新宿から信濃大町の高速バスもあるのだが、松本まで高速バスに乗り、そこから電車に乗り換えた方が安い。しかも登山口までの距離は信濃大町からでも南大町からでもあまりかわらなさそうなので、実際に駅を見てからステビしやすい方を選ぶことにした。南大町駅に着いた瞬間、車窓から外をマジマジと見つめて、「今夜の宿はここだ!」といって直感で下車。真っ暗な駅の目と鼻の先にはまさかのセブンイレブンがあって最高の環境だった。夜な夜な一人でアルコールを入れ盛り上がりながら望月将吾さんのTJARの20分ほどの動画を見て号泣(早く寝ろ)。
2018/10/20 (Sat) 晴れ→曇り→雨→曇り
6:25 観音寺
↓ - 1:05
7:30 1203地点
7:30 1203地点
↓ - 1:35
9:05 鍬ノ峰
10:20 鍬ノ峰白沢側登山口9:05 鍬ノ峰
↓ - 1:15
↓ - 0:30
10:50 白沢登山口
10:50 白沢登山口
↓ - 1:50
12:40 最終水場
12:40 最終水場
↓ - 1:25
14:05 大凪山
14:05 大凪山
↓ - 2:10
16:15 餓鬼岳
16:15 餓鬼岳
朝何時に出発したか忘れたが、5時台だったと思う。セブンイレブンで若干の食料を調達し、もぐもぐしながら歩いて仏崎観音寺を目指す。
分岐を右へ |
赤丸をつけたところが南大町の駅。鍬ノ峰ひとつ越えて餓鬼岳登山口までの距離と、 餓鬼岳登山口から餓鬼岳山頂までの距離がこうして見るとほぼ同じくらいあるようだ。 |
とても立派なお寺! |
こんなルートがこんなお寺の裏山にあるとは誰が想像するだろう。驚くほどの急登に怯む。ちょっとした修験道のようだ。岩場みたいなものを越えつつ一気に高度をあげていくとひょっこり鐘が現れた。ここまできたよとお坊さんへの合図がてらゴーンとひと鳴らしして先へ進む。倍音が心地良い。
見晴らしが素晴らしい |
地味だけれど嫌いじゃない道 |
誰にも会わないけれど紅葉が綺麗。もうとっくにこのあたりは紅葉は終わっているものと思っていたが、まだ少し楽しめそうだ。黄色い葉が多かった。そうこうしているうちに山頂に到着。いや、結構それなりにデイハイクとして成り立ちそうなボリューム。
山頂からの眺め。湖が見える |
それでも見える街の様子がとてもいい。この街に住んだら、ここが裏山になるのか。 なんと羨ましい! |
そして低山は決まって道迷いしやすいというもの。あれ?と思った途端、迷った時のお決まりで小雨が降り出した。下の地形図に示したピンクのルートが正しいのだが、うっかり緑のルートを歩いてしまって登り返し。戻ってみたら分岐にはテープがしつこいくらいついていたので、ここで間違う人はきっと多いのだろう。
いつだってそうだ。間違えて戻ってきてみると大抵すごくわかりやすい分岐で、なんでこんなところ見落としたんだ?と思うのだけれど、得てしてそういうものなのだろう。矢張り、原則は、おかしいなと思ったら戻ることだ。
まずは岩場が出て来て行き詰まり、コンパスを見たら向きが変だなと思い、 あとは送電線を見て、GPSを見て、登り返して復帰。 |
こっちが正しい道 |
左が間違った方。それなりに間違えた人がいるんだろうなという程度に踏み跡がある |
ここから林道歩きが30分弱。 |
餓鬼岳以降の登山届はここで提出。 |
小屋に泊まる訳でもないので小屋情報をそこまでよく見ていないんですよね・・・ こういうこともあるんですね・・・ |
いきなりメチャクチャ紅葉が綺麗。 |
紅葉の滝という憎い名前の滝。美しすぎる! |
全部が全部外されているわけではなかったけれど、数カ所渡渉しろと書かれたところがあった。許容範囲なかんじ。
はーい。 |
