2025/10/09

20251010-12_Ultra Trail Chiang Mai 180k(スタート前編)

ちょっと考えてみて欲しい。
あなたがもし1人暮らしで、2週間家を空けることが決まったらどんな準備をするだろうか。
冷蔵庫の中身の整理、排水溝の掃除、最後のゴミ捨てがいつになるかの確認、通販やサブスクなどの到着日の調整。そんなところだろうか。

そしてその2週間で海外に2か所行き、その両方の国でトレランのレースに出ることになったとしたらどうだろうか。1つ目のレースが終わってから次のレースまでの間に洗濯と疲労回復、次の場所への移動が必要だ。爪もムダ毛も伸びているだろう。必要な装備はいつもと少しずつ変わってくる。
更に、1つ目のレースが渡航の前々日にキャンセルになってしまったとしたらどうだろうか。航空券の手配のやり直し、コスト計算、パッキングのやり直し、有給申請の変更が必要かどうかの検討、そもそも1ヶ所目の目的地に渡航するか否かの判断。

私は今回この状況下に置かれた。一体何を試されていたのか。渡航タイミングに合わせて私なりにピーキングしていたのにレースのタイミングは1週間後ろに倒れてメンタルも結構やられた。それでもどうにかこうにか立て直してスタートラインに立つことができ、きっちりゴールできたのは我ながらよくやったと思う。レース終盤はまったく走れずズルズルとゴールした感じにはなってしまったけれど、当日を迎えるまでに試練をいくつも乗り越えていたことを考慮すれば上出来と思いたい。

‐‐‐

10/4に予定していたベトナムでのレースは、台風の被害が甚大で会場に行くまでの国道が崩落したため開催中止になった。連絡を受けた日にすぐキャンセルをしていれば4500円のキャンセル料で済んだようだったが、明日の続報を待てと言われて待っていたら一銭も戻ってこなくなってしまった。どうせお金が戻らないのなら旅行と割り切ってベトナムに行くという選択肢もあったかもしれないけれど、翌週にタイで180kmを走る予定が控えている状態でベトナム旅行を楽しめるほどのメンタルは残念ながら持ち合わせていない。結局試行錯誤と情報収集の末、往路航空券の日時変更ができるようだったので14000円ほど課金して渡航日を後ろにずらし、無駄にベトナムに飛んでからタイに渡ることにした。ベトナムの滞在時間は3時間弱、最早着陸する意味はなかったが、ベトナムに一旦わたることでベトナム~タイ間の航空券は活かすことができた。勿論、はじめからタイの往復を買った方が全然安かったのだけれど致し方ない。
自作の行程表。2日~7日の予定がばっさりなくして8日からスタート
そこまで食事やアルコールを節制していた訳ではないけれど、それでもレース前は少しでも体重を減らしておきたく調整していた。疲労を抜くためにカフェイン抜きもしていた。それがいきなり1週間も節制期間が延びた訳で、気持ちが崩れてうっかり暴飲暴食をしてしまった。なにやってんだろう、と思いつつもこの1日だけで暴食は終わり、しかも血糖値スパイクで深い深い眠りにつくことができ疲労は一気に抜けて、翌日からは切り替えて立て直しができたのは良かった。レースのタイミングがずれたのは、以前UTMFに出た時以来で、その時は大雨のせいでスタート時間が3時間くらい遅れた上に160kmから49kmくらいまで距離短縮された。どうしたら良いかわからないもやもやしたもの、どこにもぶつけようのない思いというのは、自分でどうにか消化しないといけない。みんな条件は同じで、自分だけが酷い目に遭っている訳じゃない。自然相手ではどうにもならない。その後現地の様子を動画で見たら被害状況は想像を絶する酷さで、自分のことしか考えていなかった我が身を恥じてまた少しだけ落ち込んだ。現場はレースどころではない、生活が脅かされるレベルなのだ。

