |
そして岩場。右へ回ったり、左へまわったり、上に乗ったりしながら進んでいく。
歩いてきた道を振り返る。アドレナリンの出る音というべきか・・・耳とも喉ともつかない頭の中央のあたりからグビグビグビというくぐもった音がしてくる。涙がこみあげるのとか、体がゾクゾクするのとか、そういうのととても似た感じでその音が私のもとにやってくる。たまらない。良い山行の証拠。
岩場というか、大きな岩がゴロゴロ積み重なって安定したところに到達。ここを越えれば稜線か?と思ったらまだだった。しかも途中でカメラを落とし、ザックを置いて引き返した・・・。見つかってよかった、ということでザックを遠くからパチリ(写真中央少し下あたりに転がっている青いのがザック)。この距離からだと、最後がなんだかガレ場に見えて不安になるけれど、この尾根の記録はたくさん残っている筈だし(あんまり見てこなかったけれど)、きっと問題なく登れるはず。
 |
五丈岩が近付いてきた! |
近づいてみたら矢張りなんてことはない大きな岩が積み重なっただけのエリア。小さく見えていた五丈岩や登山客の姿がどんどん大きくなって、いざ稜線に出るとなるともうちょっと泣きそうになった。よくここまで来たもんだなぁ。
因みに見積り3時間に対して、案の定と言うべきか4時間ほどかかった。初日のサングラス紛失に続き、チェーンスパイクやらカメラやら落としては引き返していたのが原因か(全て見つかったのでよかった・・・)。
 |
歩いた道を稜線から振り返る |
しかし私が歩いた八幡尾根は一体なんだったのか・・・登山道が賑わうさまに戸惑いながら五丈岩を見上げる。到達地は同じなのにこちとら疲労困憊、かたやのんびりとトレイルを楽しんでいる登山客。このギャップを感じるたびに、山って不思議なところだな、少しでもアプローチが変わると、もう全然違う山だもんな、と思わずにはいられない。「どの山に行くの?」と尋ねられる違和感はここにある。どの山に行くかはさして問題じゃない。どのルートでどこに抜けるのかが問題であって、その辿るルートにこそ意味がある。だからこそ山は面白い。
で、山としては、金峰山に行ったということになるんでしょうかね。じゃあ大弛峠から登っても金峰山は金峰山かというと全然意味が違うよね。自己満足以外の何物でもないけれども。
因みに前回は
このルートで金峰山に登りました。これも面白かったなぁ。
メジャールートはハイウェイ。整備された登山道の威力を思い知る。快適かつ雰囲気の良いトレイルをずんずん行く。
大日岩に到着すると、八丁平まで40分、大日小屋まで20分との道標と手元の地図とを見比べて唸る。山と高原地図の表記と大分違う気がする。大日小屋経由で八丁平に向かってもタイムロスはほとんど無いと踏んでいたけれど、道標の表記が正しければ、大日小屋をピストンして大日岩から八丁平を目指した方が早いことになる。
大日岩のあたりでロープをごにょごにょしていた方から声を掛けられ、かくかくしかじか伝えたところ、八幡尾根行ってみたいと話していた矢先だったとのことで話が弾んだ。ちなみにその方のブログは
こちら。
話によると、どうやら大日小屋をピストンして八丁平に行った方が早いみたいだったので、荷物をその場にデポして小屋付近まで下り、水を汲んで再び大日岩へ。八丁平までのルートは一旦岩を登って乗り越えてから下るとのことだった。岩には赤のペンキマークがあってルートは明瞭。
 |
大日岩の上部 |
しかしペンキマークに従って一旦岩場を抜けると、一体そのあとどこをどう辿ればよいやらさっぱりわからないし、またシャクナゲの藪だし、踏み跡があるけれどあちこち歩き回っているし、そもそもその踏み跡の人が一体どこを目指して歩いていくのかもよくわからないのでむやみに辿る気にもなれない。明らかに尾根から外れているし、一旦尾根上の岩場に乗り上げようと木を掴んでゴリゴリと這い上がろうとしたが、途中でやめた。破線レベルでこんなに激しいルート取りはあり得ないだろう。降りてきてGPSを見ると岩場の左ではなく右側に道がついているように見えるけれど自分は逆側にいるよなぁ。これは一体・・・。
携帯の電波(au)が通じていたので、その場で地形図に示されたルートの信憑性を確かめるべくググることにした。すると「地形図のルートは間違っている、実際は岩場の左側に踏み跡がある」との記述を見つけた。ならば矢張りこの長く続く岩場は大きく大きく左側に巻き続ければ良いのだな・・・?
方向性が見えたところで、大きく大きく巻き始めると、ところどころ銀色のテープが巻かれていた。テープはかなり気まぐれでかなりまばらだったけれど、少しだけ役に立った。思ったより過激な破線だったけれど、小一時間ほどで八丁平手前に到着。八丁平まで行くよりこの辺の方が雰囲気が良いなぁということでこの辺りで幕営。
 |
また木の根のオブジェ。 |
3日目へつづく