落ちたくないので、これは流石に渡らないです。 |
ここも別に、トレイルから降りて撮影したわけではなくて、ルート上。 沢の左側を歩いていって、このあと右側に渡っていく。 |
滝の落ち口近くをトレイルが走る |
滝を過ぎたところに道標。この木が立派だったのでつい1枚写真撮影。 |
この先、地図に最終水場と書かれたポイントがあった。ただ水場というだけでなくてわざわざ「最終」だなんて随分ご丁寧な案内だなぁと思っていたら、本当に道標に「最終水場」と書かれていた。ここで一人、おじさんが降りてくるのに出くわす。水場の脇の橋も枠組み以外が外されており「渡渉してください」との看板がかかっていたが、おじさんが平然と橋を渡って来たので私も渡ることにした。収穫したキノコはここの水場で洗い、夕飯の足しにすることにした。
水場を過ぎて30分ほど経った13:00頃、いよいよ雨が降り出した。本来12時くらいから降る予報だったので1時間後ろに倒れただけでもありがたいと思ったが、雨はあっという間に本降りになり、そこから1-2時間程はかなり酷く降られたため写真もない。唯一とったのがこの大凪山山頂・・・
道標に書かれた標高を見ればお気付き頂けるかとは思うが、魚留メの滝1300mから餓鬼岳山頂2647mまで、一気に1300m以上標高をあげるので結構きつい。なのに冷たい雨で展望もないというのはなかなかの修行である。時間にて3時間35分登りっ放し(CT4:30)。特に最後の百曲りというつづら折れのところはひたすら下を見て黙々と登っていた気がする。15時過ぎくらいには雨も止んでいたと思うが、如何せん湿度が高いのか霧雨なのかわからないような状態で、途中から足元はうっすらと雪だった。
16:15頃、つづら折れが終わってトラバースを終えるとようやく微風の餓鬼岳小屋に辿り着いた。止まった途端に体が冷え出す。寒い・・・かなり寒い。誰も居ない幕営地で急いでテントを建てようとしたが、グローブをしていてもあっという間に手がかじかんできて作業がうまくできない。もう防寒テムレスの時期が来たのか。流石にテムレスをしたまま歩くのはまだ暑そうだが、作業をするときにはおそらくもう丁度いいくらいだ。装備を誤ったか。
とりあえず幕を張るタイミングで雨が降っていなかったのは有り難かった。テントにころがり込むともう外の気温はマイナス5度、そこからみるみるうちに気温は下がり、20時にはマイナス10度になっていた。明け方は一体何度まで下がるのだろう。
初めてやって来た餓鬼岳なので小屋の周りをうろうろ偵察。 |
どこかに誰かいるかなー?と思ったけれど誰もいません。 |
幕営地狭い。小屋近くに張ったが、もう少し燕岳側にも2張くらい張れそうな場所があって そちらの方が風はこなさそうだった(どうやらそちらが本来の幕営地らしい) |
目と鼻の先に餓鬼岳山頂、もう寒いので今日は登るのやめて明日にしよう・・・ |
直前の急登が地味すぎて忘れていたけれど、ここは北アルプス! 一瞬、槍みたいな山があるなーと思って、槍なわけないじゃんと思ってしまったけれど、正真正銘槍ヶ岳。 |
ひとしきり景色を楽しんでからご飯を食べて眠る支度をする。(因みにブナハリダケはカルパスと一緒に炒めてみたが油分が足りずにうまく炒め物にならなかった。矢張りブナハリにはベーコンが合う。)それにしても今夜は寒くなりそうだ。今回私はダブルウォールのエスパースを持参していたが、幕が暖かく結露も防げる代わりにシュラフカバーを持たなかった。ここまで寒いとは想定していなかったので当然ダウンパンツもない。シュラフにもぐって横になってみるも、首元からスースーと暖気が抜けてゆき一向に温まらない。私は普段から割とシュラフカバーも使って眠っているのだが、シュラフカバーがないだけでいつもよりもずっと寒くて、その違いは驚くくらい大きかった。暖気がどんどんシュラフの外側へ抜けてゆくのがわかるのだ。とりあえずザックの中に入れている40-50Lの防水スタッフサックの中にシュラフごと脚を突っ込み、乾かしたかったレインウェアもその中に入れた。それでも眠り始めてたかだか2時間で目を覚ましてしまった。