ベトナムはとある事情でチーム戦だったので、ベトナム行く?行かない?どうする?みたいなやりとりがあったことはせめてもの心の支えになった。仲間が居て本当に良かった。
ベトナム戦がなくなった週末は山に行くかどうか迷ったが、近場の山の天気が良くなかったこともあり、雨で風邪をひくのも困るなと思って近所を走るにとどめた。2回分の海外レースの準備という初めての経験で難航していたパッキングだったが、レースが1回に減ったことで順調に進むようになったのは皮肉なものだ。

2025/10/8 ‐9(Wed-Thu)
Priority Passお使いの方はお馴染み、成田空港T2で食べられるステーキセットを朝7時半開店と同時にいただく。
更に朝からビールで乾杯
初日はまず成田9:30発ハノイ13:05着のベトジェットエアでハノイへ、その後自力で乗り継いでバンコクを経由し、翌日チェンマイまで。ハノイでの乗り継ぎは公式なトランジットではなく自力トランジットなので、ハノイ便が遅れて乗り継げなくなる可能性もあるためヒヤヒヤしていた。無事に着陸してホッとしたのも束の間、着陸して2秒くらいで機体が離陸した。まじかよw 着陸失敗だったのか何なのか、機内アナウンスの英語がベトナム語訛りで聞き取れず判らなかったが、結局30分近く遅れて着陸。。。因みにベトジェットエアの座席が縦方向に狭すぎてリクライニングもできず、エコノミー症候群になるかと思った・・・
ハノイ着陸前の下界の様子。台風の被害が酷く、1週間経っても街は水浸しだった。
飛行機で隣に座っていたベトナム人女性と話したところによると、レベル12というとても大きな規模の台風だったらしい。
遅れて着陸したと思ったら今度は預け入れ荷物が出てくるまでに何十分もかかり、バンコク行フライトの預け入れ制限時間3分前にデスクに着くというドタバタ。結果的にバンコク行は1時間近く遅れたのでラウンジで飲食する余裕もできたのは良かった。早朝のバンコク‐チェンマイ便までは空港内で夜明かしの予定だったが、国内線のためまともなラウンジもなく、そもそもゲートより中に入れなかった。泣く泣くゲート外で夜明かしをすることになったが、軽く横になれたので結構よく眠れたのは良かった。いや結構よく眠れたとか書いているけど実際のところ爆睡だった・・・
ハノイのトランジットでフォーにありつく。美味しかった!
今回のチェンマイのレースは6月に走ったDeep Japan (Uonuma) の副賞で、エントリーフィーと2日分の宿泊、更にはタイ国内の移動費も無料だった。しかもどの距離を選んでもよかった。180kmに興味はあるけれど初めての距離、しかも前の週のベトナムのレースが75kmなので連戦になる。連戦したことのない私が、初めての距離をしかも海外で連戦にして大丈夫なのか(何かとコンボすぎる)。しかし累積標高は7000m未満だしなんとかなるか?いやどうだろうか。私は優柔不断で貧乏性だ、どうせタダならエントリーフィーの高い長距離いっとくか?いやそんな動機でいいのか。