湯たんぽを作ろうにも、プラティパスにお湯を注ぐための漏斗を持って来ていない。仕方なく、ナルゲンの500mlボトルを湯たんぽにした。しかしまた2時間経たずに寒くて目を覚ます。今度はツェルトを広げてシュラフの上半身にかけてみた。多少結露してしまうかもしれないが、暖かくならない訳がない。先日ファイントラックの講習会に行った時、ツェルトをもっと積極的に頻繁に抵抗なく活用しよう、という話を聞いたばかりで、たまたまザックにまるめて入れてあったのだ(雪山でもない限り、テントを持ったらツェルトは持っていかないのだが、今回はたまたま持っていた)。かけてみるとてきめん暖かい。おお、これで眠れるかも知れない。その後すこしだけ目が覚めるまでの間隔が広がってきて、そこそこ眠れたような気がする。いやはや、まさかこの時期にこんなことをするとは思わなかった・・・結局何度まで気温が下がったのかはわからない。
だいぶブレブレだけれど、夜景もものすごく綺麗だった!そして月も綺麗で、星も綺麗で・・・。 |
2016/08/31 (Wed) 晴れ
唐沢岳のピストンをしてから燕岳に向かうのであれば4:00には出発しなくてはならないと考えていたが、思ったより初日に消耗したのでそれは諦めた。せめて日の出の頃に餓鬼岳山頂から朝日を見ようと思ってかけたアラームが5:00過ぎに鳴ったが、寒くて寒くて外に出る気が起きず(写真撮りに微妙に外に出てはみたけれど)日の出はほぼテントの中から眺めた。ぐうたら。
どーん! |
おはよう世界! |
夜したことの繰り返しで再び湯たんぽ作り。まずはナルゲン湯たんぽを靴に入れる。そして私のプラティパス以外のウォーターストレージであるトレラン用のハイドレーションでも湯たんぽを作る(チューブとの接続部分が壊れていて、もうハイドレーションとしては使えないものをストレージとして使っている。こちらは口が広いので簡単にお湯を入れられる)。さらに、自分の太腿やお尻などで靴をせっせと温めていく。ジェットボイルだったらもっとお湯が早く沸かせたのに、今回は別のストーブを持ってきていたのでなかなかお湯も沸かない。そうこうしているうちに日は上ってゆく。
とりあえず靴の氷は溶けるだろうが、いずれにしても濡れているのは確かで、外は相変わらずの低温だ。出発が遅れれば太陽がのぼって気温は上がり、足指が凍傷になったりする可能性は低くなるだろう。さらに足を守るにはVBLしかないけれど、今回はレジ袋の用意がほとんどない。頭を捻りながら、手元にあるジップロックとB5サイズのジップバッグを駆使してどうにか簡易VBLで出発の態勢をととのえる。朝だけしのげば、昼間には暖かくなって靴も乾いてくる筈だ。よしこれでいこう。少し大袈裟だけれど、自分で決めた装備や今できる最大限の対処がこれから大自然に試されるのだ。こういう瞬間は最高にぞくぞくするし、何度経験しても飽きることがない。同時に緊張もするのだけれど。
7:45 餓鬼岳小屋
↓ - 2:55
10:40 東沢乗越
10:40 東沢乗越
↓ - 1:00
11:40 2706m地点
12:30 燕岳山頂11:40 2706m地点
↓ - 0:50
↓ - 2:20
14:50頃 中房温泉
14:50頃 中房温泉
とりあえず空身で山頂ピストン。360度の大展望!と、期待通りの高気圧ドーンで雲ひとつ無い最高の天気。 |