「悔いがないよう、自分が一番出たいものを選択したらいい」
「100が余裕だったら、180出ておけばよかったなと思うかもしれない」
相談した先輩からこう言われてほぼ心は決まった。180に決めるための後押しをして欲しかっただけだったのかも知れない。
カテゴリーは16、40、75、100、180の5つ
大会側が選手のために用意している往路の有料シャトルバスの運行は10日で、私もそれに乗せようとしていたようだったが、私のスタートは10日10時なのでそのバスではスタートに間に合わない。事前のやり取りで「9日に現地入りするならこの人達と車に乗ってくれ」という指示を受けたのでそれに従うことにした。180の選手が少ないからバンではなく普通車に数名乗る感じなのかな?くらいに思っていたのだが、蓋を開けてみたら運営側が手配したレンタカーではあるものの運転手は選手、多分招待選手とかそんな感じのグループにスウェーデン人男性と私がねじ込まれた感じだった。選手による運転で移動ってどういうことよ・・・(しかもこの時まだ彼らが招待選手らしき面々だということもわかっていないので余計に謎だらけ)。
朝チェンマイに着いてから皆と合流するまでに時間があったので美味しいカオソーイ屋さんを探して散歩。10kgの荷物を背負い片道50分弱でこちらのお店へ
チキンのカオソーイ、60バーツ(300円くらい)!美味しくてスープまで完飲。
レース前は辛い物は控えようと思っていたがこれは流石に誘惑に勝てなかった。
チキンは骨付きのものがドーンと乗っている。わざわざ行った甲斐があった!
車はこの状態ですよw
初対面で密着3時間www日本だったら乗車人数オーバーで捕まるやつ
女2人と男4人で普通車にギチギチに乗り込んでいざ出発。スウェーデン人男性とインスタで46万人もフォロワーのいる女子の2人は英語が通じたので、この2人と会話しながら現地まで。スウェーデン人と私以外の4人がまだご飯を食べていないとかでカレー屋に寄ったりして自由な感じで密着ドライブ。12時空港集合13時出発といっていたのがメンバーの人の飛行機遅れで14時発くらいになり、都市部の渋滞に巻き込まれ、後ろに落ちていくんじゃないかと心配になるような急坂を進み、現地着は17時過ぎ。ここまで長かった・・・・・
全部タイ語で押し切られそうになるブリーフィング。英語はやんないのかと誰かが言ってくれてこの後英語のブリーフィングもしてくれた。タイ語は無理だって・・・w
受付を済ませドロップバッグを預けたら宿へ移動。受付では国立公園の入園料として外国人は500バーツを支払えと言われた。想定外の現金消費に焦る。
ドロップバッグは60km地点と131km地点の2ヶ所ということだったので、同じバッグが次の地点へ移動していくのかと思い込んでいたのだが、それぞれにバッグを用意しろと現地で言われててんやわんや。(勿論、片方の地点にしか預けないという選択肢もある。)予備シューズは131km地点に置きたかったが序盤に徒渉があるというし60kmで履き替えた方がいいだろうかとか、あれこれ考えながらバッグを二分割にして預け入れ完了。果たしてあれで大丈夫だったのだろうか・・・

スウェーデン人男性とは宿が違ったのでここで別れた。大会側からは「10日と11日の宿は手配するけど9日の宿は自分で手配しろ」と言われていたので9日の宿は自分で手配したが(180kmに出ると10と11はレース中なので宿に一泊もできないことになるんだけど、、、などと思いつつ)、10と11日の宿はどこなのか聞き出して9日も同じ宿をとったのは正解だった。9日の分は自分で払えとか、レース会場から宿までの車は無いとか散々言われていた割に宿代はかからなかったし、スウェーデン人以外の皆が同じ宿だったので、会場と宿の往復もほぼ彼らの車で移動できたのも助かった。最初宿に行くときだけは1人で移動したが、それも途中で運営側らしき人のバイクに拾われて運んでもらった。宿まで2キロ以上あったのでなんだかんだで助かった。
ホテル敷地内のバーで一緒にご飯。この時まだ誰が走る人で誰がスタッフなのかもわかっておらず、ここで聞いてようやく「全員が180kmを明日走る」ということを知るw
因みに写真でひとり立っている彼は180kmで優勝。26時間・・・(速)。
レース前夜だったけれど少しばかりのアルコールも摂取してほろ酔いでわいわい。私は年齢もっと若いと思われていたらしく、歳を言ったら驚かれた。普段どんなレース出てるのかとかそんな話から始まり、明日の水どのくらい持つ?みたいなことも話しながら数時間(長いww)。必携装備のチェックでウォーターストレージ2L分と書かれており、元々そんな量の指定はなかったので焦ったのだが、皆が「暑いから実際問題1Lでは足りないしもっと持った方がいい」と言うので、少しだけ余計に持つことに決めた。国籍や言語は違えどレース前にする会話は同じ、山とかトレランとかそういう共通言語があれば話はできる。面白いな・・・
皆でシェアしよう!っていうから私はヌードルみたいのを頼んで、他の人も別々のを頼んだのだろうと思っていたら全員ヌードルから始まってこの後ピザ2枚にフライドチキンみたいなやつとかなんやかんや出てきてレース前夜のフードファイト開始。私が言うのもなんだが皆よく食う・・・。最後は犬に食べさせて終了、いや犬・・・塩気だめだろ・・
現金がやばいと伝えて飲み食いし始めて、ゴール後チェンマイに戻ってからならお金返せるって言ってたのに結局ご飯は奢ってもらってしまった。ありがとう・・・
シャワーはうまくお湯が出ず(部屋によるみたいでゴール後使った部屋のシャワーはお湯が出た)。下にある黒いバケツに溜め置きしてあるぬるい水で汗を流す
ベッド多いけど1人部屋w
8日の夕方に生理がきたが、9日の日中ににカオソーイ求めて長距離歩いて血流が良くなったことが功を奏したのか夜までには結構出血は落ち着き、痛みも引いてきたのは良かった。ご飯を終えて部屋に戻り、シャワーを浴びてパッキングをしていよいよ就寝。