想像以上に切れ落ちた稜線を歩く。
際どいところに雪が乗っていて少し緊張する。 これも早朝に歩いていたら凍っていたかもしれないし、少し遅めに出発して良かったなと。 |
秋の山 |
梯子やら何やら、スリリングで楽しい岩場の稜線が続く。うーん、こんなに良いルートなのにどうしてこんなに静かなのだろう(ありがたいけど)。アクセスが悪いといっても、他の北アルプス各地だって余程アクセスの悪いところはたくさんある筈なのだが。CTで登山口から小屋まで7時間以上あって、しかも燕岳までも6時間くらいかかって、更にロープウェイもないというのが不人気の理由なのだろうか・・・。例えば燕岳なら4時間で小屋に着くからなぁ。
東沢岳を一旦降って東沢乗越。時間的に間に合わなさそうであればここから中房温泉に降りてもいいなと思っていたが、ざっと計算したところによるとギリギリ間に合いそうなので突っ込むことにする。
ここから次のピークまでの登りはCT 2:10で、降りが1:10と差が激しいことから、余程きつい登りなのだろうなと腹を括ったが、自分的にはそれほど辛い登りではなかった。というか、CTの0.5以下で着いてしまった・・・あれれ・・・
テクニカルな岩場、樹林帯、と続いて、お次は白い稜線歩き!乗越で二人ほどすれ違ったものの、それ以外の人には燕岳山頂に着くまで全く会わなかった。
このあたりでパンを齧りながらコーヒーブレイク。暖かくて暖かくて、仰向けで眠りそうになる。 |
山頂付近に着いたら人がたくさん |
時間的には問題なさそうだったし、自分の降りのペースなら余程のことがない限り予定より遅れることはないだろうと思っていたが、たまたま似たようなペースの(小走りの)50代の男性がいたので最後まで一緒に降った。抜いたり抜かれたりが面倒なのでずっと後ろについていたが、バスの時刻ぴったりぐらいに着く予定だったものがバスの1時間程前についてしまった。中房温泉のバス停から2番目に近い温泉に入り、さらに穂高駅まで車で送って頂き、松本経由で帰路についた。
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人から「今まで登った山でどこが一番よかった?」と訊かれると、その度に私は答えに困っていた。訊いてくる人はおそらく「○○山」という答え方を期待しているのだろうけれど、私にとっては山は「ルート」で、「どの時期か」とか「誰と行ったか」とかが重要だから、「○○山」という答え方はできない。つまり「北岳が良かった」とは答えられなくて「厳冬期北岳に池山吊尾根から単独で行ったのが良かった」とか「夏の北岳に北沢という沢を遡行して友人らと詰め上がったのが良かった」とか答えたいのだ。勿論、山をやらない普通の人にとってはそんなことはどうでもよいのだろうなということは理解しているつもりだ。私がルートのことを伝えたところで理解はされないのだから、とりあえず北岳って言えばいい筈なのだけれど、私にはそのささやかな割り切りができない。
しかし今回餓鬼岳という山に出会ってから、私は人に「餓鬼岳は良かった」と普通に言っている。もちろん沢から入ったり無名の尾根から登ったり、色々なルートの可能性はあるものの、一般ルートは1つしかなくてわかりやすい上、その唯一のルートがとても素晴らしいのだ。なにより、私が自分で「餓鬼岳が良かった」とシンプルに唱えても、その言葉が自分の真意と乖離しないというところがすごく良い。勿論、人がいない日に登れたこととか、時期的なものとか、色々な要素があったからこそここまで惚れ込んだのだろうとは思うが、それらを抜きにしても素晴らしい山だと思った。時期を変えたり、人と行ったり、これからまたたくさんこの個性的な山を訪れてみたい。