‐‐‐

スタート時のラインナップ、カフェインのMedalistとKODAパウダーは消費せず。
左下のスプレーは虫よけ用のハッカオイルとシーブリーズのMIX、その隣は硫黄塩。
今回暑さで発汗量が多く、たびたび脹脛が攣りそうになっていたので硫黄塩が活躍した
<エネルギーと水分>

・エネルギー:レギュレーションは無し、エイド間の距離は8~15kmほど、ドロップバッグが2回あることを踏まえてスタート時1000kcalほど持参。バリのレースの時はエイドの食糧の携行性が高く、エナジーバーのようなものが多々あったのでそれを期待したが、今回は携行性の低いものばかりですこし心もとなかった。

・水分:インナーファクトのフラスク500ml×2+ナルゲンボトル350ml×1 皆のすすめで350増やしたが、結果的には350に手を出すことはなく、途中で中身は空にして進んだ。

シェル系、最早どちらもロゴが消えてボロボロw
距離が長く仮眠する可能性もある上、仮眠スペースがどのように確保されているかも分からなかった為、エマージェンシーシートを使って眠ることもあり得ると想定してシートではなくマミー型のものを選択。

<服装、装備>

・ヘッドギア:HerenessのFOCUS CAP(チームのロゴ入りオリジナルデザイン)

・上半身:Finetrackのノースリーブドライレイヤー+Patagonia半袖T(前半はチームのロゴ入りのもの、WP12でどこかのレース会場で買ったものに着替え)、ORのアームスリーブ(日差しがきつすぎて日中もほぼ装着していた)、チャリ用指切りグローブ(テクニカルな下りなどが無く転倒の危険がないことから、結局装着せずに終わった)

・下半身:知り合いがカモシカの刺繍を入れて販売してくれているバギーズショーツみたいな感じの短パン(3000円くらいの)、CW-Xのボディバランスアップスパッツ・ショート(BCY101)、ドライマックスのソックス
・ライト:レッドレンザーH8R(メイン)+充電式のAmazonで数百円だったヘッドランプ(予備)

・ザック:The North FaceのTR10

・シューズ:前半Salomonのsense ride4→WP5以降はHOKAのTorrent4

・その他(必携装備等):エマージェンシーキット、レインジャケット(ORのヘリウム2ジャケット、一度も着ず)、ウィンドシェル(Patagoniaのフーディニジャケット)、レッグウォーマー(モンベルのジオラインLWレッグウォーマー、寒さ対策で持参したが使わず)、ヘッドライト予備電池(レッドレンザー用)、モバイルバッテリー(Ankerの10000mAh)+ケーブル、ヘリテイジのULトレイルポール、ティッシュ&ビニール袋、生理用品、Fold-a-cup(マイカップ必携のため)、手拭い、スノーピーク極カップ+100均カトラリー(推奨装備だったが一度も使わず)、サングラス(サングラス無しは考えられないくらいかなり長い時間装着)、COROSのVertix2S(これまでのPace2から新調、電池の持ちがよく43時間半使用後もまだ25%もバッテリーが残っていた)、クレジットカード・パスポート・現金一式、100均の反射板、エマージェンシーシート(100均のマミー型のもの)


レース前編へ続く

0 件のコメント:

コメントを投稿